著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
子どもと保育者の願い、ともに満たす保育を目指そう!
武蔵野大学客員教授網野 武博ほか
2013/9/3 掲載
 今回は網野武博先生と阿部和子先生に、新刊『1歳児のすべてがわかる!保育力がグーンとアップする生活・遊び・環境づくりの完全ナビ』について伺いました。

網野 武博あみの たけひろ

東京大学教育学部教育心理学科卒業。厚生省児童家庭局児童福祉専門官、日本総合愛育研究所研究第5部長・調査研究企画部長、東京経済大学教授、上智大学教授、東京家政大学教授を経て、現在武蔵野大学客員教授。日本保育士養成協議会副会長。日本福祉心理学会常任理事、公益社団法人全国保育サービス協会会長、東京都児童福祉審議会委員長。
主な著書
『児童福祉学』中央法規出版、『これからの保育者に求められること』ひかりのくに、『保育を創る8つのキーワード』フレーベル館、『新保育書保育指針の展開』『0歳児のすべてがわかる!』何れも明治図書、他。

阿部 和子あべ かずこ

日本女子大学大学院修士課程修了(児童学専攻)、現在大妻女子大学家政学部児童学科・同大学院併任教授、児童臨床研究センター所長。柏市健康福祉審議会児童部会会長・同子ども子育てネットワーク会議委員長・同子ども子育て会議副委員長、全国保育士養成協議会関東ブロック理事。
主な著書
『子どもの心の育ち―0歳から3歳』『続子どもの心の育ち―3歳から5歳』萌文書林、新保育講座「乳児保育」ミネルヴァ書房、『保育課程の研究―子ども主体の保育の実践を求めて』萌文書林、『乳幼児期の「心の教育」を考える』フレーベル館、『0歳児のすべてがわかる!』明治図書 他

―「三つ子の魂百までも」の「三つ子」は1歳から2歳にかけての子どものことを意味すると、本書「はじめに」に書かれていますね。生涯の人格を形成する時期に携わる保育者にとって、これだけは心がけてほしいことは何でしょうか?

 この諺は、子どもの個性や人格はこの時期に決まるという趣旨で用いられることが多いのですが、むしろ子どもは1、2歳の頃から、いよいよその人らしく自我を芽生えさせ、しっかりと自立しようとしているという観点が含まれています。序章で、「1歳から2歳にかけての子どもたちにとって、保育所という環境は、いよいよその個性と能力を存分に発揮できる機会に満ちあふれています。……」と記しました。保育者の皆様方は、1、2歳の一人ひとりの子どもたちの主体的な自我の心を尊重し、先ずはその思いを受け止め、寄り添う保育がとても大切だと思います。子どもたちの前向きな、一所懸命な自己主張に余裕をもってかかわってみては如何でしょうか。

―年齢別の「○歳児クラス」というシリーズ本は多く存在していますが、他とは違う、本書ならではのおすすめポイントがありましたら、ぜひ教えて下さい。

 「○歳児クラス」というシリーズ本の基本には、この年齢段階の子どもにとって標準的な成長・発達とはおおよそこういうものです、したがってこのような保育の方針や方法が大切です、という趣旨は必ず含まれています。しかし、本書の編集方針はそれに加えて、各年齢段階の子どもについてのみ取りあげているのではなく、発達の連続性に主眼を置いています。つまり、一人ひとりの子どもたちが着実に年月齢を重ね、育っていく姿を連続性をもって捉える際にも参考になり得るように、目次構成や内容構成を配慮しています。それはさらに、園全体や保育者が、子どもたちの生活の連続性、発達の連続性について議論し検討を加える歳の重要なポイントも含まれています。

―本書同シリーズとして、『0歳児のすべてがわかる!』がありますね。保育現場において、両者を効果的に活用するためのアドバイスなどありますでしょうか。

 発達は連続しています。本シリーズは便宜的に年齢をタイトルにしていますが、実際に目の前にいる子どもは同じ1歳児という年齢でも一人ひとり違います。発達は年齢だけではなく、それまでどのような経験(保育)を積み重ねてきたのかにも大きく影響を受けます。1歳という歴年齢でもそれまでに大切にしたい経験が不十分の時、たとえば、0歳児後半のような姿を現します。保育は目の前の子どもの理解をもとに展開されるものですから、年齢を取り払って発達過程に合わせた保育を展開することが重要になることもあります。0歳児の担任だから0歳児を理解すればいいとか、1歳児担当だから1歳児を理解すればいいというものではなく、本シリーズは、担任にかかわりなく参考にできるかと思います。

―昨年、子ども・子育て支援法が公布されるなど、保育現場に変化のある時期です。幼保一元化の動きの中で、保育士として取り組むべきことなどありますでしょうか。

 今、保育界は次なる変革の時期を迎えています。子ども・子育て関連3方が公布され、幼保連携型認定こども園の行方や、保育所、幼稚園の今後に大きな関心が向けられるでしょう。総合こども園法が廃案となり、わが国における完全幼保一元化はなりませんでしたが、今後幼保一体化の歩みは着実にすすんでいきます。とくに、養護と教育の一体化の歩みは重要なポイントです。それは3歳児以上の保育に限るものでは全くありません。0、1、2歳児においても、保育における生活・遊びの豊かな展開はまさに、乳児保育における養護と教育が一体となった姿です。その点でも、本書を十分参考にしていただければと思います。

―最後に、1歳児クラスを受け持つことになった保育者の先生方へ向け、メッセージをお願いします。

 1歳児の発達の特徴は一言で表現すると「できないのにやりたがる(自立への欲求)」時期です。そして、この時期の保育は、この子どもの自立への欲求を受け入れ(主体としての子どもの願いや思いを受けとめること…保育指針)たところから保育が展開されることになります。しかし、保育者の子どもの育ちへの願い(保育の目標)ももっています。1歳児はまさに、子どもの今を生きる欲求と保育者の子どもの育ちへの願いの対立の多い時期かと思います。このお互いの対立する願いを、お互いの願いがある程度満たされるような生活(保育)として作り出していく保育者の創造性が要求されます。子どもの視点で生活を考えられるといいかと思います。

(構成:木村)
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