スペシャリスト直伝! 高学年担任の指導の極意
「最高学年を最高のクラスにしたい!」そんな思いを実現するために必要な様々な指導の極意を伝授します。
スペシャリスト直伝! 高学年担任の指導の極意(5)
高学年女子の悩みを上手に聞く技
北海道旭川市立啓明小学校宇野 弘恵
2018/10/10 掲載
  • 高学年担任の指導の極意
  • 学級経営

 

pic1

女子のトラブルは、いかに聞くかが鍵。でもそれは、聞き方の技術だけが重要なのではありません。どのように「聞く場を設定するか」の方が、より重要度が高いのです。ここを踏み外すと、女子からの信頼を下げることにもつながりかねません。

高学年女子の信頼を損なわない注意が必要

 トラブルがあったとき、子どもから事情を聞くのは問題解決の基本です。しかし、ときに、堂々と当事者を呼び出せない場合があります。そうしたとき、どのような手順で話を聞けばよいのでしょうか。「話し合い」の場にもっていく前に、どんなことに注意が必要なのでしょうか。
 高学年になると話す相手を見極め、どの人にどこまで話すかをシビアに計算しているものです。「この人には本音が言えない」「この人には心底すべて話してしまいたい」など、相手が信頼に足る人物かを見て、どの程度本音を話すかを決めています。
 女子が心を開いてくれなければ、情報が正確に収集できずトラブルの早期解決が難しくなり、学級経営の上でも大きな支障をきたす場合があります。ですから、女子の信頼を損なわないよう注意を払うことが肝要です。

「話し合い」のアポをどう取るか

 基本的には、担任がどれだけ信頼されているかに関わっていますので、小手先のことを変えてもすぐに話してくれるとは限りません。しかし、聞き方を間違ってしまったら、女子からの信頼を失ったり、女子間のトラブルを大きくしてしまったりする可能性があります。
 女子のトラブルの場合、双方から事情を聞く場合とそうしてはいけない場合があります。トラブルの質にもよりますが、女子の場合は人間関係が裏でこじれていたり、表に出にくい感情のからみがあったりすることが多いので、別々に聞く方が無難な場合が多いものです。こじれた問題の場合は、秘密裏に事情を聴かなくてはならないこともあります。
 他方に知られないように聞く場を設定するのは、とても難しいことです。教室で小声で話していれば、「先生にちくってる」と言われかねません。そこで以下の方法がおススメ。
@放課後に電話連絡をする
 これは、親に知られたくない、対立側と陰でつながっている可能性がある子には向かない方法です。しかし、孤立している、担任に信頼を寄せていて強く問題解決を求めている場合などには有効です。

図1

A他の先生の名前を使う
 「○○先生が中休みに教室に来るようにと言っていたよ」と伝えます。全体の場で話す必要はありませんが、ある程度の人数に周知されるように伝えます。○○先生にはあらかじめお願いしておき、子どもが行ったら会議室で担任が待っていることを伝えます。

安心して相談できるシステムをどうつくるか

 その後、何度も話をしなくてはならない場合もあります。その場合には、下記の方法が使えます。
@手紙作戦
 話したいことができたら、「お母さんからです」と偽った手紙を担任に出すことにしておきます。茶色や白の角封筒ならば、保護者からの手紙と言っても不自然ではありません。
A笑顔で雑談作戦
 教室のざわつきの中で、すごい笑顔で、しかしながらやや小声で
 「先生、今日相談したいことある」
 「へえ、知らなかった」
 「はい、昼休みお願いします」
 「あ、一度食べたいと思ってたんだよね」
 など、そうだとは全く関係ない返答を、これまた笑顔でします。傍からは楽しそうに雑談をしているようにしか見えません。あらかじめ、話し合いの場所を決めておけば、短い会話の中で約束することができます。

そこまで気を使う

 ここまでお読みになって、「そこまでする必要ある?」と思われた方もいるのではないでしょうか。確かに、やや大げさというか芝居がかっているというか、策略っぽいというか、そんなまどろっこしいことをしなくても、シンプルに呼び出して話せばいいじゃないと思うのも理解できます。もちろん、それがかなえば越したことはないのですが、事例によっては秘密裏に動かなくては難しい問題もあります。
 例えば、仲間外しの問題がそうです。仲間外しにあっている子は、なかなか声をあげられないものですし、当事者じゃなくても、それを教師に伝えたいという場合もあります。いずれも教師との話し合いの場面を見られてしまったら、「ちくった」と言われ窮地に立たされます。ですから、絶対に教師との密談を気取られてはいけないのです。ここをおろそかにして問題が深刻化し、「こんなことなら先生に言わなきゃよかった」となるのです。
 ちなみに、片方からだけの情報では偏った見方や指導につながらないかという懸念があろうかと思います。もちろんその通りですが、状況を把握するまでは、片方からの情報を丁寧に聞きながら観察することもときに必要です。

今月のまとめ

  • 教師と話すことを決して気取らせない。
  • いつでも相談できる「鍵」をつくっておく。
  • そこまで、する。

宇野 弘恵うの ひろえ

1969年、北海道生まれ。旭川市内小学校教諭。2002年より教育研修サークル・北の教育文化フェスティバル会員となり、思想信条にとらわれず、今日的課題や現場に必要なこと、教師人生を豊かにすることを学んできた。現在、理事を務める。

(構成:茅野)

コメントの受付は終了しました。