向山型算数教え方教室 2002年6月号
向山型算数「1時間の授業組み立て」の秘訣

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向山型算数教え方教室 2002年6月号向山型算数「1時間の授業組み立て」の秘訣

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ジャンル:
算数・数学
刊行:
2002年5月
対象:
小学校
仕様:
B5判 92頁
状態:
絶版
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目次

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特集 向山型算数「1時間の授業組み立て」の秘訣
ポイントは例題をどう組み立てるか
根本 直樹
開始は0秒後,終了は1分前
水野 正司
できない子ができる組み立てか
塩苅 有紀
3点セットを教え,先生問題で補う
上木 信弘
授業の流れにパーツをのせて
浜谷 修久
ミニ特集 ついてこれない子どもへの向山型指導
電卓は神様
高橋 佳子
一時一事の基本を守る
豊田 亮平
九九表は持たせるべきだ
加藤 延啓
ミニ定規を使わせて力を伸ばす
小室 由希江
まずはスタートラインに立たせる!
芹沢 晴信
「できるようになる」事実を作る
砂原 聡
グラビア
第16回向山型算数研究会セミナーIN東京 2002.2.16
村田 斎
〜ていねいな上にていねいなのが向山型ではない〜
向山型算数キーワード
かしこい
木村 重夫
論文ランキング
3月号
木村 重夫
巻頭論文 算数授業へのこだわり
上海師大附属小の1年生は、ミニ定規を使いこなして、かけ算、わり算を勉強していた
向山 洋一
【特別寄稿】ADHD(注意欠陥多動性障害)/LD(学習障害)児を指導する医師が絶賛する向山型算数
横山 浩之
学年別6月教材こう授業する
1年
のこりはいくつ ちがいはいくつ
末宗 昭信
のこりはいくつ ちがいはいくつ
高橋 朋子
2年
長さをはかろう
桜木 泰自
長さをはかろう
角田 俊幸
3年
水のかさをはかろう
田中 裕美
水のかさをはかろう
高杉 祐之
4年
わり算の筆算
細川 晃
しりょうの整理
有村 春彦
5年
四角形
山口 きみ子
計算のきまりと関係
高山 佳己
6年
単位量あたりの大きさ
中野 慎也
体積
新村 勲
向山型算数に挑戦/論文審査 (第31回)
授業のポイントをつかめ!
向山 洋一
向山型算数実力急増講座 (第33回)
木の葉が風でゆれる音が聞こえる静寂をつくれ
木村 重夫
向山型算数の原理原則と応用 (第33回)
教科書を見抜く7つのものさし
白石 周二
向山型算数と出会ってTT授業・少人数授業が変わる (第3回)
ここぞ!『広め広がるチャンス』である
古川 伸一
向山型算数WEBサロン (第27回)
省略されている「問題を考える足場」を補って授業する
赤石 賢司
中学校からの発信!「向山型数学」実践講座 (第27回)
全員100点!数学スキルを使うと生徒も教師も笑顔で授業を終えることができる
井上 好文
『教え方大事典』を活用した算数授業体験
1年/すき間時間は大事典でOK!
中島 康
3年/大きな数の導入を知的に
飯野 哲次
4年/熱中!!知的「フォーフォワーズ」のおもしろさ
澤田 好男
5年/思わずクラス中から拍手がわき上がった
桜井 健一
6年/混乱させないために大事典を活用
菊地 亨
中学/逆転現象を作り出す
月安 裕美
もう一つの向山型算数 難問良問1問選択システム (第33回)
低学年
酒向 孝昌
中学年
名村 嘉洋
高学年
北村 聖子
衝撃のライブ体験「向山洋一の介入模擬授業」を受けて (第3回)
「なぜ,数えさせたのですか?」
浅野 光
テンポ,組み立て,語尾,すべてが違った
小貫 義智
向山型算数セミナー
セミナー参加者の声ここで変わる算数への取り組み
板倉 弘幸
腹の底からの実感!向山型算数を知る前と後
分かったつもりにならない
熊谷 直樹
向山型算数新採奮闘記!
和泉 みのり
教師も算数好きにする向山型算数
大和 正秀
私だってわかる授業をしたい
齋藤 光世
はじめての充実感
山下 文廣
赤鉛筆が子どもを変えた
吉河 洋子
卒業する子たちの言葉
廣川 徹
自由投稿フリーページ
向山実践を『詰め』の視点で分析する
木村 重夫八巻 修
実物ノートと指導のポイント
関係図から式を導かせる
行實 克彦
読者のページ
私が腹の底まで手応えを感じた瞬間
編集後記
木村 重夫赤石 賢司
TOSS最新情報
向山型算数に挑戦/指定教材 (第33回)

