向山型算数教え方教室 2002年7月号
「説明しない・教えない」授業こうしてつくる

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向山型算数教え方教室 2002年7月号「説明しない・教えない」授業こうしてつくる

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ジャンル:
算数・数学
刊行:
2002年6月
対象:
小学校
仕様:
B5判 92頁
状態:
絶版
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目次

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特集 「説明しない・教えない」授業こうしてつくる
「小刻みな作業の繰り返し」→「点検」→「個別評価」で授業を設計する
木村 孝康
4つのポイントで難問を克服する
馬場 慶典
子どもの思考の流れにそって組み立てる
大関 貴之
細分化してテンポよく問う
熊谷 壽
基本型 5×30=150(15だけ赤)の解明に迫る!
正木 恵子
三段階指導の例示に注目し説明をなくす
宮澤 宏祐
5つのポイントで授業をつくる
八巻 修
ミニ特集 「学級崩壊」への向山型算数からのアドバイス
「統率」のパーツの宝庫,向山型算数
齋藤 奈美子
絶対に空白の時間を作るな!!
毛見 隆
授業が変わる 子どもが変わる
□□□□□
「言葉を削る」と「緊張感」が生まれる
太田 政男
「一点突破の闘い」こそが生還への道を開く
金子 史
赤鉛筆で「学級崩壊」をふせぐ
中野 慎也
グラビア
第17回向山型算数研究会セミナーIN愛知 2002.4.14
村田 斎
〜新年度,学級経営,教科指導に向山型算数を位置付ける〜
向山型算数キーワード
必然性
木村 重夫
論文ランキング
4月号
木村 重夫
巻頭論文 算数授業へのこだわり
向山型算数は数十のパーツを組み合わせたシステムである。だから、向山型と問題解決型の両方をとり入れるという考えは、100%失敗する
向山 洋一
学年別7月教材こう授業する
1年
のこりはいくつ ちがいはいくつ
八和田 清秀
ちがいはいくつ
酒井 雅代
2年
3けたの数 100より大きい数をしらべよう
平田 真紀
100より大きい数をしらべよう
松山 英樹
3年
ぼうグラフと表 見やすく せいりしよう
小林 宏
見やすく せいりしよう
雨宮 久
4年
折れ線グラフ
武藤 淳一
折れ線グラフ
畑屋 好之
5年
三角形・四角形の角
伊藤 壮一
四角形をつくろう
山口 正仁
6年
平均とその利用
勝田 秀樹
体積
梶野 修次郎
向山型算数に挑戦/論文審査 (第32回)
グラフ、表の記入はまず一つを記入チェックをする。それは、どれからかが問題だ。
向山 洋一
向山型算数実力急増講座 (第34回)
優れた教材を選び、広めるのは教師の大切な仕事
木村 重夫
向山型算数の原理原則と応用 (第34回)
線分図の扱い方10の原理原則
小林 幸雄
向山型算数と出会ってTT授業・少人数授業が変わる (第4回)
授業突入で集中させ、分かる・発表する喜びを!
川口 達実
向山型算数WEBサロン (第28回)
教科書を学ぶ学び方を最初の授業から徹底する
赤石 賢司
中学校からの発信!「向山型数学」実践講座 (第28回)
教科書の重要事項を、50分間に3回変化させながら繰り返し学習させるシステム
井上 好文
『教え方大事典』を活用した算数授業体験
1年/熱中!!「楽しい計算パズル」
高橋 一行
3年/『教え方大事典』には,微細技術までぎっしり!
望月 健
4年/珠玉の論文がちりばめられている
賀本 俊教
5年/「おうぎ形」であるかを問う
寺本 聡
6年/子どもが悩む問題でドラマを創る
石井 研也
中学/授業の導入は誰でもできる発問から
一戸 佐登史
もう一つの向山型算数 難問良問1問選択システム (第34回)
低学年
後藤 あゆみ
中学年
奈良 満
高学年
大澤 智
衝撃のライブ体験「向山洋一の介入模擬授業」を受けて (第4回)
教材は易しい方から先にすべき!!
姫岩 弘治
文,図,数式の3 つを比べて構造を見抜く
下重 和也
向山型算数セミナー
8月の東京会場からセミナーの内容がより実際的になります
板倉 弘幸
腹の底からの実感!向山型算数を知る前と後
醜い自己陶酔型算数だった私
細谷 華世子
子どもも教師も変わる向山型算数
伊藤 悦子
向山型算数で手応え実感
藤澤 誠
手応えズシン! 計算スキル
白瀬 嗣大
褒め言葉のシャワーこそ大切
安達 覚
カンナで削ると分かる
西田 克裕
問題解決学習から向山型算数へ
高橋 健
自由投稿フリーページ
「TOSS子ども用百玉そろばん」ついに完成!
木村 重夫
実物ノートと指導のポイント
ゆったり見やすくを合い言葉に
浅井 輝夫
読者のページ
目の前の子どもの事実から出発せよ
編集後記
木村 重夫赤石 賢司
TOSS最新情報
向山型算数に挑戦/指定教材 (第34回)

