フル・インクルーシブ教育の学校&授業づくり
インクルーシブ教育の最先端の研究を担う,東京大学大学院教育学研究科と大阪市立大空小学校の取り組みを紹介。
フル・インクルーシブ教育の学校&授業づくり(9)
なぜPTAではなくSEAなのか
大空小学校SEAキャプテン吉田 昌二
2019/2/20 掲載
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 大空小学校には、PTAではなく、それに変わる組織として、SEA(Supporter=支える人、Educator=教える人、Association=組織)があります。保護者と教員だけでない、「みんなでつくるみんなの学校」という理念がそこには込められています。このSEAができた経緯と意義について、現在のSEAキャプテンを務めておられる吉田さんに書いていただきました。

 大空小学校では開校当初よりPTA会長を会長とは呼称せずキャプテンと呼んでいました。それは創立間もない学校であるからこそ、子どもと同じ目線で携われるように、関わっていけるように堅苦しいことはやめようという初代キャプテンの思いがありました。野球が好きで大空小学校にもソフトボール部をつくりたいんだ、と在籍中に尽力されておりましたので彼のイメージの中には上から目線ではなく「みんなの代表」だという思いを込めてキャプテン(主将)を名乗られていたのだと思います。そう、名は体を表す、と言いますが名前を付けるという行為がしばしば重要な意味をもつことがあります。
 私がそのキャプテンを引き受けた当初、浅学な私はPTAが何の略であるかさえ知りませんでした。スピーチか何かの機会に調べる必要があり、保護者と教員の会だとそのとき初めて理解したのですが、それまでは保護者会とかなり混同していた部分があると思います。
 そんな私でも何とか1年目を終えようとしていた頃、当時の教頭先生がPTAのリーダー会議を終えた私のところに、ある資料を持って来られました。ESAという見慣れないアルファベットとその読み方を検討するように手書きで(いいさ、ええさ?)と書かれた紙でした。「みんなでつくるみんなの学校」というフレーズで学校をつくりあげていくために次に必要なのはPTAという枠組みの解消でした。大空小学校では子どもたちに教えるのは教員(Teacher)だけではありません。ボランティアやゲストティーチャーといった教える人(Educator)がたくさん居ます。また、保護者(Parent)だけでは子どもたちが安心して学べる環境をつくることができません。それには地域の方も含めた見守る人(Supporter)が必要でしょう。今までよりももっと大きな組織(Association)が必要である、といった主旨が書かれていました。
 それまでの大空小学校のPTA活動では常設の委員や係はなるべく置かず、子どもたちにしてあげたいイベントや行事、見回りなどの人手の必要なときにプロジェクトチームを募って運営する小さな組織運営を心がけていました。それは必要に迫られてのものでしたが、「できる人が できるときに 無理なく 楽しく」というコンセプトを体現するためには理にかなっていたとは思います。その枠組みをもう少し広げることにより、地域全体で子どもたちを見守り、教え、育む環境が整えられる、そのビジョンが見えた気がしました。
 私は教頭先生にエサって読めてしまううえに語感も語呂もよくないし、PTAに対比させるなら並び替えてSEAでいいんじゃないですか?と進言しました。こうしてSEAが誕生しました。ネーミングしてから思いましたが、”大空”小学校には子どもたちを見守る”海”がある。その代表がキャプテン(船長)なんてちょっと洒落が効き過ぎでしたでしょうか。
 子どもたちは小学校でそれまで育ってきた年数と同じだけの年数を、初めての社会生活の中で過ごします。そこには不安やストレス、もちろんそれ以外の問題も起こります。それ自体は昔から変わりません。ですが今と昔で子どもたちを取り巻く環境が異なっているであろうことは想像に難くありません。しかし、私たちには今の子どもたちが安心して過ごせる環境をつくる義務があります。そのためには昔の子どもたちである私たちが今の子どもたちの環境を理解し、時にはもっと昔の子どもたちに経験をもとにした助言を求め、見守っていく。学校が地域の学校になるために必要な組織。それがSEAなのだと私は思います。

まとめ

  • 親だけが見守るのではない、また教師だけが教えるのではない、大空小学校の「みんなでつくるみんなの学校」を実現するためには、地域の人も一緒になって見守り、関わる大人すべてで教え合うSEAという環境が必要でした。

吉田 昌二よしだ しょうじ

1972年3月22日生まれ
大阪府立阿倍野高等学校普通科卒
システムエンジニア
第二代、四代SEAキャプテン

(構成:赤木)
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