板書王のとっておき算数授業
これまで数々の授業・板書記録を残し続けてきた板書王が教える、子どもたちが授業に食いつく、とっておきの板書・授業ポイントが満載!
板書王のとっておき算数授業(17)
「また差が10?」たまたま!?いや、たまたまじゃないよ!
3年「1けたでかけるかけ算(かけ算の筆算)」(6/11時間)
新潟県新潟市立上所小学校二瓶 亮
2021/10/10 掲載

本時のねらい

 1□×△と1△×□の積の差について、□と△の差の10倍だけ変わる理由を考えることを通して、筆算の仕組みを見直す。

板書

図1

板書のとっておきポイント

  • きまり(積の差が10になるという共通点)に気付く段階と、きまりが成り立つ理由について考える(筆算の仕組みを見直す)段階で黒板を大きく二分した。
  • 子どもがきまり(積の差が10になるという共通点)に着目できるよう、2種類の差((1)□に入る2枚のカードの差と(2)積の差)に関する子どもの気付きをできる限り板書するようにした。

授業の流れ

1答えが最小・最大になる式を考える(20分)

2、3、4、5の4枚の数カードがあります。1□×□という式の□の中にカードを入れて計算したとき、答えが一番大きく(小さく)なるのはどんなときでしょう。

答えが一番小さくなるようにしたいとき、どのカードを使いたい?

それはもちろん2と3でしょ。

うん。でも2パターンの式ができるよ。

確かに。13×2と12×3ができるね。

どっちが小さいか計算して確かめてみよう。

結果を確認しましょう。

13×2のときの方が小さくなったよ。

私も同じ。13×2の方が10小さい答えだった。

 差が10だという板書を残しておく。

図2

次は、一番大きい答えを考えてみよう。

今度は4と5のカードを入れればいいね。

今回も2パターンの式ができるよ。

14×5と15×4では、どっちが大きい答えになるのかな。

14×5の方が大きくなった。かける数が小さいと答えも小さくなるし、かける数が大きいと答えも大きくなるみたいだね。

 自力思考中に、隣同士で計算結果を見ながら両手で「10」を作って笑っている子たちがいた。今回はその子たちの表現を全体に広め、きまりへの気付きを促すことにした。

○○さんと△△さんが計算結果を見て、お互いに両手の掌を広げて笑っていたんだけど、2人は何でそんなことをしていたんだと思う?

図3

分かったよ。「10」って言いたいんでしょ?

あ〜!今回も差が10って意味の「10」だね!

どうして今回も差が10になったんだろう?

たまたまじゃないの?

いや、たまたまじゃないよ!これはきまりだよ!だって、13×4と14×3でやってみても、差が10になったもん。

図4

えー!不思議だ…。

2差が10になる理由について考える(15分)

 最初のうちは、口頭でのぼんやりとした説明や(かけられる数の十の位)×(かける数の一の位)の部分の説明(“違い”にだけ目を向けている)が続き、なかなか理解が深まらない様子だった。そこで、筆算を2段にして表現していた子がいたため、多くの子がきまりに気づくきっかけとなると思い、指名した。

たぶんだけど、差が10になる理由が分かった気がする。筆算を2段で表す方法も勉強しましたよね。今回も2段で表してみたんだけど…。

あっ!何か分かったかも!1段目の20は同じだけど、2段目の50と40の差が10になっている。

そっか!1段目の20は5×4と4×5で入れ替えても答えは変わらないもんね。だけど、2段目は5×10と4×10で差が10になるんだ。

図5

○○さんが言いたいことが分かったかな?隣の人と確認してみよう。

○○さんは、一の位同士のかけ算は入れ替えても答えは変わらないけど、十の位と一の位のかけ算は片方は5で、もう片方は4だから、それに10をかけるから差が10になるって言いたいんだと思う。

そうそう。なるほどだね。

3見付けたきまりを発展させる(10分)

もしかして、これってカードの差が1だから何じゃない?

じゃあ、カードの差が1じゃないような、たとえば3と5だったら差が20とかになるのかな?

□□さんの予想をみんなで確かめてみよう。

13×5と15×3だから…あっ!本当に差が20になったよ。

すごい!不思議だ…。

さっきみたいに2段の筆算で表してみたら理由が分かったよ。

図6

さっきと同じで、1段目はやっぱり同じ答えになって、2段目の計算の答えの差が正体だよ!

おもしろいね〜!

この問題を自分なりに発展させるとしたら、どんなふうに問題を変えてみたい?

最初の4枚のカードを別な数字に変えてみたい!

もともとの式は十の位が「1」だけど、他の数字、たとえば「2」だったらどうなるのか試してみたい!

図7

自主学習で続きを調べてみるといいね。

 下はその後の実際の自主学習ノート。

図8

図9

図10

授業のとっておきポイント

この教材の良さは大きく2つあると考えている。
(1)□を用いたり、用いる数カードを固定したりすることで思考を絞り、全体の学びを方向付けすることができる(思考が拡散しない)。
 本時のねらいは、「筆算の仕組みを見直すこと」である。問題に制限を設けることで、仕組みに着目できるようにしているのである。答えが一番小さくなる場合と一番大きくなる場合の2通りを扱うことで、きまり(どちらも積の差が10になるという共通点)が見える。そして、その理由を考える中で筆算の仕組みを見直すことができる。形式的になりがちな筆算の学習だが、こういった学習を挟むことで、仕組みを振り返る機会とすることができる。
(2)□に入れる数を変えたり、固定した部分の数値を変えたりすることができ、発展性がある。
授業を考える際には、授業後の子どもの学びを想定することも大切である。発展性のある教材を扱うことは、「だったら〜のときはどうかな?」「もしかして〜じゃないかな?」などというように、授業で学んだことの先を見る子どもを育てていくことにつながる。子どもから動き出せるようになるまでは、授業の中でくり返し、「この問題を自分なりに発展させるとしたら、どんなふうに問題を変えてみたい?」というように問い掛けるようにしている。次第に、「だったら…」と動き出す子が現れるようになる。そのときは価値付け、また全体に広めていく。このくり返しを大切にしている。

【参考文献】
田中博史監修、夏坂哲志著『板書で見る全単元・全時間の授業のすべて 算数 小学校3年上』(東洋館出版社、2020年)

二瓶 亮にへい りょう

1989年新潟県生まれ。新潟市立上所小学校教諭。教員10年目。
子どもの思考に寄り添うことを大切にした算数授業を目指して日々研鑽中。
「フォレスタネット」(授業準備のための指導案・実践例共有サイト)に、板書写真を中心に、実践を多数投稿。「フォレスタグランプリ」の2018年11月大会にて「板書王」、2019年2月大会にて「ベストナイン(算数)」、2019年7月大会にて「月間MVP」を受賞。
共著に「フォレスタネットSelection Vol.3・Vol.4・Vol.5」((株)スプリックス)がある。

(構成:中野)
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