著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
新英語教科書を200%使いこなす達人技とは?
埼玉県小鹿野町立小鹿野小学校教諭瀧沢 広人
2013/4/26 掲載

瀧沢 広人たきざわ ひろと

埼玉県秩父郡小鹿野町立小鹿野小学校教諭。
大学4年より、教育技術の法則化運動(現:TOSS)で学び、授業を楽しく、わかりやすく、力のつく指導法を研究。その成果を著書に残す。多くの子どもたちが英語が好きになり、活動の多い授業は、生徒を飽きさせない。現在は、達人セミナーやELECなど全国で講演・ワークショップを行っている。

―本書は英語教科書の内容理解活動アイデアを紹介していますが、内容理解の大切さはどのようなところにあるのでしょうか?

 教科書で絶対に扱わなくてはいけないことは、大きく分けて3つあります。1つ目は「単語」。2つ目は「文法」。3つ目は「本文」です。本文は「音読」と「内容理解」をやらなくてはいけません。「内容理解」は、教科書を教えるときに絶対に必要です。だから、どんな方法であれ、教師は生徒に内容理解をさせなくてはいけないのです。そしてできることなら、「読むことに楽しみを感じるような」読解方法を、できるだけ多く、教師が身に付けておくことが大切なのではないかと思っています。

―本書では内容理解活動アイデアをどのような形で紹介しているのでしょう?

 内容理解のさせ方には、いろいろな方法があると思いますが、一番簡単な方法として、教師があらかじめ「ワークシート」を用意しておき、それを配るという方法があります。単語を導入し、教科書を音読した後、ワークシートを配って英文と照らし合わせれば、それで生徒に内容理解をさせることができます。しかし、そのワークシートの作り方も、「正誤問題」(p.68)、「日本語で質問して日本語で答える」(p.18)、「和訳並べ替え」(p.50)、「指示語を問う」(p.66)など、いろいろな方法やねらいがあります。そこで、それらをできるだけ多く紹介しました。見開きで、左ページには、活動の特徴や授業における進め方、ワンポイントアドバイスなど、授業運営に必要な事項を載せ、右側にワークシート例などを載せ、具体的にイメージがわくよう紹介しました。見開きで1つの内容理解の“技”を手に入れることができます。

―本書で紹介している読解テストは、どのように活用すればいいでしょうか?

 定期テストでの読み取り問題パターンを先生方は何通り使いわけているでしょうか。また、その読解パターンが「入試問題」とどの程度、一致しているでしょうか。私は10年ほど前に、娘の高校受験を機会に、すべての全都道府県の問題を4年分チェックし、どんな種類の問題が出ているのか分類しました。その結果、読解の問題パターンとして、12〜13種類ほどあることがわかりました。これらの種類の問題パターンを、日頃から日常のテストで生徒に提示しておけば、入試でも、あわてずに済むはずです。いわば入試に直結する「問題パターン」と言えます。これらの問題パターンを知っておくことで、教科書を見た時に、「今回は、どの読解パターンでいこうかな…」と方向性が見えてくることと思います。そんな視点で活用していただけると嬉しいです。

―英語教師が生徒のためにやるべきことは何であると、先生はお考えになりますか?

 1つ目は、「楽しい英語授業をすること」です。楽しい英語授業をしていると、生徒が大人になった時に、もしかしたら「英会話教室に行ってみようかな…」と、楽しかった中学の授業を思い出し、学び直すかも知れません。楽しかった記憶は、人を行動に駆り立てます。まずは、「楽しい授業」です。
 2つ目に、「わかりやすい授業」です。「わかる」授業ではなく、「わかりやすい」授業です。難しいことをわかりやすく教えることです。そのためには、教えることを細分化して考え、スモールステップで指導過程を組みます。わかりやすい授業は生徒にとって、楽しい授業でもあります。
 3つ目は、「英語の学び方を教えること」です。どうやったら英語が身に付くのか。どうやったら、英語の力をのばせるのか…英語の“勉強法”を教えることです。勉強の仕方がわかれば、生徒は1人でも勉強することができます。この3つの順序は、私にとっての授業で大切にしている優先順位でもあります。

―最後に、全国で英語を教える先生方に一言メッセージをお願いします。

 これからの英語教師は英語指導力の他に「特別支援への対応術」と「ICT技能の習得」の2つの技量を身に付けていかなくてはいけない時代になってきます。
 特別支援では、まず@障がいを理解すること、A生徒を見て、どの障がいの傾向があるか判断すること(ただし診断は医者がする)、B障がいの傾向がわかったら、そこに支援の手を差し伸べること…今はすでに、このBの段階に来ていると思います。その入門書として、私は『目指せ!英語授業の達人21 英語授業のユニバーサルデザイン つまずきを支援する指導&教材アイデア50』(明治図書) を今年1月に出版いたしました。「特別支援の勉強はまだいいだろう…」「時期が来たらやろう」などと思っていては、取り残されてしまいます。まさに、「いつやるか!」「今でしょ!」だと思います。Now or never. 頑張っていきましょう!

(構成:木山)

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