ほめ言葉で子ども&クラスが成長する!菊池道場の価値語録
子どもの笑顔がみるみるあふれる! プラスに考える学級づくりの羅針盤
ほめ言葉で子ども&クラスが成長する!菊池道場の価値語録(20)
公の場を意識することで成長する価値語録
菊池省三監修菊池道場広島支部 河内伯子
2018/1/10 掲載

中学校ではキャリア教育の一環として職場体験学習に取り組みます。仕事の厳しさややりがいを体験するだけにとどまらず、義務教育の締めくくりの3年間で自分がどのような社会人となるのか、どんな生き方をするのかを考える絶好の機会です。「公の場で通用する人へ」成長するために価値語を活かしたいですね。

印象2秒

 初対面の人と出会ったとき、その人の印象は2秒で決まります。笑顔・視線・姿勢・発する声…。非言語がかなり大きな割合を占めるなら、意識して自分をよい印象にするための日頃の練習も重要です。

 「印象2秒」は商業高校の先生のお言葉です。職場体験事前学習「マナー講座」の講師として来ていただきました。実社会では2秒という短い時間で自分の印象を決められてしまう厳しさがあります。だからこそ、この2秒に自分のよさを精一杯発揮する瞬発力も必要となるわけです。相手の目を見ること、笑顔をつくること(口角を上げること)、胸を張ること(背筋を伸ばすこと)。この3点を意識して行うだけで相手への印象は格段に変わります。
 「印象2秒」は職場体験に限りません。初対面でなくても日常生活で継続していくことが、周りの人との円滑なコミュニケーションにつながっていきます。

雰囲気は自分でつくる

 その場の雰囲気は自分たちで明るく、前向きにできます。周りに優しく声を掛けたり、明るい声で返事したり、温かい拍手を送ったり…。話を聴くときに笑顔でうなずくだけでも、雰囲気は大きく変わるのです。そして、それはすぐに自分からできることでもあります。

 ある男子生徒が職場体験中に考えた価値語です。彼の行った職場は、店長さんをはじめ社員の方もパート・アルバイトの方もみんな明るく、元気な挨拶や励ましの言葉が通い合う温かい雰囲気の職場だったそうです。そこで、彼は「みんなで楽しく仕事をしよう」という気持ちをもってお客さんやお店の人に接していけば、楽しい雰囲気になると学びました。
 「仕事は大変」「責任が重い」とマイナス面だけを受け取るのでなく、前向きな捉えができたのもこの職場のみなさんのおかげであり、彼の観察力のたまものです。暗い雰囲気、とげとげしい空気を人のせいにせず、1人でも変えようとすれば、そこから仲間を増やして雰囲気をつくっていける、このことは学級や部活の雰囲気づくりも同じです。これからの中学校生活に自分で気づいたことが活かされることにも大きな価値があると思います。

イラスト

どの仕事にも価値がある

 誰もが知っている華やかな仕事だけが仕事ではありません。中学生にとって職場体験を通して初めて知った仕事がたくさんあります(体験先以外にも学習発表会で仲間の体験を交流します)。陰で誰かを支える仕事もとても重要で、世のため人のために必要不可欠な仕事です。たくさんの仕事が社会を支えている、誰もが社会の中で自分の役割を果たして生きている、これを知ることが将来社会人となるための大きな第一歩です。

 「小さい頃は、ただ自分の好きなことをやりたいと思っていたけれど、今回の職場体験を通してもっと周りのことを考えたり、社会のためにどう貢献するべきかを考えたりして、改めて自分の夢を考え直そうと思いました」
 「どの職業も種類や内容が違っていても、結局は人のために働いているということがわかりました。今、働いている人のおかげで自分たちが生活できているので、感謝しないといけないなあと思いました」
 「誰もが知っているような職業しか知らなかったけれど、職場体験を通して初めて知る仕事内容がたくさんあり、驚きました。そしてどの仕事もとても重要な役目があると気づきました。だから私も、みんなの前に出る仕事だけでなく、陰で支える仕事にも目を向けて将来のことを考えていこうと思いました。人の役に立つ職業、人を喜ばせることのできる人になりたいと思います」(生徒の作文より抜粋)。

 冷めている、事なかれ主義、無気力…学校生活ではときにそんな姿に見える中学生も、非日常である職場体験でこんなにもたくさんのことを発見し、深く学ぶことができるのです。教師も成長する姿を見届け、認めていくことが大切なのではないでしょうか。そして、その発見や学びを価値語に残すことで日常生活に還元することができるのだと考えます。

菊池 省三きくち しょうぞう

愛媛県出身。山口大学教育学部卒業。 小学校教師として「ほめ言葉のシャワー」など現代の学校現場に即した独自の実践によりコミュニケーション力あふれる教育をめざしてきた。 教員同士の学びの場「菊池道場」を主宰し、その支部は全国40ヵ所に広がっている。「プロフェッショナル 仕事の流儀」で取り上げられたことをきっかけに全国へ講演。 「世界一受けたい授業」では、学級崩壊立て直し人として紹介される。2015年3月に小学校教師を退職。自身の教育実践をより広く伝えるため、執筆・講演を行っている。『ほめ言葉手帳』には価値語録とともに、子どもをほめる手立てが満載!

菊池道場広島支部きくちどうじょうひろしましぶ

平成26年8月発足。本部は広島市にある。在籍数21名。月に1〜2回、広島県内一円から教員や精神対話士などが集まり学習会を開いている。月刊誌『授業力&学級経営力』(明治図書)、『白熱する教室 創刊号』『価値語100ハンドブック』『1年間を見通した白熱する教室のつくり方』(以上、中村堂)などに執筆協力多数。

(構成:茅野)
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