著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
固定概念を捨て、効果的なキャリア教育を!
埼玉県川口市立榛松中学校長桑原 憲一
2006/7/14 掲載
  • 著者インタビュー
  • 生活・生徒・進路指導
 今回は、進路指導のエキスパートであり、その中で話題のキャリア教育を効果的に取り入れた実践を展開されている桑原先生に、新刊『キャリア教育の進路指導資料集』についてお伺いしました。

桑原 憲一くわはら けんいち

1948年神奈川県生まれ。埼玉県川口市立中学校教頭、埼玉県教育委員会主任指導主事などを経て、現在、埼玉県川口市立榛松中学校長。日本特別活動学会常任理事、埼玉県特別活動研究会常任顧問。
【主な編著書】 『中学校学級活動適応指導のファックス資料集 1〜3年』(2005年) / 『説明責任時代の学級担任の仕事ガイドブック 子どもと保護者から信頼される取組みマニュアル 中3担任版』(2004年)

―昭和33年の指導要領改訂時にキャリア教育が位置づけられたそうですが、現在の形になるまでどのような変遷をたどったのでしょうか?

 昭和33年の改定において、特別教育活動の学級活動に「将来の進路の選択に関する活動」として、(1)自己の個性や家庭環境などの理解、(2)職業・上級学校などについての理解、(3)就職や進学についての知識、(4)将来の生活における適応についての理解を卒業までの3年間で40単位時間以上指導することが示されました。
 その後の改訂においても特別活動から削除されることなく、「将来の進路の選択に関する活動」は充実と改善を重ねて現在の「学級活動内容(3)学業生活の充実、将来の生き方と進路の適切な選択」という形になっています。

―今後、学校現場でどのようなキャリア教育を推進すればニートが減るとお考えになりますか?

 今の日本は、若者がこれという職業に就かなくても、敢えて苦労して働かなくても食べていける社会になっています。生活を維持するためにどんな職にでも就かなければならないという切迫感もありません。必要もありません。若者がそれなりに生きていける世の中になってしまっています。
 そんな社会の中で、若者をニートにしないためには本書で取り上げた活動を中学時代にしっかりと体験させることが大切です。併せて、中学校生活をアクティブに送ることができる生徒、学習・部活・学校行事・交友関係など、今の生活を意欲的に送ることができる生徒を育てることが最も大切でしょう。

―本書はキャリア教育をワークシートで指導できるようになっています。学級の中でどのように読者の先生に利用してほしいと思いますか?

 本書では、中学校段階で育てておきたい資質・能力を(1)肯定的な自己理解、(2)自己有用感の獲得、(3)興味・関心に基づく職業観や勤労観の形成、(4)進路計画の立案と暫定的選択、(5)生き方や進路に関する現実的探索に分類しました。
 そして、この分類に基づいた資質・能力を確実に育てるとことができる題材と展開を精選してあります。
 そこで、まず先生の学級の生徒に身につけてもらいたい資質・能力を明確にし、題材を選択していただき、ワークシートに従ってご指導ください。是非、先生ご自身も事前にワークシートへ記入してみてください。

―また生徒が楽しくキャリア教育に取り組めるよう、工夫した部分はどんなことでしょう?

 本書は、ねらいを確実に達成するためにワークシートに記入しながら展開していく形をとっています。したがって、生徒がねらいをよくわかり、進め方もよくわかり、記入もしやすいようワークシートのレイアウトやレタリングなども工夫しました。生徒の興味や関心を引き付けるワークシートとなるよう心がけました。

―中学生ではまだ職業に対する意識があまり高くないのが現状だと思います。 そんな中学生に有効なキャリア教育はどのようにすればいいか、指導する先生方へのヒントも含め教えてください。

 指導に当たる先生ご自身の固定概念を捨てることです。先生ご自身の職業観や勤労観、人生観などを語ることはたいへん重要ですが、そこへ生徒を導こうとしてはいけません。職業観や勤労観は持たせるものではありません。生徒自身が醸成していくものです。その手助けをするのが教育的営みです。
 多種多様な考え方、生き方があり、自分と周囲の幸せを考えた明るい将来への希望や夢を抱いてもらいたいという願いで指導に当たっていただきたいと思います。

(構成:木山)

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