「単元を貫く言語活動」ここが知りたいQ&A
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水戸部先生に聞く!「単元を貫く言語活動」Q&A(12)
準備OK?「単元を貫く言語活動」新年度のスタートダッシュ!
文部科学省教科調査官水戸部 修治
2015/3/19 掲載

子供たちは間もなく春休み。新学期スタートまでに、新年度の授業づくりの準備に取り組みたいと思います。今のうちにしておいた方がよいこととして、どのようなことがありますか。

3月末は1年間の区切りの時期。学級の子供たちの成長ぶりを振り返りながらも、ちょっとだけほっとできる時ですね。
 年度内は帳簿整理、新年度になれば新学期に向けた校務分掌や学級経営の仕事と、春休みのうちにしなければならないこともたくさんあります。でも、この時期だからこそ、「しなければならないこと」に加えて、「取り組んでみたいこと」に挑戦することも大切ですね。
 担任の先生であれば、次年度の担当学年等が分かるまでと、学級担任等が決まってからの、大きく2つに分けて考えることができるでしょう。
 次年度の担当学年が決まるまでは、ちょっと余裕があるのではないでしょうか。そこで例えば、

  • 代表的な教科書教材のうち、興味をもっているものについて、シリーズや同一作家の本を探して読んでみる。
  • リーフレットなど、指導のねらいに応じて、複数学年で活用できる言語活動ツールを自分でつくってみる。

といったことに挑戦してみてもよいでしょう。さらに、

  • 何人かの先生方と、好みの教科書教材について取り上げた読書会をしてみる。

などもおもしろいでしょう。

はい。指導要録を書き終えたら、お気に入りの本でリーフレットづくりにチャレンジしてみます! 読書会もやってみたいな…。ところで、4月に担当学年が決まったら、どんな準備が考えられますか。

4月1日からは、猛スピードで新学期の準備に取りかからなければならなくなりますね。ですから、ターゲットを決めて、重点的に取り組みましょう。

準備1 年間の見通しを立てる
 まずは、国語科の年間指導マトリックスを確認してみましょう。
 年間指導マトリックスは、年間の単元・教材を並べて、それぞれでどの指導事項等を取り上げて指導するのかを一覧にしたものです。具体例は『「単元を貫く言語活動」を位置付けた小学校国語科学習指導案パーフェクトガイド 1・2年/3・4年/5・6年(全3冊)』を参照してください。
 各教科書会社でも、こうした資料をつくっていますので、それを基にして1年間を見通してみるとよいでしょう。

準備2 重点チャレンジ単元を決める
 続いて、特に重点的に工夫して取り組みたい単元を決めましょう。公開研究会や校内研修会で授業公開をする機会があれば、それと併せて設定することも考えられます。
 重点単元が決まったら、「準備1」のマトリックスを再確認し、どの指導事項を指導する単元か、現時点で指導事項の取り上げ方を変更する必要はないか、などを確認します。その上で、この時点では、単元を貫く言語活動としてどのようなものを位置付けるのがよいか、いくつか候補を挙げておきましょう。
 そして、仮に10月にその重点単元を設定するなら、4月〜9月までに継続的に、子供たちに力を付けていくのです。例えば、「登場人物の気持ちの変化と性格を、本の紹介リーフレットにまとめて、作品のよさを説明する」といった言語活動を設定するなら、9月までに「登場人物の気持ちの変化」や「登場人物の性格」を主体的にとらえる学習を位置付けたり、書くことの領域で「リーフレットを書いて説明し合う」といった学習を位置付けたりする必要があります。
 また、他教科等の学習でも、調べたことをリーフレットにまとめて説明し合うといった学習活動を行うことで、国語の力がより確かなものとなります。国語科では、こうした系統的・継続的な学習指導が重要になります。

準備3 先行事例をチェックする
 さらに、重点単元についての先行事例をチェックしておきたいものです。4月の時点では、単元を貫く言語活動として、どのようなものを位置付けるのかを考える際の参考になる情報を集めておくとよいでしょう。参考文献としては、以下のものが挙げられます。
『「単元を貫く言語活動」を位置付けた小学校国語科学習指導案パーフェクトガイド 1・2年/3・4年/5・6年(全3冊)』

4月から使う国語の教科書に、新教材が出てきました。初めて扱う文章なのでちょっと不安です。これをどう取り上げればよいのでしょう。

国語科は、「教材を」教える教科ではなく、「教材で」付けたい力を確実に付ける教科です。これは他教科等でも同様ですね。ですから、新教材が来てもこわくはありません。まず当該単元の指導のねらいを十分に確かめましょう。その上で教材をよく読み込んで、教材の魅力を明らかにしていきます。そしてこれと並行して、単元の指導のねらいを実現するのにふさわしい言語活動や並行読書材を選定します。
 つまり、教材が変わっても、今まで行ってきた単元を貫く言語活動の授業づくりの進め方という点では変わりはないのです。
 これまで1年間、忙しい中でも、子供たちにとっての主体的な課題解決の過程となる単元を貫く言語活動を位置付けた授業づくりをがんばってきましたね。この授業づくりを通して、子供たちの成長を強く実感できたことでしょう。新年度からも是非この取組を、自信を持って続けていってくださいね。

ここをチェック!授業改善のためのポイント

単元を貫く言語活動を位置付けた授業づくりについて、新年度に向けた準備をしっかりと行うためには、次のポイントに留意しましょう。

  1. 単元を貫く言語活動を自分自身が体験してみたり、並行読書材を集めてみたりしましたか。
  2. 新年度に向けて、年間の指導を見通したり、重点単元を決めたりしましたか。
  3. これまでに行って来た、単元を貫く言語活動を位置付けた授業づくりの進め方について、その進め方を再確認しましたか。

水戸部 修治みとべ しゅうじShuji Mitobe

 文部科学省初等中等教育局教育課程課教科調査官、国立教育政策研究所教育課程研究センター総括研究官・教育課程調査官・学力調査官。小学校教諭、県教育庁指導主事、山形大学地域教育文化学部准教授等を経て、平成20年10月より現職。
 『「単元を貫く言語活動」を位置付けた小学校国語科学習指導案パーフェクトガイド 1・2年/3・4年/5・6年(全3冊)』『単元を貫く言語活動のすべてが分かる!小学校国語科授業&評価パーフェクトガイド』『「単元を貫く言語活動」授業づくり徹底解説&実践事例24』『小学校国語科 言語活動パーフェクトガイド 1・2年/3・4年/5・6年(全3冊)』など、著書多数。

(構成:木山)
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