インクルーシブ教育時代!支援のあるクラスづくり
ちょっと気になるあの子に着目すれば、どの子も願う「あるといいな」の配慮がわかる。居心地のよい、みんなのクラスづくりを始めましょう♪
支援のあるクラスづくり(2)
宿題がやりきれない!
帝京大学大学院教職研究科客員准教授吉本 裕子
2013/7/20 掲載
  • 支援のあるクラスづくり
  • 特別支援教育

 今回はけんた先生からの宿題の出し方についてのご相談です。

けんた先生

 漢字の宿題の出し方について相談させてください。
 僕が担任している3年生は、学年配当漢字が200字と4年生とともに最も多く、毎日宿題を出さなくてはこなせません。
 けれど、クラスのB君は書字障害があるため、特に漢字を書くことに強い苦手感があります。宿題を仕上げるために、毎日、お母さんと苦労しているようです。B君だけ課題を変えてもいいと思うのですが、本人はみんなと同じ宿題でなくてはいやだと言います。
 夏休みの宿題についても、B君はやりきれるでしょうか。
 裕子先生、よい方法があったら、教えてください。

裕子先生からのアドバイス

 けんた先生。宿題は、学習内容を家庭で復習したり、予習したりすることで、定着を図ることが目的ですね。
 子どもによって定着の仕方は違うのですから、いつも同じ内容の宿題でなくてもよいと考えると、宿題の枠は広がります。ちょっとのアイデアで、新しい道が開けるかもしれません。

Bくんにはこんな対応してみたら?

 まず、B君の書字障害の状況を把握することが大切です。
 医療機関にかかっているようでしたら、連携をとっていくことが必要になるでしょう。漢字だけでなく、書くことそのものに抵抗がある場合もありますので、保護者や医療機関と相談しながら、無理強いさせないようにしたいものです。
 そして、同じ宿題でも「ここまででいいよ」「なぞりがきでもいいよ」など、みんなと同じ内容だけれども、量ややり方は変えるようにしてみるのもよいでしょう。何より、B君はなまけているのではありませんから「いつもまじめに努力しているね。」と声をかけて、認めてあげることが大切です。
 書けなくてもパソコンを使えば、表現することができる時代です。苦手なことに挑むその姿は頼もしいですが、ツールを上手に使って学び方を工夫することで、さらに学びが広がることを教えてあげたいですね。

選べる宿題、楽しい工夫で学びの違いを認め合いましょう

 新出漢字の多い3、4年生には、毎日、漢字の宿題を出すことで繰り返し学習の効果を期待したいところかもしれません。しかし、単純に同じ漢字をいくつも書くという学習方法をまず変えてみませんか?
 「習った漢字を使って短文を作る。」という課題にすれば、子どもの能力に合わせて、たくさんの文を考える子/少ない子と違いがあっても、活用することで記憶も定着します。宿題の目標を子どもによって変えてそれぞれを達成するようにすれば、Bくんだけでなく他の子にとっても幸せになります。
 ドリルのここまでは必修。それ以上できる子はどんどんやってもよいといった設定の仕方を変えるだけでもよいでしょう。クラス全体が人によって宿題の内容や量は違うということがお互いに認められるクラスになるとすてきです。
 夏休みの宿題を出すときにも、一律に出すのではなく、選択課題や課題の量を選べるもの、発展的に挑戦できるものなど、宿題のメニューを工夫すると、子どもたちも楽しんで取り組めますね。ぜひ、挑戦してみてください。

けんた先生

 宿題というとみんな同じものにしなければいけないと思い込んでいました。その子に合った宿題という違った発想で、考えてみます。

どの子も笑顔になる宿題の出し方

  1. 書字障害等の苦手感の強い子への配慮は、物理的精神的両方からの支援を考えましょう
  2. どの子も意欲的に取り組める宿題の出し方を工夫してみましょう

吉本 裕子よしもと ゆうこ

特別支援学級(知的障害学級)の担任として29年、その後管理職として11年、公立小学校に勤める。特別支援学級担任時代は東京キの個別の指導計画作成に携わった。校長時代は「特別支援教育の考えを基盤とした4つの教育改善」のテーマの下、通常の学級の担任と通級による指導担当者たちと研究発表を実施。平成25年3月に小平市立鈴木小学校の実践をまとめた『特別支援教育の視点で授業改善』を明治図書より出版。
現在 調布市教育委員会教育支援コーディネーター、清瀬市特別支援教育巡回指導員等。

(構成:佐藤)
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