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今月の相談
小学校4年生のミツオくんは、やんちゃなお子さんで大人に対して反抗的。入学時から肥満です。年々肥満度は増加し、現在は肥満度70%です。そのため肥満の指導が必要なお子さんです。担任からも、毎年の教育面談の折にお母さんへ伝えてもらっていますが、「ミツオに食べるなと言っているが、言うことを聞かない」の一点張りで、お母さんの協力も得られません。お母さんからは養護教諭が本人に指導するのは構わないと言われました。ですが、保健室に来るように言っても保健室に来ません。保健室に行かないことで担任がミツオくんを怒ってしまうという悪循環です。私に何ができるでしょうか。
スーパー養護教諭のアドバイス
1本人にどうしたいか聞いてみよう
私ならミツオくんに「あなたはハワイで暮らせば痩せ型!」と言います。説教やいわゆる通常の指導はミツオくんには合っていなかった結果、今のミツオくんがあることを受け止めましょう。70%の肥満であれば、運動会の個人走ではビリ、そして容姿についてからかわれるということもあるかもしれません。そのことも頭の片隅に置き、「ミツオくん、困ってることない?」と尋ね、情報を引き出しましょう。でも、きっと、ミツオくんは「別に」と答えます。そこで叱るのではなく、ゆっくり雑談をする中で、「おやつにポテトチップスを一袋食べ、夕食には冷凍唐揚げ(1キロ)を自分でチンして食べている」なんてことや、「お母さんは帰宅が遅く、夕飯はいつも1人」…というような、生活習慣や家庭環境に関することがもわかるでしょう。
2「力を貸して」と言ってみよう
カロリーと運動量を説明し、「今のままだと将来生活習慣病になるよ」という肥満指導は全く効果がないでしょう。それは養護教諭の価値観の押し付けだからです。ミツオくんの本当の敵は「寂しさ」です。あなたは、「ミツオくんのことが心配なんだ。ミツオくんはいろんなことができる力があるのに、それが発揮できなくなるよ。私、一緒に考えたいから力を貸して」と伝えましょう。そして、次に、毎日体重をはかること(※)を提案し、彼の寂しさを少しでも埋め、ミツオくんに寄り添う大人がいることを伝えましょう。「体重をはかりに保健室に来て欲しい。私は毎朝ミツオくんの顔が見たいよ」と言ってみましょう。ミツオくんは「フン! どっちでもいいよ」と言うかもしれません。あなたはすかさず、「ミツオくんならできるよ!」「明日の朝待ってるからね」と期待を最大限に伝えましょう。
3一緒に一喜一憂しよう
毎朝保健室で体重をはかることを、担任と母親に連絡しましょう。1・2で紹介した手立てによってミツオくんが「寄り添ってくれる大人がいる」と感じることができていれば、毎朝、ちゃんと保健室に現れることでしょう。体重が増えなければ一緒に喜び、増えた日には一緒に残念がりましょう。そして、「昨日の夜何してたの?」と話し相手になりましょう。
そのうちに体重が増えた朝には「昨日はカップラーメン2こ食べた、だから増えたな」。増えなかった朝には「俺、昨日、ちょっと我慢した」と自分の行動を振り返るようになります。
これを毎日続けていれば、いずれ体重の増加はストップすることでしょう。
(※)体重を毎日はかるだけのダイエットは効果的という研究結果があります。簡単な方法で子どもにもできます。今回は例としてあげましたが、個人の性格や体質などの特性を踏まえて、それぞれにあった方法を提案してください。
参考:"Keeping track of weight daily may tip scale in your favor" (Cornell University 2015)
今月のまとめ
ユーモアは大切です。しかめっ面で考えるよりも笑わせた方がいい結果が生まれます。寂しさと体重は比例するものです。肥満という現象だけにとらわれず、子供の隠された辛さの本質を見抜いて、一緒に考え行動する。そうすれば自ずと体重は、変わってきますよ。