巻頭論文

算数授業へのこだわり

向山型算数の数十のパーツを組み合わせたシステムである。だから、向山型と問題解決学習方の両方をとり入れるという考えは、100%失敗する

向山洋一


向山型算数は,効果のはっきり出る極めて優れた指導方法ではあるが,だからといって誰にでもすぐに受け入れられるわけではない。

教師を十年,二十年とやっていれば自分の身についた方法がある。多くの場合は我流のどうしようもない方法だが,その人にとっては,そのやり方で十年,二十年とメシを喰ってきたのである。

「これでいいんだ」と思ったり,「自分のやり方が一番」と思っているのである。

誰だって「自分はすぐれている」と心の底では思っているのである。

そこへ,今まで考えたこともないとんでもない方法が持ち込まれたら,ましてや「教科書通りに教える」という一見「素人の言うこと」を持ち込まれたら,反発するに決まっている。「反対」と思い込めば,理屈は山のように出てくる。貨物列車に満載できるくらい理屈はつみ込めるのだ。

今までの自分を変えることなど,凡人にはできない。

だから,ヴェテランになって「向山型算数」のことを知って,興味,関心を示す人は,それだけで非凡人なのだ。知性的な人であり,向上心のある人であり,柔軟な精神の持ち主なのである。

自分でやってみれば,そういう人なら効果は必ず分るはずである。

但し,やってもらう時に,素直にその通りやってもらうことが大切だ。

例えば,「あかねこ計算スキル」を使うとしよう。

あかねこスキルのすぐれている点は,「本の中」だけにあるのではない。「本の中」にあるのはせいぜい二割程度である。

その良さは,「使い方」の中にある。「使い方」(ユース・ウェア)は,「向山の授業」そのものなのである。

わずか六,七分の使い方だが,そこには,向山の考えた,あるいは整理した知恵が十も二十もつまっているのである。

その使い方は,ライブで学ぶのが一番いい。但し,一度のライブで身につけられるのは,せいぜい50%である。

その場では,「分った」と思うのだが,二度目のライブに出ると,「こんな大切なことを見のがしていた」とショックを受けるのである。

自動車の「縦列駐車」だって,一度に身につけられる人はいないだろう。

何度か練習し,何度も指導教官に指導をうけてできるようになるのである。

教師の技術だって同じこと。運転技術の「一部分」よりむずかしくて当たり前なのである。

それなのに,教師はなぜ,一度見ただけで分ったつもりになるのだろう。

何十万人,何百万人という教師の先達が作ってきた技術の最高峰は「一度見たらできる」というものではないのである。

少なくても,「縦列駐車」を身につけるときの真剣さと熱心さとくり返しは必要である。

真剣に素直に学べば,誰でも身につけていけるのである。

しかし,世の中には,「素直」になれない不幸な人もいるのである。

十人十色というごとく,人はそれぞれに違っている。国民的な人気の長島でさえ,「好き」という人は六割である。「長島は嫌い」という人も世の中にはけっこういる。

サントリーのウィスキーの「ダルマ」が超人気で全国シェアの六割をとっていた頃のことである。

サントリーでは,あの手この手を考えて実施したが,どうにも動かない。六割がピークのままだ。

買わない人は,「品質がいい」「高級である」ということでは,テコでも動かない人である。「ウィスキーならどれでもいい」「安いなら買う」という人々だった。

そこで,サントリーは「おまけ」をつけた。

とたんに,これまで買わなかった人々が買い出した。

ところが,考えてもみなかったことが起こった。

それまで,サントリー「ダルマ」の熱心なファンが,離れていってしまったのだ。

「高級感」のなくなった,「おまけ商売」のウィスキーなど,ほしくないというわけだ。

サントリーは,おまけを中止した。

このように,「考え方」が全くちがう人々が世の中にはいるのである。

TOSSの影響を広げたいと思うが,「全部」など,全く考えていない。

