きょういくじん会議
まじめなニュースからやわらかネタまで、教育のことならなんでも取り上げる読者参加型サイト
全国学力テスト―国語の調査結果をどう捉えるか
kyoikujin
2007/10/27 掲載

 実施からちょうど半年になる24日に結果が公表された全国学力・学習状況調査。翌25日の各紙で一斉に「知識の活用苦手」「応用・記述は苦手」などと報じられたが、「国語」の課題はなんだったのだろうか。

結果の読み方には注意が必要?

 調査結果は平均正答数、平均正答率等で表されている。単純な選択問題も、100字以上の記述問題も全て「1問」という計算になっているのだ。
 小学校ではA問題が18問、B問題が10問。この限られた問題量の中での正答率をそのまま「国語の学力」と見るのは少々無理があるとの意見も出そうだ。個々の問題の正答率・無答率などを詳細に見ることが大事なのではないだろうか。
 また、それぞれの解答例が、
(解答として求める条件を全てクリアしている)」
(設問の趣旨に即し必要最小限の条件を満たしている)」
のように2種類示されたものもあるが、どちらも正答数・正答率にカウントし、△や途中点などは一切ないということにも留意しておきたい。

小学校国語の課題は―

 小学校国語の平均正答率はすでに「全国学力テスト―基礎知識は定着も活用力に課題」でも報じたように、A問題で81.7%、B問題で63.0%だった。

 ここで問題になるのは、「極端に正答率が低かった問題」だ。

 A問題で言えば、「スピーチでの聞き手にわかりやすい話し方を選択する」問題の正答率は55.8%だった。「スピーチ」はほとんどの学校で行われていると思われるが、その学習を通して「スピーチで気をつけることはなにか」について、半数近い子どもたちが理解していないことになる。
 B問題では、書かれたテキストを読んで「古紙の再生利用が重要な課題となってきた理由を書く」問題。正答率は45.7%だ。教科書などの書かれたテキストについて、そのまま情報を取り出すだけの授業が今もって多いことが示唆されている。

中学校国語の課題は―

 平均正答率はA問題82.2%、B問題で72.0%と好成績を収めているように見える。

 この中で「極端に正答率が低かった問題」は…。

 A問題では、「草木が繁茂(はんも)している」の読み。実に31.3%の正答率しかない。
 B問題では、「中学生の広告カードと、書店店員が作成した広告カードを比較し、違いを説明する」問題。正答率は「43.4%」だ。「記述式の問題だから…」は理由ではないらしい。記述式問題は3問出ているが、この問題以外は「76.5%」と「75.5%」なのだ。ともに、「自分の考えを書く問題」である。つまり、「自分の考えを書くことはできる」が、「比較」したり「説明」したりする力については「できる生徒・できない生徒がはっきりしている」とも言えるだろう。

 高校受験等をひかえた中学3年での好成績の影には、このような二極化も透けて見えてくるようだ。

小学校、中学校ともに課題となってくるのは―

 まず確認しておきたいのは、A問題とB問題の相関だ。
 当然の結果かもしれないが、小学校・中学校とも、「A問題の正答率が低くてB問題の正答率が高い子」はいない。

  1. A問題で正答率の高い子 → B問題は低位〜中位
  2. A問題で正答率の低い子 → B問題も低い

 この2つの層に対する対応が特に必要になってくるだろう。改めて浮き彫りになるのは「2.」の層だ。今回A問題の対象となった、「言語事項」や「話す・聞く・書く・読む」の基本技能が身についていない子にとっては、その先にある「活用型の学力」や「探究型の学力」を身につけることが非常に難しいということだ。
 次期学習指導要領の改訂作業が進む中、「まずはとにかく基礎基本!」ということをさらに印象付けたかっこうになるのではないだろうか。

公表された内容にも課題が―

 最後に、今回の結果の公表内容への疑問を呈したい。それは、「学校質問紙」と「学力調査結果」とのクロス集計の公表が極端に少ないことだ。
 「学校質問紙」には、「朝読書の実施」や「長期休業時の補充指導の実施」についてなど、細かい指導体制についての項目が並んでいる。これらの集計結果と学力との相関が公表されないのはなぜか。もしかしたら指導体制と学力との関連性は認められなかったの? など、うがった見方もできてしまう。公表を待ちたい。

この記事は、『きょういくじん会議』の記事を移転して掲載しているため、文中に『きょういくじん会議』への掲載を前提とした表現が含まれている場合があります。あらかじめご了承ください。
コメントの一覧
3件あります。
    • 1
    • 名無しさん
    • 2007/10/30 12:45:34
    「活用力不足」が報じられましたが、
    単にA問題は易しくB問題は難しいということではないかと思います。
    小・中ともA問題は記号や抜き出しがほとんどなのに対してB問題は自由記述が多いですから。
    算数も含めて、単に「易しい問題はできるが、難しい問題の出来が悪かった」ということではないかと思います。
    現在の学校教育では頭の固い、応用力のない子しか育たない、
    という報じ方は変。
    • 2
    • 名無しさん
    • 2007/10/30 13:25:38
    そうですね。慣れてないっていうのもあるでしょうし。
    広い意味では不慣れな形式でも対応できる力が応用力や
    活用力なのかもしれませんが。
    • 3
    • 名無しさん
    • 2007/11/1 19:10:10
    >2
    そうかもしれませんが、
    難しい問題の点数が易しい問題の点数より悪かった、
    というのは当たり前なわけで、
    それに「活用力不足」と名前をつけて、
    学力不足とは違う何か別の課題があるかのように論じるのは
    欺瞞的だと思うのです。

    サッカーの「決定力不足」にちょっと似てるかも。
    シュート練習ばかりしてれば、点が入りますかね?
コメントの受付は終了しました。