多賀一郎の子どもと保護者の願いをよみとく教師塾
教師塾・親塾を主催する多賀一郎先生が、子どもと保護者の本音に向き合う方法をアドバイス!
多賀一郎の教師塾(4)
1学期の教師自身、子ども、保護者をよみとく
追手門学院小学校講師多賀 一郎
2013/7/18 掲載

この時期の子どもたち

 ほとんどの学校では、夏休みに入っていることでしょう。ほっと一息つきたいところですね。少し何も考えない時間を作ったり、思いっきり教育とは関係ないことをしたりして、一度頭をリフレッシュさせましょう。
 それから、夏休みの時間を使って、じっくりと2学期への戦略をたてるのです。ふだんの生活に追いたてられていたときとは違って、時間は比較的ありますから。
 1学期、個人懇談や家庭訪問などで、子どもたちの背景が垣間見えたのではありませんか。子どもは、背景と共に読み取らなくてはいけません。僕の言う「背景」とは、子どもの背負っている家庭環境やそこまでの人生体験のことです。
 男の先生の大声に対して、妙におびえる子どもがいたとします。その子の背景には、DVがあるのかもしれません。日記や会話の中に、家族として絶対にお父さんの名前の出てこない子どもがいれば、その子の家庭的な背景は、厳しいものがあるのかもしれません。
 子どもは、その背景と共にあるのです。懇談で保護者の方は、どうおっしゃっていましたか。1学期にご家庭の本音が全て出てくることは、まずありませんが、ちらりと話してくださるときもあります。

担任が気をつけたいポイント

@一人一人の振り返りをしましょう

 1学期の子ども一人一人の記録を振り返りましょう。
 改めて読んでいくと、これまで気づいてなかったものが見えてくることもあります。これは、生活面も学習面も含めてです。記録をとっていなかったら、一人一人を思い浮かべながら、改めてその子について書いてみましょう。自分がどの程度子どもを知っているのか、いないのか、すぐに分かってきます。交流の薄かった子どものことは、なかなか思い浮かばないのですから。
 一人一人がクラスに居場所があるのだろうか。疎外されている子どもはいないのか。問題行動をとる子どもは、どの程度成長してきているのか…。
 いくらでも課題が見えてくることでしょう。

A学級の振り返りをしましょう

 一人一人の振り返りをしたら、次に学級の振り返りをしましょう。
 学級づくりが、思ったようにできているのかどうか。子どもたちはこのクラスが楽しいのだろうか。集団としてまとまって行動できているのかどうか。子どもたちがこのクラスに誇りを持てているのかどうか。
 課題が見えてきます。うまくいっていてそのまま続けていけば良いものと、修正するか切り替えるかしないといけないものもあります。

B課題解決へのてだてを考えましょう

 振り返りから見えた課題に対して、どのようなてだてを打っていくのか、具体的に考えましょう。
 例えば、僕の体験を例として話しましょう。1年生で激しい問題行動をとる子どもに対して、クラスの多くの子どもたちが疎外しようとしている傾向がみられました。そこで2学期のために、人を受け入れるとはどういうことか考えさせる絵本を、何冊も購入しました。構成的グループエンカウンターから、仲間づくりや優しさを育てるというテーマのエクササイズをピックアップして、用意しました。

多賀先生からのワンポイントアドバイス

 夏休みは、考えた次の日にすぐ、子どもに何かてだてが打てるわけではありません。ゆっくりと作戦を立てて、何度も練り直して準備すればいいのです。先輩たちの優れた実践を読み、課題への取り組み方を学びましょう。
 それから、2学期の準備を具体的に始めるのは、新学期の10日前になってからの方が良いのです。それまでに学んだことで、考えていくべきだと思っています。夏休みに頭を太らせてから、後半に準備にかかるということです。

多賀 一郎たが いちろう

 神戸大学付属住吉小学校を経て私立小学校に長年勤務。元日本私立小学校連合会国語部全国委員長。現在、追手門学院小学校講師。専門は国語教育。親塾を神戸と大阪で主催して、保護者教育に力を注いでいる。また、教師塾やセミナー等で、教師が育つ手助けをしている。
 絵本を通して心を育てることもライフワークとして、各地で絵本を読む活動もしている。
『小学校国語科授業アシスト これであなたもマイスター!国語発問づくり10のルール』(明治図書)『子どもの心をゆさぶる多賀一郎の国語の授業の作り方』『全員を聞く子どもにする教室の作り方』『今どきのこどもはこう受け止めるんやで』(黎明書房)など、著書多数。
 ブログ「多賀マークの教室日記」も好評。

(構成:杉浦)

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