子どもの心と体のホンネに向き合う スーパー養護教諭の仕事術
保健室で生まれる「子どもの心と体」に関するお悩みを、スーパー養護教諭が一気に解決! 毎月の具体的な事例に基づいて、すぐに役立つ対応のアドバイスを伝授します。
スーパー養護教諭の仕事術(10)
家族の病気について相談してきた子どもへの対応
静岡県沼津市立大岡小学校養護教諭中村 富美子
2020/3/15 掲載

今月の相談

 小学校6年生のマキさんは,昼休みになると保健室に来ては、おしゃべりして教室に戻るお子さんです。チャイムがなると自分から教室に戻っていきます。保健室に居座るタイプではありません。よく来るけれど、入り浸る訳ではないのです。先日、保健室に来たとき、「お母さんがガンになった」「死んじゃうかもしれない」と話し、ポロポロ泣き出してしまいました。マキさんの担任イチロー先生(教員歴3年目)にこのことを話すと、「家庭のことだからあまり首を突っ込まない方がいい」と言われてしまいました。私は、この後、マキさんにどう接したら良いでしょうか。

スーパー養護教諭のアドバイス

1話してくれてありがとうと言ってみよう

 まず、あなたの保健室経営は素晴らしい。マキさんは、お母さんのことが心配でたまらない。きっと頭の中はお母さんで一杯です。普段から、マキさんにとって、あなたは、信頼でき、相談できる相手として認められていたのですね。それは、マキさんが昼休みに、たわいのない話にやってきても、嫌な顔をせず、手を休めて、相手をしてあげていたからだと思います。そして、深刻なことを自分では抱えきれなくなって、相談してくれたのでしょう。家族の問題は家族で解決できることも多いですが、マキさんの場合、何らかの理由で叶わなかったのでしょう。あなたに言わなければ、マキさんは一人で苦しんで体調不良、もっと進めば不登校に発展したかもしれません。「話してくれてありがとう」そして、「話を聞かせて」と言ってみましょう。そうすると堰を切ったように話し出すでしょう。

2ただ話を聞こう

 私の経験ですが、頻回来室する6年生の女子が、卒業後来室しました。お父さんがガンになったとき、「治るって家族みんなが信じてるから、お父さんがいなくなったらどうしようとか、不安だって自分が思っていることを家族の誰にも話せない」と私に話したら、私が「そっかあ」「そうだよね」「辛いよね」と言ってただ話を聞いてくれた。それに救われた。そう話してくれました。このことからわかるのは、子供は答えを求めているわけではなく、話を聞いてくれる人と空間を求めていたということです。

3首を突っ込みすぎないが、尻込みはしない姿勢でいよう

 「家庭のことに首を突っ込まない」、教育現場あるあるです。確かに保護者の離婚、引っ越し、職業などの人生の選択に首を突っ込む権利はないでしょう。しかし、子供は毎日家庭から学校に通ってくるのです。家庭の問題に対して、子供に不利益(心身の不調や、学校に通えないような状況)の兆候が見られた場合、教職員は子供の擁護者として尻込みする正当な理由はありません。社会福祉的なことはスクールソーシャルワーカー、メンタル面ではスクールカウンセラーなどと協同し、子供の不利益を解消していく必要があると思います。特に養護教諭は、誰でも(児童生徒、保護者、教職員等)いつでも相談できる保健室経営を行う。(※)ということ、連携の窓口としてコーディネーター的役割を果たすこと(※)が期待されています。

今月のまとめ

 マキさんの人生にとって家庭と学校に通うことは連続しています。切り離せません。家庭のことだと分離するのは、学校側の都合です。ですから、養護教諭として何もしないではなく、マキさんに今できること、そう、話を聞くことですね。それが子供を支えるということの第一歩です。

中村 富美子なかむら ふみこ

静岡県沼津市立大岡小学校養護教諭。
養護教諭の仕事の指標化とスキルアップを目指して、スキルラダー研究会(SLIPER)を主宰している。
修士(カウンセリング)、博士(看護学)。

(構成:小松)
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