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黒板を見ればどんな授業だったのかが分かります。子どもたちの考えや活動を可視化したのが黒板だからです。何を明らかにするために、どんな予想をたて、意見を言い合い、実験で何を確かめ、そこから何が分かったのか。授業の子どもたちの姿が見えてくるのがよい板書です。以下に3つポイントをあげてみます。
1.美しく書こうとしないこと
黒板はあくまで道具(ツール)であり、作品ではないのだから、美しく書こうと思いすぎない方がよいのです。それよりも今の子どもたちの思考や活動を視覚的に表現し共有化することを第一に考えて板書してください。
2.たくさん書こうとしないこと
本書では、授業の流れが分かるように、私自身が普段の授業では書かないようなことまで書いています(斜体で区別しています)。しかし、授業はライブです。全部を書こうとして授業の流れを途切れさせてはいけません。腕のよい料理人のように目の前の子どもたちの熱い思いをすばやく形にするよう心がけてください。
3.板書計画にしばられないこと
子どもたちから予定していない発言が出てくると、教師はドキドキします。よく考えられた意見はどんどん取り上げてあげましょう。板書計画からはずれても構いません。黒板を「考えるための道具」にするのが何より大切なのです。
小学校の先生の8割以上は文系で理科に苦手意識をもっていると言われています。これは仕方のないことなのですが、先生が自信なさそうに授業をしたのでは、子どもたちも理科が嫌いになってしまいます。それは困ります。そこで理科の苦手な先生をサポートしようと企画したのが『文系教師』シリーズです。おかげさまで『理科授業note』に始まる本シリーズはたくさんの先生方に読んでいただき、理科授業に自信が持てるようになったといったうれしいお便りを頂いております。
今回は「板書」をテーマに書きましたが、これまでと同様、理科の得意な人にしかできないようなマニアックな技術ではなく、誰がやっても効果の上がる確かな実践やコツをまとめてみました。「ベテラン教師のワザをどの先生にも!」が我々執筆者の基本コンセプトです。各時間の板書の下に配置した「本時について」と「授業のコツ」についての短い説明をぜひお読みください。
小学校の先生は基本的に空き時間がほとんどなく、しかも図工・体育・音楽・書写……と準備・片付けの必要な科目ばかりで、短い休み時間にバタバタと走り回っているのが現状なのではないでしょうか。本書は、そんな忙しい先生方を想定して作っています。じっくりと読み深める余裕がなくても、理科室に行ってパッと本書を開き、1分間斜め読みして、すぐ授業!! そんなアクロバティックな日常をもサポートするのが本書です。教科書と本書を教卓に並べて広げたまま授業をしてください。指導書では文章を読み解くのに時間が必要ですが、板書だと直感的に授業の構造をつかむことができるからです(もちろん時間があれば隅々まできちんと読んでくださいね)。
典型的な理科の授業は、「問題→予想→実験→結果→考察」というパターンで進めていきます。この学習パターンを教師も子どもも意識すれば、授業が大きく崩れることはありません。そのために常に黒板の端に「問題」や「予想」などと書いた学習プレートを貼っておくことをおすすめします。学習プレートを順番に貼っていくことで、誰にでも問題解決の手順に沿った授業ができるという寸法です。
物を扱う理科は本来、子どもたちの大好きな教科なのです。『文系教師』シリーズを使って楽しい理科の授業を実現してください。そして、先生方が自信をもって理科の指導ができるようになり、みなさんの教えた子どもたちが「理科好き」になって欲しいと願っています。