スペシャリスト直伝! 高学年担任の指導の極意
「最高学年を最高のクラスにしたい!」そんな思いを実現するために必要な様々な指導の極意を伝授します。
スペシャリスト直伝! 高学年担任の指導の極意(7)
思い出にどっぷり浸り、成長を実感できる取り組みをする
北海道旭川市立啓明小学校宇野 弘恵
2018/12/10 掲載
  • 高学年担任の指導の極意
  • 学級経営
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 12月になりました。今年も残すところあとわずか。小学校生活も終わりが近づき、少しずつ卒業が意識されてくるのではないでしょうか。
 今後も義務教育期間が続くとはいえ、小学校卒業は一つの大きな節目。6年間を振り返り、卒業までのわずかな期間を充実したものにしたいものです。

6年間の満足と充足を可視化する

 記憶はやがて風化し、消えてしまいます。大人になっても覚えていることは、印象深いごくごくわずかなこと。でも、小学校6年間では、実に様々なことがあったはずです。出来事だけではなく、心動かされたこと、内面が変化したこと…。煌めくようなこうした出来事を、12歳の瑞々しい感性で感じるままに残しておいてあげたい。二度と訪れない「今」の自分が感じること、残しておきたいと思うことを記すことは、自分という人間とじっくり向き合う機会になると考えます。
 卒業という節目を迎えるにあたって、「いろいろなことがあったなあ」と思い出に浸ること、「こんなに頑張ったな、できるようになったな」と成長を実感できることが、次の新しいステップへの意欲につながるのではないかと考えています。

感慨に浸る〜6年間の思い出を記す

 まずは、1年生から6年生までの出来事を想起させます。どんな行事があったか、担任の先生は誰だったか、どんな友だちと一緒だったか…。特徴的な出来事やアクシデント、好きだったものや夢中になっていたものなど、思いつくままに書き出すとよいでしょう。下記のようなプリントを用意しておくと便利です。

図1

 いきなり書き出すのではなく、ペアやグループなどで思い出を語り合ってから始めてもよいでしょう。転校してきた子や、一人きりで取り組みたい子もいますので、「話したい子は話す」ぐらいの緩さがあった方がよいかもしれません。
 次に、何のレイアウトもない紙(大きさは学級の実態や、使える字数によって決定。実態に応じてマス目があってもよい)に、6年間の思い出を書かせます。どこに何をどんなふうに書くのかは、それぞれに任せます。ただし、これは「6年間の思い出」として、大人になってもぜひ見返してもらいたいものであることをあらかじめ話しておきます。大人になったらきっと忘れているであろうこともこれを見たらタイムスリップできる、大人になっても「今」のあなたに出合える、そういうコンセプトで作成することを伝えます。
 これまでの学習で様々なまとめ方を学んできたと思いますが、レイアウト例がいくつかあると取り組みやすいでしょう。文章だけで書き進めるもよし、イラストや枠などを駆使するもよし。それも含めて「今の自分」を残すことにつながるのです。
 ちなみに、ワープロで作成する方が手間はかからないかもしれませんが、私は必ず手書きで取り組みます。この時にしか書けない、字や絵を残したいと考えるからです。

成長を実感する〜6年間の成長を書かせる

 他人から自分は見えても、自分で自分を見ることはできません。ですから、わかっているようで案外自分についてはわからないものです。
 思春期真っただ中となる中学生では、「自分とは何ぞや」という壁にぶつかります。これは答えのない問いであり、人生とは、自分で自分に問いながら生きていくものだと考えます。6年間の成長を見つめることは、自分自身との対話です。12歳の子が自分を客観視することはたやすいことではありませんが、自分で自分を見つめる経験が中学校生活での足場になるだろうと思います。
 ところで、成長といっても色々な成長があります。身体的な成長や能力的な成長、精神的な成長など、見える成長とそうでない成長があります。ここで取り上げたいのは「見えない成長」です。

図2

 この図を示しながら、「見えない成長」について説明します。例を挙げながら解説しますが、子どもたちにはなかなかピンときません。見えない成長、つまり、心がどう変化したかが捉えにくいのです。見えない成長が落ちない子には、次のようにアドバイスします。

T:6年間で一番自分が変化したことって何?
C:算数で100点取れるようになったことかな。4年生までは60点くらいだったけど5年生の終わりくらいから100点が多くなった。
T:それは、見える成長だよね。でも、成長が見えるようになるには、必ず心が変わっているはずなんだよね。何の努力もしていないのに、苦手だったものが100点になるはずがないでしょ?
C:うーん、ただ勉強しただけだけど……。
T:例えば、授業中、どんなことを意識した?
C:わからないことはちゃんと聞こうと思った。
T:前は思わなかったの?どうして?
C:別にできなくても仕方ないと思った。
T:じゃあ、どうして聞こうと思ったの?
C:えー、なんでだろう。このままじゃだめかなあ、って思ったからかな。
T:それってさ、つまり、苦手なことにも努力をしようという意識だよね?向上心ってやつじゃない?できるようになりたい、っていう思いだよね。
C:そう。
T:できるようになりたいという向上心は、今の自分より成長したいっていう人間らしい感情だよ。そう思えるようになったことが成長。そして、そのために努力できるようになったことも、成長でしょ?

 といった対話を重ねながら、自分の成長に気づかせていきます。その後、きっかけや具体的なエピソードや思いを想起させ、作文させます。
 これらが卒業文集として残せない場合は、一人ひとりに表紙を書かせ、劣化しないようにラミネートなどをかけます。手渡すのは、卒業式前日がよいでしょう。
 また、自分だけが見るのか、みんなも見るのかは重要なことです。取り組み始める前に子どもたちに伝えることが肝要です。

今月のまとめ

  • 思い出にどっぷり浸るのは自由に。
  • 見えない成長に目を向けさせる。
  • 公開か、非公開化は事前に伝える。

宇野 弘恵うの ひろえ

1969年、北海道生まれ。旭川市内小学校教諭。2002年より教育研修サークル・北の教育文化フェスティバル会員となり、思想信条にとらわれず、今日的課題や現場に必要なこと、教師人生を豊かにすることを学んできた。現在、理事を務める。

(構成:茅野)

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