著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
書くことで「生きる力」を育てよう
さとえ学園小学校校長・元筑波大学附属中学校教諭角田 陸男
2012/4/25 掲載

角田 陸男かくた りくお

昭和49年東京教育大学理学部応用物理学科卒業、昭和49年〜52年東京電波株式会社勤務、昭和52年〜53年東京教育大学附属中学校・附属高等学校教諭、昭和53年〜平成21年筑波大学附属中学校・附属高等学校教諭、生徒部長・研究部長・教務主任・副校長を歴任、平成21年〜現在学校法人佐藤栄学園さとえ学園小学校校長。
(専門)理科教育(物理・化学教育)、観察・実験教材の開発研究
(役員・委員等)文部省教育課程実施状況調査委員、エネルギー環境教育情報センター編集委員、中学校理科教科書編集委員(啓林館)

―中学校では、この春から新学習指導要領による授業が全面実施となりました。改訂のキーワードの1つでもある「言語力育成」について、中学校理科では、どのように取り組めばよいのでしょうか。

 PISAやTIMSSなどの調査から明らかになったのは、日本の中学生たちは文章で回答する問題に大変弱いということでした。文章で表現するということは、もう一人の自分と向き合う行為です。その意味で、自分の考えを的確に表現する、そして他者に正しく伝えるという、コミュニュケーション能力を高める必要があるのです。この能力は一朝一夕に高めることはできません。日頃の授業展開の中で、書かせる、発表させるという場面を意図的に多く取り入れて行く必要があるのです。その意味で本書で紹介したようなレポートやワークシートを工夫していく必要があります。

―本書では、言語力育成につながる、様々なワークシートが紹介されています。授業で実際にワークシートを活用する際のポイントや留意点を教えてください。

 授業の中で、きちんと記述させる時間を確保することが重要です。「後で書いて提出」とか「明日、提出」という指示では、ほとんどの生徒がきちんと取り組むことはないと思われます。ですから、授業展開の中で、記述する時間をきちんと確保することが大切なのです。1時間の授業プランの中に組み込むことです。

―今回の書籍では、「どのように書かせるか=書かせ方の秘訣」ということも、ポイントになっていると思います。ワークシートを書かせる際の指導の秘訣を教えてください。

 ワークシートを記入させる時間、まとめの時間で、机間巡視をしながら、授業の振り返りをしていくことも1つの良い方法です。「薬品を入れたとき、どんな変化が起こったかな? それはどんなことを示しているのかな?」とか「金属球の速さは落下させた高さとどんな関係になっていたかな?」といった記述する上でのヒントを話しながら、授業を振り返らせることを意図的に組み込むことです。もちろん余裕があれば、個別指導も有効です。

―本書では、ワークシートだけでなく、レポート例も紹介されています。レポートの課題を出すときのポイントや留意点、また、書かせる際の指導の秘訣を教えてください。

 レポートの課題は、生徒の興味関心を引くようなものを選ぶことが大切です。例えば、「これを我慢すれば、一体いくら儲かるのかな? 電気器具の1月の電気料金を調べよう!」などといった呼びかけでレポートに取り組ませるようにするのです。また、レポートを書く上でのポイント、「目的」「調べた方法」「調べた文献や資料」「分かったこと」「感想」などのレポートを構成する必須項目についてきちんと指導することも必要です。

―最後に、本書を活用して、新しい理科授業づくりに取り組まれる先生方にメッセージをお願いします。

 言語活用能力は、これからの時代に求められている「生きる力」を構成する最も重要なファクターの1つです。この能力は、理科の学習に留まらず、主体的な学びを切り開き、自ら新しい課題を見つけていく生徒を育てる上での必須の能力なのです。先生方の意欲的な取り組みで、子どもたちの目が生き生きと輝く授業を創り上げていただきたいと思っています。

(構成:茅野)
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