子どもの心と体のホンネに向き合う スーパー養護教諭の仕事術
保健室で生まれる「子どもの心と体」に関するお悩みを、スーパー養護教諭が一気に解決! 毎月の具体的な事例に基づいて、すぐに役立つ対応のアドバイスを伝授します。
スーパー養護教諭の仕事術(2)
保健室登校の子を「甘やかさないで」と担任に言われたときの対応
静岡県沼津市立大岡小学校養護教諭中村 富美子
2019/7/15 掲載

今月の相談

 小学校6年生のみきこさんは、教室に行きたくないと言って保健室に登校し1週間経ちました。保健室では本を読んだり、担任からの課題を自習したりしています。担任が時々保健室に様子を見にきますが、そのとき、ちょうど来室した他の子どもと声を立て笑っていました。担任は、「笑って過ごせるなら教室に来なさい」とみきこさんに注意しました。そして、「保健室で甘やかすから、教室に来なくなる」と私は怒られてしまいました。私はどのように対応すればよいでしょうか。

スーパー養護教諭のアドバイス

1子どもファーストを貫こう

 「保健室で甘やかすから、教室へ行けなくなる」という言葉、保健室あるあるですね。「つまり、教室に行けないのは保健室のせい!」ですね。「保健室よりも教室の方が楽しければ行くんじゃないですかねえ」と愚痴をいう相手もいない一人職が恨めしくなる瞬間です。
 『みきこさんが、保健室で楽しく過ごしている。それを許容している養護教諭は、甘えを助長して、教室へ行かすことをしない悪いやつ』…でも、みきこさんにとっては、あなたこそが頼りの綱です。担任が怒るからという理由で担任の気持ちを忖度し、みきこさんへの態度を変えるべきではありません。

2甘えを理解しよう、そして担任と話し合おう

 みきこさんが教室に行かない、という状況を次の2つの例文で捉えてみましょう。

 例1)みきこさんは、教室に行かない。みんなが教室で勉強しているのに行かない。

 これは、甘えているのでは、と考えるでしょう。

 では、こちらはどうでしょう?

例2)みきこさんは、教室に行かない。みきこさんは、いじめにあっていた。

 これは、甘えとは言いにくいでしょう。

 同じ「教室に行かない」という行動が、どうして甘えになったり、甘えにならなくなったりするのでしょうか。それは、甘えは、人によって判断が異なるからです。ですから、私は、教室に行かないという行動が、甘えか、甘えでないか、判断の根拠を話し合うべきだと思います。「甘やかさないでほしい」と担任に言われたら、「先生は、なぜ甘えと考えるのですか」「私は、甘えとは思っていません。なぜなら○○だからです」と根拠をもって話し合うことが大切です。しかし、若手のあなたには根拠がわからないかもしれません。それでも何か違和感がある。そう自覚しているあなたは素晴らしいのです。若いとき、私もわかりませんでした。近くにいるカウンセラー、学年主任、ベテランの先生、近隣のベテラン養護教諭に相談しましょう。

3みんなで適切に甘えさせよう

 甘えをただ受け入れるだけが教育的な配慮ではありません。突き放せばいいというものでもありません。前述の例1のように特別な理由もなく、「教室に行きたくない」というのであれば、「朝、起きているだけでも偉いね」と今のみきこさんを受け止めつつ、そして「教室に行こうよ」とみきこさんの発達段階に即した行動を促しましょう。そして、みきこさんに必要な支援を関係者全員と共通理解し、計画を立て、みんなで「甘え」を支援の方策としてやりましょう。それがみきこさんの教室復帰への近道です。

今月のまとめ

 甘えかどうかは、その人の捉え方で変わります。つまり、人によって物差しが違うのです。「甘え」=悪いことというイメージに引きずられずに、つまり感情論ではなく、根拠で話しましょう。保健室にいた方が良い根拠を示す。例えば、夜眠れていない。食欲もない。いじめられている。心の中が幼い子供だったら…。それだったら、甘えと言って怒る方が間違ってる! あなたの行動が、根拠あるものならばあなたが正しい! そして、子どもは救われる!

中村 富美子なかむら ふみこ

静岡県沼津市立大岡小学校養護教諭。
養護教諭の仕事の指標化とスキルアップを目指して、スキルラダー研究会(SLIPER)を主宰している。
修士(カウンセリング)、博士(看護学)。

(構成:小松)
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