著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
発問を吟味して国語授業のマイスターになろう!
追手門学院小学校講師多賀 一郎
2013/6/24 掲載

多賀 一郎たが いちろう

神戸大学教育学部卒。附属住吉小学校を経て、私立甲南小学校に31年間勤める。元日本私立小学校連合会=国語部全国委員長、元西日本私立小学校連合会=国語部代表委員。現在、私立追手門学院小学校講師。「親塾」を開催して、保護者の子育て支援を行ったり、「教師塾」で若い教師の育成に尽力したりしている。また、公立私立の学校や委員会での指導・講演をしたり、幼稚園やサークルなどで絵本の話をしている。著書に、『子どもの心をゆさぶる多賀一郎の国語の授業の作り方』『全員を聞く子どもにする教室の作り方』『今どきの子どもはこう受け止めるんやで!』(黎明書房)など多数。
現在、明治図書教育zine:指導技術の教科書にて、「多賀一郎の子どもと保護者の願いをよみとく教師塾」が大好評連載中!

―書名にある「マイスター」には、どのような意味が込められているのでしょうか?

 「マイスター」は、もともとドイツの認定職人のことで、ドイツでは、社会的にも高い地位にあります。教室で何かに優れた子どもを認めていくという発想で、様々な「マイスター」を認定していました。それに加えて、「マイスター」には「自分自身が輝く星だ」という意味も含まれています。どの子も、一人一人がスターになってほしいという思いが込められているのです。
 先生方にも、発問の技術の高い専門家になってほしいという願いを込めて、本書のタイトルになりました。
 

―国語授業における発問の役割とは、なんでしょうか。

 授業は全て発問によってつくられていきます。どんなに素晴らしい展開を仕組んでも、発問が悪ければ、授業は台無しになってしまいます。授業は生き物で、教師の思い通りに簡単に進んでいくものではありません。しかし、子どもたちの実態を頭に置いて、教材研究の上に立ってつくった発問であれば、そんなに子どもの発言によってぶれたりはしないものです。
 発問は、授業そのものだと思います。

―本書では、発問づくりを成功に導くための10のルールをあげていただいていますが、実際に発問をつくる際にはこのルールをどのように意識したらよいのでしょうか。

 10のルールは、以下の通りです。

ルール1 授業を組み立てる
ルール2 切り口を提示する
ルール3 練りに練る
ルール4 指示と発問は使い分ける
ルール5 学年に合わせて具体的にする
ルール6 文章に向かわせる
ルール7 平板にならないようにする
ルール8 子どもの動きに合わせる
ルール9 板書・ワークシートと連動する
ルール10 教えることをはっきりさせる

 全ての教材と子どもたちに、全てのルールが当てはまるはずがありません。
 「この教材では、何番のルールの考え方が有効だ。」
 「今のうちのクラスでは、何番の発問の考え方が、一番ぴったりだと思う。」
というように、目標、単元と子どもたちを思い浮かべながら、どのルールでいくかを考えていくのが、良いと思います。

―発問づくりをするにあたって、先生が一番気をつけていらっしゃることはなんでしょうか?

 その発問で子どもが動き出すことができるのかどうか。この発問で文章に向かい出すのか、考え始めるのか。そうした発問した後の子どもの姿を想像しないと、発問はつくれないと思うのです。
 子どもを育てるために発問を考えるという原点は、忘れたくないですね。

―最後に、読者の先生方に向けてメッセージをお願いいたします。

 発問してから「しまった、こう言えば良かった」とか、「なんでこの言い方で分からないんだろうか」と悩むことも、あろうかと思います。僕もずっと悩んできました。この本に書いてあるのは、成功した例ばかりですが、その裏には、何倍もの失敗発問が存在するのです。一年に数回ですよ、「この発問は良かったなあ」なんて感じられるのは。
 悩む自分を大切にしてほしいと思います。考えない人間は悩みません。悩みながら、発問をつくれる教師になっていってほしいと思います。

(構成:林)
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