「単元を貫く言語活動」ここが知りたいQ&A
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水戸部先生に聞く!「単元を貫く言語活動」Q&A(19)
国語科のねらいに応じた効果的なペア・グループ構成
文部科学省教科調査官水戸部 修治
2015/10/16 掲載

1時間の授業の中で、ペアやグループ学習を取り入れたいと思っています。子供たちのメンバー構成を考える際、どのような配慮が必要でしょうか。

ペアやグループを組む際、どんなメンバーで学習するかということは、子供たちに大きな影響を与えますね。
 ここでは、国語科の指導のねらいに応じてどのように考えればよいのかを見ていきましょう。なお、実際に授業に取り入れる際には、子供たちの人間関係に配慮するなど、実態に応じた工夫を加えてくださいね。
 基本として押さえなければならないのは、

  • 指導のねらいを踏まえたメンバー構成にする。
  • 子供たちが目的や必要感を明確に意識できるペアやグループの構成にする。

という点です。
 まず、あくまでも国語科の学習でのグループ等のメンバー構成を考えるわけですから、単元や本時のねらいに応じたものにすることが重要です。
 また、子供たち自身が、なぜそのペアやグループで活動したり交流したりするのかを自覚できるようにすることが大切になります。
 なお、ペアにするか、グループにするか、グループにするなら何人ぐらいがよいかを考える際、指導のねらいに加えて子供たちの実態や発達の段階を考慮して適切な規模になるようにすることも有効です。

ポイントが分かりました! 「指導のねらいを踏まえる」とは具体的にはどのようにすればいいのでしょうか。

まず、「指導のねらいを踏まえたメンバー構成にする」ということについて見ていきましょう。
 例えば中学年の「読むこと」の指導事項には、

カ 目的に応じて、いろいろな本や文章を選んで読むこと。

があります。
 この指導事項を指導する際には、子供自身が本や文章を選んで読むことが重要になります。目的に応じてどのような本を選んだのかについて交流する際には、1つのグループ内に、異なる本を選んだ子供同士が集まるようにすることで、それぞれがどのような点に着目してどんな本や文章を選んだのかについて交流することが可能になります。
 一方、次のような指導事項を指導する際はどうでしょうか。

オ 文章を読んで考えたことを発表し合い、一人一人の感じ方について違いのあることに気付くこと。

 一人一人の感じ方には違いがあることに気付くことができるようにするためには、同じ本を読んでいる子供同士でグループを構成することが有効でしょう。その際、誰がどの作品を読んでいるのか、並行読書の状況が一目で分かるマトリックスを作成しておくととても便利です。

子供たちが目的や必要感を明確に意識できるペアやグループの構成にする際、具体的にはどのような点に気をつければよいでしょうか。

例えば低学年の「読むこと」の学習指導で、言語活動例の

オ 読んだ本について、好きなところを紹介すること。

を通して、指導事項の

ウ 場面の様子について、登場人物の行動を中心に想像を広げながら読むこと。

を指導する場合を考えてみましょう。
 「自分の選んだ本の大好きなところやそのわけを紹介し合おう」といった単元を貫く言語活動を設定した場合、単元の中盤、いわゆる「第二次」では、教科書教材をみんなで読んで、好きな場面を見付けたり、その理由を登場人物の言動などを手掛かりにはっきりさせたりする学習を行うことが考えられますね。
 その際、なかなか好きなところが見付けられなかったり、好きなところを見付けても、物語のごく一部の言葉にのみ反応して、展開全体を見渡した上で好きなところをはっきりさせるまでには至らなかったりする子供が出てくる場合があります。
 その場合は、例えば「友達はどこが好きなのか、たくさん教えてもらおう」「自分と違うところが好きと言っているお友達と、大好きなところやそのわけを紹介し合おう」などと、自分の読みとは異なる叙述に着目した子供と交流できるようにすることが考えられます。つまり、子供にとっては、「他者が着目した叙述を教えてもらうことで、自分の読みを広げる」といった目的をもって交流することとなります。
 一方、好きなところは見付けたものの、その理由をうまく言葉にできない子供もいます。そうした場合は、「同じところが好きなお友達を見付けて、そこが好きなわけを教えてもらおう」などと、同じ叙述に着目した子供と交流できるようにすることが考えられます。この場合は、子供にとって「同じ叙述について、着目した理由について交流することで、自分の読みを深める」といった目的をもって交流することとなります。

 なお、言語活動の特徴を踏まえて、ペアもしくはグループを、単元を通して固定する場合と、固定せず様々に変えていく場合とを使い分けることが大切です。
 例えばグループでテーマを決めて、そのテーマについて調べて調査報告にまとめるといった学習の場合は、単元を通してグループのメンバーを固定することが基本となるでしょう。
 一方、自分が調べたことについて、相手を替えて繰り返し説明するといった学習の場合は、ペアを様々に変えるといったことが考えられます。
 1単元もしくは1単位時間内に、両者を組み合わせて学習を進める場合もあります。例えばグループでテーマについて調べ、調査報告にまとめる学習の場合、単元のある時間は意図的に、各グループから1名ずつ集まって、調査報告の途中経過について紹介し合ったり、他のグループのメンバーがどんなことに関心をもっているのかを把握したりする学習活動を取り入れる場合もあります。
 いずれも場合も、機械的にペアやグループを設定したり、教師が一方的に指示したりするのではなく、子供自身が目的や必然性を意識できるような学習活動の形態を工夫することが肝要です。

ここをチェック!授業改善のためのポイント

単元を貫く言語活動を位置付けた授業づくりに向けて、ペアやグループ学習を効果的に構成するには、次のポイントに留意しましょう。

  1. 指導のねらいに照らして、どのようなペアの構成、もしくはグループのメンバー構成が効果的かをはっきりとらえていますか。
  2. 子供たちがなぜその相手やメンバーで交流するのか、目的や必然性を自覚できるようにしていますか。
  3. 言語活動を行う目的にふさわしい学習形態やメンバー構成を柔軟に取り入れることができるよう工夫していますか。

水戸部 修治みとべ しゅうじShuji Mitobe

 文部科学省初等中等教育局教育課程課教科調査官、国立教育政策研究所教育課程研究センター総括研究官・教育課程調査官・学力調査官。小学校教諭、県教育庁指導主事、山形大学地域教育文化学部准教授等を経て、平成20年10月より現職。
 『「単元を貫く言語活動」を位置付けた小学校国語科学習指導案パーフェクトガイド 1・2年/3・4年/5・6年(全3冊)』『単元を貫く言語活動のすべてが分かる!小学校国語科授業&評価パーフェクトガイド』『「単元を貫く言語活動」授業づくり徹底解説&実践事例24』『小学校国語科 言語活動パーフェクトガイド 1・2年/3・4年/5・6年(全3冊)』など、著書多数。

(構成:木山)

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