著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
ベテラン教師の理科授業ワザをどの先生にも!
就実大学教育学部准教授福井 広和
2014/6/17 掲載
 今回は著者を代表して、福井広和先生に、新刊『文系教師のための理科授業板書モデル』シリーズについて伺いました。

福井 広和ふくい ひろかず

1962年、岡山県に生まれる。兵庫教育大学大学院修了。財団法人科学技術振興機構「サイエンス・レンジャー」、社団法人日本理科教育振興協会「その道の達人」の一員として全国各地で精力的に科学教室や理科指導者講習会を行っている。著書に 『文系教師のための理科授業note 3・4年編』『同 5・6年編』『ワークシートでらくらく科学クラブ』シリーズ『文系教師のためのキットでバッチリ理科授業』(以上明治図書)、『はじめてのおもしろ理科実験&工作』『かんたん!不思議!100円グッズ実験&マジック』(以上主婦の友社)などがある。文科省検定教科書の編集委員でもある。現在、就実大学教育学部准教授

―理科授業の板書が上達するポイントを3つ挙げて頂けますか?

 黒板を見ればどんな授業だったのかが分かります。子どもたちの考えや活動を可視化したのが黒板だからです。何を明らかにするために、どんな予想をたて、意見を言い合い、実験で何を確かめ、そこから何が分かったのか。授業の子どもたちの姿が見えてくるのがよい板書です。以下に3つポイントをあげてみます。

1.美しく書こうとしないこと

 黒板はあくまで道具(ツール)であり、作品ではないのだから、美しく書こうと思いすぎない方がよいのです。それよりも今の子どもたちの思考や活動を視覚的に表現し共有化することを第一に考えて板書してください。

2.たくさん書こうとしないこと

 本書では、授業の流れが分かるように、私自身が普段の授業では書かないようなことまで書いています(斜体で区別しています)。しかし、授業はライブです。全部を書こうとして授業の流れを途切れさせてはいけません。腕のよい料理人のように目の前の子どもたちの熱い思いをすばやく形にするよう心がけてください。

3.板書計画にしばられないこと

 子どもたちから予定していない発言が出てくると、教師はドキドキします。よく考えられた意見はどんどん取り上げてあげましょう。板書計画からはずれても構いません。黒板を「考えるための道具」にするのが何より大切なのです。

―書名にもありますが、「文系教師」のために、どんなところを意識してご執筆されたでしょうか。

 小学校の先生の8割以上は文系で理科に苦手意識をもっていると言われています。これは仕方のないことなのですが、先生が自信なさそうに授業をしたのでは、子どもたちも理科が嫌いになってしまいます。それは困ります。そこで理科の苦手な先生をサポートしようと企画したのが『文系教師』シリーズです。おかげさまで『理科授業note』に始まる本シリーズはたくさんの先生方に読んでいただき、理科授業に自信が持てるようになったといったうれしいお便りを頂いております。
 今回は「板書」をテーマに書きましたが、これまでと同様、理科の得意な人にしかできないようなマニアックな技術ではなく、誰がやっても効果の上がる確かな実践やコツをまとめてみました。「ベテラン教師のワザをどの先生にも!」が我々執筆者の基本コンセプトです。各時間の板書の下に配置した「本時について」と「授業のコツ」についての短い説明をぜひお読みください。

―本書は、1ページに45分の授業がまとめられており、教卓に置いたまま授業ができるように工夫されていますね。活用方法を教えて頂けますか?

 小学校の先生は基本的に空き時間がほとんどなく、しかも図工・体育・音楽・書写……と準備・片付けの必要な科目ばかりで、短い休み時間にバタバタと走り回っているのが現状なのではないでしょうか。本書は、そんな忙しい先生方を想定して作っています。じっくりと読み深める余裕がなくても、理科室に行ってパッと本書を開き、1分間斜め読みして、すぐ授業!! そんなアクロバティックな日常をもサポートするのが本書です。教科書と本書を教卓に並べて広げたまま授業をしてください。指導書では文章を読み解くのに時間が必要ですが、板書だと直感的に授業の構造をつかむことができるからです(もちろん時間があれば隅々まできちんと読んでくださいね)。

―本書に収録の板書は、どの時間も45分の流れがそのまま分かる指導案のようなつくりになっていますね。ひと目で授業の流れが分かる板書づくりの秘訣は何でしょうか?

 典型的な理科の授業は、「問題→予想→実験→結果→考察」というパターンで進めていきます。この学習パターンを教師も子どもも意識すれば、授業が大きく崩れることはありません。そのために常に黒板の端に「問題」や「予想」などと書いた学習プレートを貼っておくことをおすすめします。学習プレートを順番に貼っていくことで、誰にでも問題解決の手順に沿った授業ができるという寸法です。

―最後に、読者の先生方へ向け、メッセージをお願いします。

 物を扱う理科は本来、子どもたちの大好きな教科なのです。『文系教師』シリーズを使って楽しい理科の授業を実現してください。そして、先生方が自信をもって理科の指導ができるようになり、みなさんの教えた子どもたちが「理科好き」になって欲しいと願っています。

(構成:木村)
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