考え、議論する道徳授業を創る!問いでわかる道徳授業づくり・実践講座
考え、議論する道徳授業にお悩みの先生必見!授業づくりの要である問い(発問)をもとに、授業展開のポイント・指導のコツをアドバイスします。
道徳授業づくり実践講座(11)
子どもの疑問に答える道徳の授業開き
立命館大学大学院教授荒木 寿友
2019/4/25 掲載
  • 道徳授業づくり実践講座
  • 道徳
  • コメント(0)

 新学期が始まって少し経ちましたが、新年度の慌ただしさが落ち着いてきたかと思います。
 さて、読者の先生は道徳の授業開きをされましたか。一年前も道徳の授業開きについてミニワークを取り入れる方法を書きました。
『世界一わかりやすい道徳の授業づくり講座(10)道徳科、ついにスタート!考え、議論する土台をつくる道徳の授業開き』
 今回は子どもからの疑問に答える形で授業開きをする方法を考えてみたいと思います。

道徳の授業開き

 道徳に限らず、授業開きにおいて大切なポイントがあります。それは

  1. その教科を学ぶ意味(なぜ学ぶのか)
  2. その教科を通じて身につけてほしい資質や能力(学んだ結果どうなってほしいのか)
  3. その教科を学びたいという動機づけ(どうすれば楽しく学べるか)

であるといえるでしょう。
 今回は1と2に焦点を当てて考えてみましょう。3については、昨年のミニワークを参考にしてくださいね。

どうして道徳を学ぶの?

 先日、ある小学校の6年生クラスを訪問したときに、道徳について子どもたちと一緒に考える時間がありました。時間にしてわずか15分程度。まず私からシンプルな問いを子どもたちに投げかけてみました。

問い「道徳ってなんのためにするの?」

 1と2をまとめた問いです。
 子どもたちからはいろいろな疑問や考えが出てきました。

  • 「ほかの授業は答えがあるけど、道徳って答えがない。でも答えがなかったら意味ないんじゃないの?」
  • 「道徳ってよく友達と話をするから、話し合い活動のこと?」
  • 「アイデアとかひらめいたことを大切にする授業」
  • 「考えとか思いとかをしゃべるし、国語と似ていると思う」
  • 「サッカーのミーティングでも話し合いをして、そこで出たアイデアを後で使ったりするから、道徳と似ているかも」

 読者のみなさんはどう答えますか?
 道徳科の目標に書いてある「よりよく生きるための基盤となる道徳性を養う」というようなことをそのまま文面通り子どもたちに伝えても、間違いなく伝わりませんよね(笑)。そこで私は「よりよく生きる」という言葉を「ハッピーになる」という言葉に置き換えました。つまり、道徳っていうのは、
「どうやったらみんながハッピー(幸せ)になるのかについて考える時間です」
と伝えました。
 続けて、「ところで、みんなにとってのハッピーって何?」と聞いてみました。するといろいろあがってきます。ご飯を食べること、遊ぶこと、宿題がないこと(笑)、スポーツしているとき、友だちがいること、家族がいること、笑っているとき、などなど。

 「たくさんのハッピーが出てきましたね。〇〇さんの幸せと、△△さんの幸せって違うかもしれない。もしかしたら、このクラスの幸せと隣のクラスの幸せも違うかもしれない。ということは、道徳で考える幸せというのは、『答えがない』んじゃなくて、『答えがたくさんあって一つではない』ということになるんじゃないかな」

 道徳は「答えがない」という形で伝えられることがあるのですが、答えがないのではなく、「答えは一つではない」ということを子どもから出た疑問に答える形でまず伝えました。たくさんの選択肢が考えられるんですよね。

 「答えがたくさんあるということは、まずはどんな答えが考えられるのか、じっくりと考える必要があるし、考えたことをみんなで伝え合う必要があるよね。だから道徳には『話し合い活動』が入ってくるし、自分がどんなことを考えているのか他の人にわかってもらいたいですよね。答えが一つではないからこそ、たくさんのアイデアの中から、もっとも私たちをハッピーにしてくれるベストチョイス(最適解)を見つけ出していく必要があるんです」

 これは先の子どもから出てきた「話し合い活動」やアイデアやひらめいたこと、国語との関係から説明した言葉です(国語とはそもそも教科のねらいが異なりますが、そのあたりは子どもたちには説明しませんでした)。

 「サッカーのミーティングと似ているっていうことを指摘してくれた人がいたよね。道徳も本当にそうだと思います。道徳の授業でいいアイデアをみんなで考え出しても、それを生かしていかなきゃもったいない。みんなの普段の生活の中で道徳で考えたアイデアなんかを積極的に使っていってほしいなと思います」

 要は、道徳的に考えたことを行為へと結びつけていく視点を提示しました。
 ここで終わってもよかったのですが、最後にちょっとゆさぶって終わることにしました。
 「でも、道徳にはとても難しいところもあるんです。『みんながハッピーになる』というところなんですよね。私の幸せを考えるのは簡単かもしれないけど、私とあなたの幸せという話になると意見がぶつかるかもしれないし、私とあなたとあなたの幸せになるともっと難しいかもしれない。自分たちだけが幸せで、知らないところで苦しんでいる人がいるかもしれない。逆に、みんなは幸せそうだけど、自分は全然そうではないこともあるかもしれない。『みんなで』というところをどこまで広く捉えていくことができるか、どこで調和するところを見つけ出していくのか、それが道徳の難しいところでもあり、考え甲斐のあるところでもあるんです」

 このような感じで子どもたちとの時間は終わりました。子どもたちの道徳に関する疑問に答えるだけでも、十分道徳の授業開きにつながってきます。

道徳の授業で大切にしたいこと

 道徳科の目標は、次のように記されています。(カッコ内は中学校)

よりよく生きるための基盤となる道徳性を養うため、道徳的諸価値についての理解を基に、自己を見つめ、物事を(広い視野から)多面的・多角的に考え、自己(人間として)の生き方についての考えを深める学習を通して、道徳的な判断力、心情、実践意欲と態度を育てる。

 ここから明らかなように、

  • 道徳的価値について考えること
  • さまざまな見方や考え方をすること
  • よりよい生き方について考えること

が授業を通じた目的になっています。そのためには、

  • じっくりと考える時間が確保されていること
  • 他人の意見にきちんと耳を傾けること。他者とつながること。

が特に道徳の授業づくりで大切にしたいポイントになってきます。独りよがりのアイデアではなく、他者と検討を重ねてよりよい生き方のアイデアを考え出せるような授業づくりを目指したいですね。

荒木 寿友あらき かずとも

1972年宮崎県生まれ,兵庫県育ち。2002年京都大学大学院教育学研究科博士課程修了。博士(教育学)。専門は道徳教育、教育方法、ワークショップ、カリキュラム開発。現在,立命館大学大学院教職研究科教授。NPO法人EN Lab.代表理事。元セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン,アドバイザー。NPO法人cobon理事。国内外、大人子どもを問わず、さまざまなワークショップを展開する。
単著に『学校における対話とコミュニティの形成』(三省堂、2013年)、共著に『モラルの心理学』(北大路書房、2015年)、『考える道徳を創る「私たちの道徳」教材別ワークシート集』(明治図書、2015年)、『やさしく学ぶ道徳教育』(ミネルヴァ書房、2016年)、『戦後日本教育方法論史 下』(ミネルヴァ書房、2017年)など。

(構成:佐藤)

特集 「特別の教科 道徳」
コメントを投稿する

※コメント内ではHTMLのタグ等は使用できません。