「単元を貫く言語活動」ここが知りたいQ&A
「単元を貫く言語活動」に関する疑問・質問について徹底解説し、最新の国語授業づくりの様々な課題解決をフルサポートします!
水戸部先生に聞く!「単元を貫く言語活動」Q&A (7)
「21世紀型能力」を踏まえた新しい国語授業と単元を貫く言語活動
文部科学省教科調査官水戸部 修治
2014/10/16 掲載

秋の公開研究会のテーマや内容に「21世紀型能力」育成すべき資質・能力といったキーワードを掲げている学校がいくつかあるようです。どんなことを目指すのか興味があるのですが、なんだか難しそう…。研究会に参加を申し込むに当たって、「21世紀型能力」のことを知りたいのですが…。

なかなかいい着眼点ですね。「21世紀型能力」は、国立教育政策研究所がこれからの社会を生きる子供たちに必要な能力を明らかにするために整理している概念です。各国の同様の動きとも連動しているのですが、これまで日本の学校教育が培ってきた資質・能力を踏まえて次のように3層に構造化している点が特徴です。

  1. 「思考力」を中核とし、
  2. それを支える「基礎力」と、
  3. 使い方を方向づける「実践力」を育む。

 また文部科学省では、「21世紀型能力」の研究を踏まえながら、次期学習指導要領の改訂に向けて、「育成すべき資質・能力を踏まえた教育目標・内容と評価の在り方に関する検討会」を設置し、

  1. 「児童生徒に育成すべき資質・能力」を明確化した上で、
  2. そのために各教科等でどのような教育目標・内容を扱うべきか、
  3. また、資質・能力の育成の状況を適切に把握し、指導の改善を図るための学習評価はどうあるべきか、

といった視点から教育課程の在り方について、検討を進めています。具体的には、今後子供たちに育成すべき資質・能力について、次のように指摘しています。

 自立した人格をもつ人間として、他者と協働しながら、新しい価値を創造する力を育成するため、例えば、「主体性・自律性に関わる力」「対人関係能力」「課題解決力」「学びに向かう力」「情報活用能力」「グローバル化に対応する力」「持続可能な社会づくりに関わる実践力」などを重視することが必要と考えられる。

*緑部分は筆者

 また、子供たちの実態を踏まえると、

「受け身でなく、主体性を持って学ぶ力」も重要である

*緑部分は筆者

との指摘もなされています。
 こうした能力は、変化の激しいこれからの社会を生き抜く上で重要な能力になりますね。

これからの新しい時代に向けて、子供たちに身に付けるべき力を明らかにする取組が進められていることがよく分かりました! でも…このことを踏まえて、教師としてどのような国語授業づくりをする必要がありますか?

各教科等では、上記のような育成すべき資質・能力を踏まえて授業づくりをすることが大切になります。
 例えば、「受け身でなく、主体性を持って学ぶ力」を一層重視し、子供たちが「課題解決力」を身に付けることができる国語科の授業はどうあればよいでしょうか。国語科ではつい、「この教材ではこれを教える」と狭くとらえてしまいがちです。もちろん指導する内容を明確に押さえることは重要ですが、それを子供の課題意識とは無関係に、教師側から一方的に与えたり、活用する場面や機会がないままに知識だけを覚え込ませたりするのでは、実生活に生きてはたらく確かな国語の能力にはなっていきません。
 国語科として付けたい力である、当該単元で指導する指導事項等を確実に身に付けられるように、子供たちの課題解決の過程を通して指導することが基本です。この授業づくりこそが、「単元を貫く言語活動」を位置付けた授業づくりなのです。

単に「何を知っているか」ではなく「何ができるか」という視点で「単元を貫く言語活動」を設定する必要があるのですね…。
 子供たちを見ていると「他者と協動しながら、主体性をもって学ぶ」というところにまだまだ課題があるように感じます。どのような言語活動を設定するといいでしょうか? おすすめの活動ベスト3を教えてください!!

これは難しい質問ですね。どれもおすすめなのですが、「協動しながら学ぶ」というところを特にねらうなら、低学年であれば、例えば『「単元を貫く言語活動」を位置付けた小学校国語科学習指導案パーフェクトガイド1・2年』第1学年の事例1・2・3にあるような、物語を読んで「大好き」を見付ける言語活動が挙げられます。「自分の大好き!」を意識できる子は、友達の「大好き!」にも関心をもち、必然的に協動的な学びが生まれます。変化の激しい社会の中では、答えがいつも1つとは限りません。単に教師のもつ正解をいち早く言い当てることをねらう授業を目指すのではないのです。
 中学年なら、例えば『同3・4年』第4学年の事例1〜5で取り上げているような、「本を紹介する」言語活動が挙げられます。中学年ともなると、自分の興味をもった本、心惹かれる本を紹介する際には、その理由を明確にして紹介したいと思うものです。その理由を明らかにするために、作品を繰り返し読んで、同じ本を読んだ友達と交流したり、選んだ本のよさを友達に伝えたりする言語活動が効果的です。
 高学年では、中学年までの言語活動の経験を踏まえて、読書会などを行うことが考えられます。『同5・6年』第5学年の事例3、第6学年の事例1、3などを参考にしてみてください。

ここをチェック!授業改善のためのポイント

単元を貫く言語活動を授業に位置付けるには、次のポイントに留意しましょう。

  1. その単元で育成を目指す力は、単に教材を読み取ることにとどまらず、主体的に言葉に働きかける力としてとらえているか?
  2. 国語科の学習が、子供一人一人にとっての課題解決の過程となるよう、チャレンジしたい魅力的な単元を貫く言語活動を位置付けているか?
  3. 授業改善に向けて、教師自身が、今後の教育改革の方向性を示す情報を得て活用しているか?

水戸部 修治みとべ しゅうじShuji Mitobe

 文部科学省初等中等教育局教育課程課教科調査官、国立教育政策研究所教育課程研究センター総括研究官・教育課程調査官・学力調査官。小学校教諭、県教育庁指導主事、山形大学地域教育文化学部准教授等を経て、平成20年10月より現職。
 『「単元を貫く言語活動」を位置付けた小学校国語科学習指導案パーフェクトガイド 1・2年/3・4年/5・6年(全3冊)』『単元を貫く言語活動のすべてが分かる!小学校国語科授業&評価パーフェクトガイド』『「単元を貫く言語活動」授業づくり徹底解説&実践事例24』『小学校国語科 言語活動パーフェクトガイド 1・2年/3・4年/5・6年(全3冊)』など、著書多数。

(構成:木山)
コメントの受付は終了しました。