「単元を貫く言語活動」ここが知りたいQ&A
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水戸部先生に聞く!「単元を貫く言語活動」Q&A (6)
全国学力・学習状況調査の課題に取り組む! 〜単元を貫く言語活動による授業改善〜
文部科学省教科調査官水戸部 修治
2014/9/18 掲載

全国学力・学習状況調査の結果が返ってきました…。クラスの子供たちは、特にB問題の「科学に関する本や文章などを効果的に読む」問題に課題がありました。この課題を改善したいのですが、説明文をもっと段落ごとにしっかり読み取らせた方がいいのでしょうか?

その前に、まず問題とその趣旨を見直してみましょう。この問題では、「疑問に思ったことについて調べて、分かったことをまとめる」という単元を貫く言語活動の場面設定の中に、3つの小問が位置付いていますね。それぞれの小問は、「どんな疑問をもったのか考えて読む」「目的に応じて複数の文章を関係付けて読む」「目次や索引を使いこなして必要な情報を検索する」といった読む能力を見る問題となっています。
 この趣旨を踏まえれば、やみくもに「段落ごとに読ませ」ても、調査問題で問われているような読む能力が身に付かないことはすぐに理解できるでしょう。疑問をもって複数の文章を関係付けたり、目次や索引を使って必要な情報を見付けたりする能力が問われているのです。
 重要なのは、こうした問題が、学習指導要領に示す読むことの指導事項の学習指導の具体的な姿を例示しているということです。例えば学習指導要領の高学年の指導事項には、次のようなものがあります。

ウ 目的に応じて,文章の内容を的確に押さえて要旨をとらえたり,事実と感想,意見などとの関係を押さえ,自分の考えを明確にしながら読んだりすること。

*緑部分は筆者

 つまり、普段から、例えば「疑問に思ったことについて調べて、分かったことをまとめる」といった言語活動をしっかりと位置付けて、目的に応じて自分の考えを明確にしながら読むといった指導事項を確実に指導することが大切なのです。こうした指導を実現するためにこそ、単元を貫く言語活動が重要になります。

授業改善の視点がよく分かりました。早速、取り組んでみたいと思います!
 ところで、A問題のような基礎的な知識を定着させるために、教科書教材をしっかり読み取らせることが大切という意見も校内研修などでは出ることがあるのですが、このことに関してはどのように考えればいいでしょうか?

これまでのような学力が付いていないから細かく区切って、という指導は、特にしんどい子たちにとって十分な効果をあげてきたでしょうか。例えばA問題では、短時間で相互関係を捉えて文章を読んだり、目的に応じて書き換えたりする必要があります。こうした問題にも対応できるようにするためには、一つの教材に時間をかけ、場面ごと段落ごとに読み取らせる指導だけでは十分ではありませんね。
 例えば「故事成語」の問題を見てみましょう。決して暗記力を問うことがねらいではないことをご理解いただけるでしょう。それは、学習指導要領に次のように示しているからです。

ア(イ) 長い間使われてきたことわざや慣用句、故事成語などの意味を知り、使うこと

*緑部分は筆者

 こうした事項の趣旨を授業に生かすためには、「話すこと・聞くこと」「書くこと」「読むこと」など、領域の指導と関連させながら、例えば「故事成語の使い方を調べて辞典にまとめよう」といった言語活動を通して指導することが有効です。
 故事成語に親しんでいる子供像としてどのような姿を思い描きますか? 単に機械的に暗記をする子供像ではなく、言葉に関心をもつ子供、読書量の多い子供、国語が大好きな子供、そうした子供像が描けることでしょう。

その他に、調査結果を授業改善に生かすために、どのような視点・方向性をもつことが大切でしょうか?

是非、質問紙調査についてもクラスや学校の結果をよく見てください。例えば「国語の勉強は好きですか。」について、全国の結果では、「当てはまる」と回答した児童の割合は、23.1%です。これは、「算数の勉強は好きですか。」について「当てはまる」と回答した児童の割合である38.5%より大幅に低いといわざるを得ません。この傾向はかなり以前から続いています。
 また学校質問紙と教科の調査結果との関係を見ると、「各教科等の指導のねらいを明確にした上で,言語活動を適切に位置付けましたか。」という問いに肯定的に回答した学校の方が、教科の平均正答率が高い傾向が見られます。
 是非、この調査結果を更なる授業改善に生かして下さい。

ここをチェック!授業改善のためのポイント

単元を貫く言語活動を授業に位置付けるには、次のポイントに留意しましょう。

  1. 全国学力・学習状況調査の教科に関する調査結果を踏まえて、付けたい力をより具体的に把握して指導に臨んでいるか?
  2. 質問紙調査の結果を踏まえて、指導を一層充実させるポイントを把握して、指導に生かしているか?
  3. 単元を貫く言語活動を位置付けた授業を継続的に行うことで、子供が言語活動を通して確実に言葉の力を身に付けられるようにしているか?

水戸部 修治みとべ しゅうじShuji Mitobe

 文部科学省初等中等教育局教育課程課教科調査官、国立教育政策研究所教育課程研究センター総括研究官・教育課程調査官・学力調査官。小学校教諭、県教育庁指導主事、山形大学地域教育文化学部准教授等を経て、平成20年10月より現職。
 『「単元を貫く言語活動」を位置付けた小学校国語科学習指導案パーフェクトガイド 1・2年/3・4年/5・6年(全3冊)』『単元を貫く言語活動のすべてが分かる!小学校国語科授業&評価パーフェクトガイド』『「単元を貫く言語活動」授業づくり徹底解説&実践事例24』『小学校国語科 言語活動パーフェクトガイド 1・2年/3・4年/5・6年(全3冊)』など、著書多数。

(構成:木山)
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