いや,「全部」をめざすと,堕落してしまう。

せいぜい,半分の人をめざせばいいのである。

問題解決学習とは妥協のしようがない。

これは,勉強のできない子をスポイルする極めて悪質な指導法である。

ADHD,LDなどをきちんと学んだ人なら,問題解決学習は,子どもをふみつけにする悪魔の指導法だと思うだろう。

少々程度が悪いというものではない。

悪魔の指導法である。

私は,問題解決学習をすすめる研究者と,障害児を専門とする医師を含めて,ぜひ論争をしたいと思っている。

近く,TOSSはツーウェイ臨刊として,「障害児とグレーゾーンの子どもたちの教育」をテーマとする教育雑誌を明治図書より創刊する。

障害児及びそれに近いグレーゾーンの子どもたちは,日本の児童の一割はいると医学的に推定されている。

問題解決学習は,これらの子どもを更にひどい状況に追いやっている。

証拠・事実は山ほどある。

ある県庁所在地のA小学校は,いわゆる「公立の名門小学校」である。

算数は,問題解決学習一色である。

ここに,三人の子どもを預けている医師がいた。

子どもたちは,口々に「算数は大嫌い」という。「勉強はつまらない」という。

算数の授業は,プリントのみ。一年間たってもノートは一ページしか使わない。教科書も,ほとんど開かない。

そのうち何とかなるだろうと考えていた医師は,「算数が全く分らない」という我が子の訴えに,向山の著書を見よう見まねで,算数の教科書を教え出した。

子ども達は「よく分る」という。「算数は楽しいんだ」というようにもなった。

たちまち,一年分を終了した。

その頃,子どもは,「学校へ行きたくない」と言い出した。

「学校の勉強は,つまらない。分らない。お父さんの教え方はよく分る」と言ったのである。父親は悩み,友人の県会議員や教育長によほど訴えようと思ったが,思いとどまったという。

「こんな最低の指導法があり,最低の教師が

いるんだ」と医師はあきれていた。「教育委員会は何をやっているんだ」とおこっていた。

こうした便りや訴えが,私のもとに山のように届く。

私がパーソナリティーをやっているラジオ番組にも届く。

問題解決学習は,医師の言う通り,最低の指導法なのである。

そんな最低の指導法を推進しているひどい学校がある。

若い教師で悩む人もいる。

研究授業をするとき,「向山型を止めろ。教科書を使うな」と言われるからだ。

そこで,両方をまぜこぜにしてやることになる。

これは失敗する。100%失敗する。

いいところは,全くない。

ロケットを組み立てるときに,荷馬車の部品も使おうというようなものだ。

全部ダメになる。

そもそも,向山型算数は,システムだ。

何十というパーツから組み立てられている。その中の一つでも「問題解決学習の部品」にすれば,動かなくなる。

システムは,最低レベルのパーツに支配されるのである。

そのような時は,研究授業を止めればいい。「それ以外の方法では,私はできません。

どなたかに代わってください」と言えばよい。

T・Tの時でも同じである。自分がT1でやるなら,「向山型しかできません」といえばいいのだ。「教科書を使った方法しかできません」という言い方のほうが,通りやすいだろう。この点をあいまいにすると駄目だ。

「向山型と問題解決学習の両方からとり入れる」という考え方自体が,システムを全く分っていない人間の言うことだ。

システムを分ってないということは,向山型を全く分っていないということなのである。

一年や二年,向山型ができなくても,いいではないか。その方がすっきりとするし,その後もよくなっていくものである。

お知らせ。日本教育界がかつて作った革命的教具「百玉そろばん」児童用を,TOSSとトモエソロバンで共同開発。学校用,従来の半値以下の1個1500円。

申込,問い合わせは東京教育技術研究所へ。

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