多賀一郎の子どもと保護者の願いをよみとく教師塾
教師塾・親塾を主催する多賀一郎先生が、子どもと保護者の本音に向き合う方法をアドバイス!
多賀一郎の教師塾(8)
家庭学習に対する子どもと保護者の感覚をよみとく
追手門学院小学校講師多賀 一郎
2013/11/14 掲載

この時期の子どもたち

 家庭学習、つまり宿題というものに対して、保護者の気持ちが同じであると思っていませんか?
 様々な子どもたちがいるように、その倍もいろいろな保護者の方々がいらっしゃるのです。宿題に対する認識の仕方も多様です。宿題を出すならば、そのことを頭に置いておかないと、効果も上がらないし、子どもが必要以上につらい目に遭うこともあります。

担任が気をつけたいポイント

宿題は必ずしていくもの!…とすべての保護者が思っているわけではない

 例えば、おうちで音読しておうちの方に聴いてもらうという宿題を出したとします。ハンコも押してもらうようにしたとします。ところが、保護者によっては、子どもにハンコを渡して、「自分で押しておきなさい」と、おっしゃる方もいるのです。ホントですよ。お母さんがそう言ったと、僕に直接、伝えてきた子どももいるのです。
 なぜ、自分の子どもにとってマイナスになることなのに、そんなことをされるのでしょうか。それは、子どもの音読を聴くのが面倒だからです。
 「そんなことは、親として間違っている」などという理想論を振り回していては、子どもに学力はつけられません。

宿題のあることを保護者に隠す子どもには?

 宿題を出せば、保護者は分かっていないといけないと思っている先生は、多いようです。
 中高学年の宿題嫌いの子どもは、なんとかして宿題をごまかそうとします。いずればれて、かえってすごく叱られることが分かっていても、ともかくその場をやり過ごそうとするのです。ですから、隠しますよ、宿題のあることそのものさえも。
 そのようなことが考えられる場合は、毎週末などに配布する保護者に渡す通信などを利用すると良いでしょう。隠せないですから、そこに、いつ、どういう宿題が出ているかを書けばいいのです。

宿題をさせるのに、鬼のようになる保護者もいらっしゃる

 あまり難しい課題を出すと、保護者によっては必死になられて、子どもに強いプレッシャーを与えることがあります。
 ご家庭で、「こんな程度のことが、どうしてできないの!?」「できるまでは、寝させませんからね」と、子どもたちが半泣きでさせられているという話をよく聞きます。
 宿題は、子どもが楽しんで自力でできる範囲にとどめることと、家庭でしかできない調べ物などに限定する方が良いと思います。多くの子どもが自力で解けないようなものは、宿題には適さないものです。

多賀先生からのワンポイントアドバイス

 子どもの学力は、学校でつけるのが基本です。漢字の反復練習も、計算のトレーニングも、家庭学習で定着させようとする限り、するおうちとしないおうちとの格差は広がるばかりです。基礎トレーニングだからこそ、学校でする時間をとるべきだと思います。
 ただし、低学年では、子どもたちに簡単で楽しく、必ずできるような宿題を出して、毎日家庭学習を自分でする方向へ育てていくことは必要だと思います。家庭学習の習慣を身につけさせるためには、宿題ができる達成感が必ず得られて、楽しめる程度の時間内で終わるものに限ることです。

多賀 一郎たが いちろう

 神戸大学付属住吉小学校を経て私立小学校に長年勤務。元日本私立小学校連合会国語部全国委員長。現在、追手門学院小学校講師。専門は国語教育。親塾を神戸と大阪で主催して、保護者教育に力を注いでいる。また、教師塾やセミナー等で、教師が育つ手助けをしている。絵本を通して心を育てることもライフワークとして、各地で絵本を読む活動もしている。
 『はじめての学級担任4 1から学べる!成功する授業づくり』 『小学校国語科授業アシスト これであなたもマイスター!国語発問づくり10のルール』(明治図書)『子どもの心をゆさぶる多賀一郎の国語の授業の作り方』『全員を聞く子どもにする教室の作り方』『今どきのこどもはこう受け止めるんやで』(黎明書房)など、著書多数。
 ブログ「多賀マークの教室日記」も好評。

(構成:杉浦)
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