著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
生徒と共につくり上げる、中学校数学授業の極意!
愛知県小牧市立小牧中学校長玉置 崇
2012/7/3 掲載
 今回は玉置崇先生に、新刊『スペシャリスト直伝!中学校数学科授業成功の極意』について伺いました。

玉置 崇たまおき たかし

1956年生まれ。愛知教育大学数学科卒業。
公立小中学校教諭、愛知教育大学附属名古屋中学校教官、教頭、校長、愛知県教育委員会指導主事、教育事務所長等を経て、現在小牧市立小牧中学校長。
ICTを活用した数学授業や学校経営において実績があり、文部科学省発行の「教育の情報化に関する手引」を執筆。また文部科学省「学校教育の情報化に関する懇談会」委員歴任。
主な著書に、『数学大好き わかる楽しい授業のアイデア70集』(明治図書/共著)、『数学大好き2 教科書を使ってわかる・できる楽しい授業づくり』(明治図書/共著)、『学校を応援する人のための学校がよくわかる本(T・U)』(プラネクサス/単著)、『玉置流・学校が元気になるICT活用術』(プラネクサス/単著)など多数。

―本書の冒頭では、玉置先生が長年のご経験から導いた「玉置流 数学授業づくりの大原則30」が紹介されています。この中で特に、経験の浅い、若手の先生が気を付けるべきことは何でしょうか。

 まずは素直に、そのままやってみてください。これに尽きます。ただし、あれもこれも一度に取り組んでみようとすると無理が生じます。例えば、まずは「なるほど!(体の向きを変えて)どう?」方式からやってみるなど、的を絞ることです。はじめはぎこちないものになるでしょう。生徒から「先生、今日はどうしたの?」と言われるかもしれませんが、繰り返し行うことで、ごく自然に、違和感なくできるようになるものです。この方式であれば、生徒の意見をつなげることができますから、生徒の声でつくる授業に変容していく実感をもてると思います。

―この大原則を見ていくと、玉置先生が生徒の発言を授業づくりの核にされていることがわかります。中学生という時期を考えると、生徒が発言したくなるような雰囲気づくりも大切だと思われますが、何かよい方法があるでしょうか。

 授業開きをはじめ、機会をとらえて「授業では何を言ってもいい」ということを生徒にしっかり伝えます。ちょっとした気持ちの表れも大切にします。例えば「この問題はどう?」と聞いたときに「難しそう」と生徒が言えば、「難しそう」と板書します。「えっ」とつぶやいて止まってしまう生徒もいますが、「えっ」というつぶやきも板書します。そして、これらは立派な意見だと価値付けします。教師が一人ひとりを大切にしていることを伝えることになりますし、発言へのハードルを下げることにもなります。授業では安心してつぶやくことも、気持ちを言うこともできる、このような教科経営を心がけたいものです。

―本書には「学習指導要領のここを外すな!」という章があります。多くの先生方は教科書に沿って授業を進められているものと思いますが、学習指導要領についても毎日の授業の中で意識する必要があるのでしょうか。

 もともと教科書は学習指導要領に基づいて編集されていますから、教科書のことをよく理解した上で授業を進めれば、自ずと学習指導要領を意識していることになるでしょう。おすすめするのは、新たな単元に入る前には、学習指導要領や解説書の該当範囲に目を通しておくことです。教科書を深く理解するためには欠かせません。例えば、学習指導要領、第2学年の内容A「数と式」には「具体的な事象の中に数量の関係を見いだし」と示されています。教科書ではどのような具体的事象を基に見いださせようとしているのか、そのために授業はどう展開したらよいのか…と考えることで、深い教科書理解をすることができます。

―3章では、とっておきのテッパン授業ネタがたくさん紹介されています。これらを使って実際に“盛り上がる”授業をつくるために大切なことを教えてください。

 ネタそのものに、生徒をひきつけたり、多様に考えさせたり、深く考えさせたりする力がありますから、ぜひそのまま生徒にぶつけてほしいと思います。そして、生徒の発言を重ねることはもちろんですが、生徒の表情やつぶやきをできる限り拾うことを心がけてください。それらをつなぎ合わせれば、盛り上がる授業になると確信します。一番おいしいところ、つまり生徒に気付かせたり、感動させたりしたいところを教師が言ってしまうのでは、教師一人が盛り上がる授業になってしまいます。

―最後に、本書を読んで、さらに授業の腕を上げたいとお考えの中学校数学科の先生方に、メッセージをお願いします。

 私自身は、これまで多くの実践書から学び、そこで紹介された教育技術や授業ネタを実際にやってみて確かめてきました。実践してみると、書籍で“なるほど!”と思った以上の手応えを感じることが多々ありました。紹介した大原則にも、書籍から学び、それを意図的に繰り返しているうちに、いつしか自分のものになり、自分流の色をつけることができたものが多くあります。ぜひ本書を基に皆さんの色をつけていただけることを願っています。

(構成:矢口)
コメントの一覧
1件あります。
    • 1
    • のび
    • 2012/7/5 14:26:39
    「講義」をする立場ですが、玉置先生の「授業」の極意も大いに参考になりそうです。

    先生のホンモノの「授業」を受けてみたいくなりました。
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