巻頭論文

算数授業へのこだわり

上海師大附属小の1年生は、ミニ定規を使いこなして、かけ算、わり算を勉強していた

向山洋一


2002年3月春休み,私たちは上海にいた。

上海の発展はすごい。上海の高速道路から見る高層ビル群は,東京の倍もある。しかも,一つ一つのビルが個性的でオシャレだ。

上海郊外の新空港からは,リニアモーターカーが建設中で,来年に完成するという。

甫東地区には,シャープ,松下,京セラなどの日本企業の巨大な新しい工場群が並んでいる。

立ち寄った大型書店の2Fは,すべて教育関係。日本でもトップクラスであろうその広いフロアには,美しい子ども用教材が並ぶ。

暗唱教材もある。自然科学もある。

十年前来たときは,見劣りする本だったが,今や,日本よりも美しいカラー刷りの児童用の本が,日本の大型書店の十倍ものスペースで並ぶ。

もちろん,小学生用英語教材もコンピュータ教材も,各種,学年別で並んでいる。

算数の教材,テスト等をとりあげる。

基本をきちんと教えるのもあれば,楽しく考えさせる教材もある。

日本よりレベルは,はるかに上だ。

中国から日本に転校した人が,「日本のようにレベルの低い算数をやっていて,もどるときが心配です」と感想を述べていたのを思い出す。確かに,日本の低いレベルの算数,英語では,中国に行ったら2学年は下げなくてはついていけないだろう。

発展する上海の,意欲に満ちた教育。

それは,頭で分ってはいた。分ってはいたが,実際に子どもたちを見たとき,声が出なかった。

校長先生にお願いして,突然上海市実験学校の小学校1年生の授業を見せてもらった。

中国は9月新学期なので,1年生に入って半年すぎた頃である。

どの子も,漢字1500字の読み書きができ,意味が分るという。

1年生の授業は,算数だった。次の板書があった。

1年生で,かけ算を教えていた。(となりの1年生のクラス,帰国子女は,わり算を教えていた。)

これだけで,びっくりだった。

先生は,計算の順番を聞いている。子ども達は,授業に集中している。

上海師大附属小の1年生は,ミニ定規を使いこなして,かけ算,わり算を勉強していた

12→12→12

↑g

×4×4×4

()(8)()()

指名された子が,ちゃんと説明できると,拍手が出る。(シャン・シャン――シャン・シャン・シャン)である。

「なるほど」私は感心した。

日本では,「よくやった」ときの拍手はずっと続く。続いていって自然に切れる。

しかし,中国,上海市実験学校では,5拍を力強く打って,終了だ。

授業中の行為としては,上海のほうがはるかに合理的だ。

授業が,しまる。

問題は,上海の小学校の授業では,「拍手」の方法まで考えていたということだ。日本の教師は,私を含めて,今までに誰も考えなかったことだ。

「授業中の行為の一つ一つに意味がある」ことを,目の前で見せつけられた。

ところで,この算数の授業は,「まるで,向山型」である。計算の順序をきちんと教え,しかも子どもに言わせるのである。参観した教師達は「向山型だ」と,ビックリしていた。

