インクルーシブ教育時代!支援のあるクラスづくり
ちょっと気になるあの子に着目すれば、どの子も願う「あるといいな」の配慮がわかる。居心地のよい、みんなのクラスづくりを始めましょう♪
支援のあるクラスづくり(1)
お母さんからの連絡帳に押しつぶされそう!
帝京大学大学院教職研究科客員准教授吉本 裕子
2013/6/20 掲載
  • 支援のあるクラスづくり
  • 特別支援教育

 今年度1年間このコーナーを担当致します吉本裕子です。よろしくお願いします。このコーナーでは、ちょっと気になる子がいるクラスを担当する若い先生のお悩みに寄り添って、よい解決の道を共に考えていきたいと思います。

 さて、第1回は、「お母さんからの連絡帳に押しつぶされそう!」です。まみ先生が相談にいらっしゃいました。

新任
まみ先生

 裕子先生!
 発達障害の疑いがあると保育園から申し送りを受けたA君のママから毎日、連絡帳で「子どもが授業で困っていないか」「友だちからいじめられていないか」と問い合わせがあります。
 とても気を遣うのですが、最近は全く問題ないと思われる子のお母さんからも同様の連絡帳がチラホラ。お返事しきれず押しつぶされそうです!
 わたしのクラス、うるさ型のママが多いみたいです。

裕子先生からのアドバイス

 まみ先生、大丈夫ですよ。
 入学したばかりのA君ママのように、不安になる方は多くいらっしゃいます。まみ先生も「困ったママ」と思わず、「困っているママ」なんだと思って接してあげてください。すると、解決の糸口が見つかるものです。

A君のママにはこうお返事してみたら?

 まず、連絡帳には一つ一つ答える必要はありません。文章になると、記録として残ってしまう、行間をいろいろと考え、かえって誤解を招くなどの問題が起きやすくなります。お返事は事務的な事柄にとどめましょう。
 不安の強いA君のママには、子どもが落ち着くまで週1回くらい、電話でお子さんの様子を手短にお伝えすることを勧めます。よいところはもちろんですが、課題についてもそれとなく知らせておきます。悪いことの情報を入れておくことは、今後ご家庭の協力をいただくためにも大切です。先生の困っていることではなく子どものやりにくさについてお話していくことが必要ですね。ママの声の調子もそれとなく把握できますね。
 えっ、週1回の電話はたいへん!と思うかもしれませんが、この一手間が数ヶ月後にはA君のママの信頼を勝ち取ることになります。

写真とエピソードで楽しい学級通信を出してはどう?

 新学期のうちは学級通信をこまめに出しましょう。
 新しい学年、学級になり、学校生活の様々なところで変化があり、それに慣れるのは時間がかかる子どももいます。クラスのルールの明確化は子どもたちにはもちろんですが、学級通信等で家庭にもお知らせしておくと、家庭でも声かけをしていただけます。新1年生の場合は、初めてのお子さんを入学させる家庭もあるので、もう一手間かけて、丁寧に説明をしていくことが必要でしょう。
 初めての体験をいっぱいする学校生活、学童保育の生活も加わると、お母さんが子どもに「今日は何をしたの」と聞いても、ほとんど覚えていないものです。毎日一人一人の家庭に、出来事を伝えるのはそれこそ大変です。しかし、子ども達が楽しく学校生活を過ごしていることがわかると、保護者も安心して送り出すことができます。
 週に1、2回形式張らずA4サイズ程度の学級通信はどうでしょうか。クラスの楽しいエピソードを入れる、写真を入れるなどして、負担に思わず発行できるようにしましょう。トラブルの記事は載せないようにします。写真や個人名等の個人情報については年度初めに載せてもよいかを各家庭に確認しておきましょう。

新任
まみ先生

 裕子先生!ありがとうございます。帰ったら早速トライしてみます!

お母さんからの連絡帳に押しつぶされないための鉄則!

  1. 1学期、担任からの積極的なアプローチが保護者の信頼につながります。
  2. こまめで楽しい学級通信が保護者の安心につながります

吉本 裕子よしもと ゆうこ

特別支援学級(知的障害学級)の担任として29年、その後管理職として11年、公立小学校に勤める。特別支援学級担任時代は東京キの個別の指導計画作成に携わった。校長時代は「特別支援教育の考えを基盤とした4つの教育改善」のテーマの下、通常の学級の担任と通級による指導担当者たちと研究発表を実施。平成25年3月に小平市立鈴木小学校の実践をまとめた『特別支援教育の視点で授業改善』を明治図書より出版。
現在 調布市教育委員会教育支援コーディネーター、清瀬市特別支援教育巡回指導員等。

(構成:佐藤)
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