著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
驚異の学力向上を達成した算数授業づくりの秘訣
筑波大学大学院人間総合科学研究科准教授礒田 正美ほか
2009/12/11 掲載
 今回は礒田正美先生、野淵光雄先生に、『チェックリストですぐにできる! 新算数科の授業づくりスタンダード』について伺いました。

礒田 正美いそだ まさみ

筑波大学大学院人間総合科学研究科准教授
アジア太平洋経済協力(APEC)21カ国授業研究プロジェクト代表、日本数学教育学会常任理事(『数学教育』編集部部長)
主な著書に、『自ら考える力を伸ばす算数の発展授業』(2005)『思考・判断・表現による「学び直し」を求める算数の授業改善』(2009)(以上明治図書)など

野淵 光雄のぶち みつお

つくば市立大曽根小学校教諭
つくば市・茨城県内における実践発表多数
『朝日新聞』「花まる先生 公開授業」にて授業紹介(2009.3.21)

―本書に掲載されているチェックリストは、どのようなものでしょうか? 簡単にご紹介ください。

礒田先生:個別に算数授業づくりのコツを記した本は多いのですが、そのコツを授業づくりの局面ごとに体系的に項目立てて整理した本は意外に少ないと思います。本書のチェックリストには教師用、子ども用があり、自分が今何ができて、何ができていないか、次に何に挑戦すれば授業がよくなるのか、チェックしながら体系的にわかるようになっています。このチェックリストは、算数授業が実は苦手だった大曽根小の先生方が整理したものです。

―なぜ、算数で問題解決授業をする必要があるのでしょうか?

礒田先生:算数では、わかること、できることは大切です。同時に、学び方を学ぶことが求められます。例えば、計算の意味がわかり、できることは大切ですが、昨今では計算の「仕方を考える」ことが求められています。問題解決授業では、教科書の計算の仕方以外の多様な計算の仕方を子どもが工夫することを求めます。多様な考えが出されれば、そのよさを比べ、よりよい考えを見いだそうと話し合います。価値ある考えを見いだす活動を振り返る中で、算数の学び方や算数的活動の仕方も教えられます。問題解決授業でこそ、学び方、考え方が教えられるのです。

―子どもの考えを比較検討する際に、先生が特に気を付けるべきことを教えてください。

野淵先生:比較検討の指導に不安を感じる先生が多く、大曽根小でも長い間課題となっていました。しかし、チェックリストで具体的な指導ノウハウが共有できるようになると、比較検討はすぐによくなっていきました。具体的に気を付けるべきことは、
・「板書計画」での教材研究を通して、取り上げる考えや一般化に至るキーワードをあらかじめ予測する。
・比較検討ステップや期待する話し合い(アーギュメント)を計画する。
・発表シートの記述が焦点化され、集団思考の資料となるよう支援する。
・子どもの発表力とともに「質問力」を育てる。
といったことです。

―自分の考えをなかなか表現できない子には、どのような支援をすればよいのでしょうか?

野淵先生:一見活発そうに見える授業が、実は得意な児童と教師の間だけの話し合いになっている。これもまた大曽根小の課題でした。すべての子どもがのびのびと考えを表現できるようにするために、次のような初発段階、入門段階の具体的な指導ノウハウをつくり上げました。
・学び方の基礎となる「学習スキル」を高めるようにする。
・ハンドサインを用いて自分の発言の意思表示をできるようにする。
・机間指導でみとった児童を意図的に指名するようにする。
・ペア、グループ、友だちとの相談タイムで伝え合いの機会を増やす。

―最後に、算数の授業がもっとうまくなりたい!と考えている全国の先生方にメッセージをお願いします。

礒田先生:チェックリストを手に授業づくりに取り組むと、自分の授業がよくなっていくことが実感できます。「板書計画」と子どもの「学習スキル」のチェックリストが、子どもの学力を伸ばす基本であることに気付くことでしょう。算数の授業公開が楽しみになりますよ。
野淵先生:「算数の時間に考えるのが楽しい!」「みんなで話し合うのが楽しい!」。こんな子どもの声がよく聞こえるようになりました。教師が変われば授業が変わり、授業が変われば子どもが変わります。大曽根小の若い先生も授業がぐんぐんうまくなりました。負けられません!

(構成:矢口)

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