私も,初めて知った。

上海市実験学校といえば,日本では「筑波大附属小」のような学校である。

国は違っても,「すぐれた指導方法」というのは,似てくるのだと思った。但し,評価の基準を子どもたちに置いていればである。

子どものノートも,実にきれいだ。

私は,子ども達の手もとを見て,思わず叫んでしまった。

「あっ。ミニ定規を持っている」よく見れば,1年生は全員,長さ12cmのミニ定規を持って,それを使いこなしていた。

ミニ定規を使うことによって,算数の学力は明らかに向上する。プロの教師の実感なのである。

だから日本でも,有名私立小学校や,かなりの附属小では,ミニ定規を使わせていた。

今は退職した河本先生は,東北大の附属小学校で,ミニ定規を使うことを教えられたと言っていた。「そんなの,当然でしょう」とも言っていた。

一昨年,私が訪れたイギリスの中・高一貫校でも,最優秀クラスは,全員がミニ定規を使っていた。

「授業中にミニ定規を使わせる」などということは,教育書のどこにも書いてない。

しかし,私は,ミニ定規を使わせていたし,いくつかの有名私立,附小でも使わせていた。

上海市の実験小学校でも使わせていたし,イギリスでも使わせていた。

それぞれ,連絡をとりあったわけではない。本に書いてあったわけではない。

教師が,それぞれの場で工夫していって,自然に辿りついた方法なのである。

日本のいくつかのクラスでは,ミニ定規を使わせようとすると,親の中にクレームをつける人がいるらしい。

そういうときは,なぜ使わせるのかを話した上で,「でも,どうしても私の子にはフリーハンドでというなら,それでもけっこうです

よ」と言えばいい。

そうやっても,教師は何も困らない。害をうけるのは,「わからずや」の親を持った子どもだが,それもしかたがない。

そもそも,指導の方法に親が口を出すことなど,もっての他なのだ。

子どもが,「めんどくさい」と言ったのを,親が持ってきたのだろうが,そんなときは,むきにならないで,上手にうけ流せばいいの




7

である。

「赤ボールペン」の禁止だって,「ボールペン

で,手がふれて,汚くなった経験ありません

か」と言えば,誰でも分ることだ。「赤サイン

ペンで,紙の裏までにじんだことありません

か」と言えば,誰でも経験あるだろう。

それなのに,「赤えんぴつにする必要がな

い」と,親が言うのなら,使わせればいいの

である。ノート検査のときに,きびしく評定

すればすむことだ。

但し,同僚の教師がいうのは,引いてはい

けない。不勉強の授業の低い教師のいうこと

は,聞く必要はない。そもそも,教師として

そんなことを言うのは,「教師失格」に匹敵す

る言動なのである。

上海師範大学の附属ともいうべき,上海実

験学校で,1年生がかけ算,わり算をやって

いたことは,本当にびっくりした。

しかし,その算数の指導は向山型であり,

全員の子どもが,ミニ定規を使っていたこと

は,うれしかった。

1年生のとなりのクラスは,3年生だっ

た。廊下には,個人新聞が,カラフルに貼ら

れていた。

小さな画用紙に,カラフルに個人新聞を書

かせ,全員分を廊下に貼り出すことは,日本

の学校ではよくやることだ。

上海の3年生の個人新聞に近寄った日本の

教師は,全員,息をのんだ。

個人新聞は,すべて英文で書かれていた。

しかも,コンピュータで打ち出したもの

だった。

小学校の3年生が,全員,コンピュータを

使って,英文の個人新聞を書いていること

は,いささか,日本の教師を打ちのめした。

私たちの教え子は,この子たちと十数年後

には,国際舞台でやりあうのである。

整理しよう。

1年生に入学して3ヶ月で,1500の漢字を

読めるようになる。学習はインターネットを

使用している。ソフトはTOSSランドの筆

順君とそっくりである。偶然の一致だ。作成

は,上海の方が早い。

英語は,正課であり,1年生で週4時間,

基本的にオールイングリッシュである。

1年生で,2位数のかけ算,わり算をする。

3年生で,コンピュータを使って,英文の

個人新聞を全員が作る。

授業は,明るくてのびやかで品があった。

日本の教室の授業より,はるかに優しくのび

やかである。TOSSの教師の授業に似てい

た。上海師大の立派な庭園に桜の園を作った。

TOSSの寄進者の名前が黒御影の立派な石

碑に刻まれていた。最初は,中央事務局,続

いて中央企画室,明石,江部,樋口と続く。

そして,サークル毎の名前が続く。今年の10

月の連休に,序幕式と上海市実験小学校の参

観を特別企画した。そのどちらもぜひ見てほ

しい。

寄進者の追加寄進者も,これから募る。

上海にいる日本企業三千社にもよびかける

予定だ。ワシントンポトマック,北京の並木

道と同様の桜の名所にしたい。

一度,ぜひ上海を訪れてほしいと思う。

教師は,子どもとともに未来に国際競争の

準備をしなくてはならないのである。

国際社会を見ないで国際的視野は広がらな

いのである。

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