絶対成功の体育授業マネジメント
体育授業がうまくいけば、学級経営もうまくいく!学級力が一気に高まる体育指導スキルと授業ネタを伝授!
絶対成功の体育授業マネジメント(3)
教師のチーム化で学級も団結する!
運動会
大阪府箕面市立萱野小学校教諭垣内 幸太
2015/8/10 掲載
  • 体育授業マネジメント
  • 保健・体育

1.教師もチームで

 「グループではなくチームに」「群れではなくチームに」。若い頃、先輩先生に、めざす学級を表す言葉として教わったことです。これらの言葉は、学級というのは、人がただ集まっているのみの無機質な場所ではなく、互いによい関わりをもって、成長していける集団でありたいということを意味している言葉です。しかし、これは、子どもだけに言えることではなく、教師集団にとっても大切な視点です。
 私が学生時代に続けてきたアメリカンフットボールに、「ハドル」という言葉があります。「ハドル!」と号令がかかると、仲間が集まります。練習の最初や最後、試合中の1プレー毎、ここ一番という時の作戦タイム……いろいろな場面でこの「ハドル」がかかります。直訳すると「集まる」という意味ですが、そこでは、ただ集まる以上のことが行われます。
 次への作戦や行動をみんなで練り合います。時には、互いを励まし合います。時には、ふがいないプレーに激しい言葉で叱咤します。時には、助けてもらったことに感謝を述べます。互いのことを認め合いながら、自分の意思を伝え合います。そんな「ハドル」を何度も何度も繰り返す内に、ただのグループや群れではなくチームとしてつながっていきます。
 教師一人一人が主体的に関わり、自分の意思を伝え合えるチームであることは、学年、学級の子どもたちにも必ずよい影響をもたらします。人としっかりつながることができることは、教師力の中の大きな力です。

2.運動会は絶好のチャンス

 運動会などの行事は、教師にとっても、子どもたちにとっても、「チーム」を築いていくために絶好の機会と言えます。夏休みに入り、運動会にむけて、学年やプロジェクトチームで話をする機会も多いのではないでしょうか。体育では、普段の教室での学習以上に子どもたちの力の差がはっきりと表れます。テストの点数は公開されることはなかなかありません。しかし、体育においては「できる」「できない」が目に見える形ではっきりと示されてしまいます。さらに運動会では、クラスの友達のみならず、親や親戚なども訪れます。

写真1大勢の観客の前で決まった!

 「どうせ勝てないからいいわ」
 「私にはできないからやりたくないなぁ」
 そんな心のカベをつくってしまう子もいます。同時に、運動会は、日々の学習の成果、子どもたちの成長を見せるための最高の場でもあります。どの子どもも意欲的にその最高の場に向かえるようにすることは、教師の使命です。そして、個々の力が同じベクトルを向くことで、集団としての団結力、学級力も高まっていきます。
 まず教師が一つのチームとなり、準備を周到におこなっておきたいものです。どんなことを考えておけばよいのでしょうか。子どもたちの「過去・未来・いま」という三つの視点から、その具体例を紹介します。

今月の授業運動会は子どもの「過去・未来・いま」からつくろう!

子どもたちの「過去」から

 過去に学んできたことや経験から、意欲を喚起する目標、学習の道筋が子どもたちに十分に理解される具体的な方法を創出します。

例:課題の設定
 簡単すぎたり、難しすぎたりするものではなく、すこし頑張ればできそうな課題(踊りや技、動き)を設定しましょう。子どもの事実を共有して、子どもの挑戦欲をくすぐる課題を設定したいものです。

例:スローガン・旗づくり
 子どもたちの実態を元に、リレーや集団演技などで、テーマともなるスローガンを決めます。例えば、「絆」「バトンに思いをこめて」「One for all All for one」など。これからの学習の柱になります。子どもたちと一緒に考えられるといいですね。また、学級や色のチームで、運動会に向かうための思いをこめた旗を作り、教室などに掲示するのもいいですね。

例:スケジュール
 本番までのスケジュールを示します。普段の様子を鑑みて、無理のない計画を立てましょう。いつどんな技や場面を練習するのかわかるようにすることで、見通しをもって学習に向かえるようになります。また、教師にとっても一つの指針となります。

写真2練習スケジュール

子どもたちの「未来」へ

 未来の子どもの姿を思い描き、目指すゴールを設定するとともに、次に向けて動きや考えをこれまでの自己や仲間とすりあわせられる場や方法を創出します。

例:ゴールの姿の設定
 学年として、学級としてどんな姿を目指していくのか、運動会でどんな成長を期待するのか。話し合っておきましょう。

例:交流の場の設定
 練習後、感想やコツを交流したり、互いに成果を見合える場を設定したりすることも、次なる自分を思い描き、主体的に学習に向かうために効果的です。学級通信や学年だよりに掲載するのもいいですね。

写真3個人学習カード

子どもたちの「いま」のために

 過去、未来を念頭におき、教師や仲間との関わり合いが必然となる場を設定して、いまを一生懸命になれる方法を創出します。

例:ペア・グループ練習の設定
 組体操の2人技や低学年ではペアで、リレーや中学年以上の表現運動ではグループで学習する時間を確保します。みんなのペースについていきにくい子どもも、安心感をもって学習に取り組めます。

例:先生にお悩み相談タイム
 子どもたちと対話すること時間を創ります。いま悩んでいることを相談したり、いまの頑張りをしっかりほめたりしたいものです。給食の時間などを利用して、食事をしながらお話するのもいいですね。

例:教師チーム相談タイム
 1日10分でもいいです。いつ顔を合わせて話をするのかあらかじめ設定しておくと、時間を無駄にしません。進捗状況や予定外の出来事などを共有し、微調整をおこないます。

 学校の実態に応じて、話し合う内容は様々でしょう。「過去・未来・いま」、話し合いの視点を明確にしておくことで、効率的に準備もすすめることができます。
 さぁ、2学期のスタートに向けて、「ハドル」してみませんか! 子どもたちの笑顔のために!

絶対成功のポイント

  • 行事は、学級力を高める大チャンス!
  • 「ハドル!」教師がつながれば、子どももつながる!
  • ハドルの視点は子どもたちの「過去、未来。そして、いま」

垣内 幸太かきうち こうた

1974年、兵庫県生まれ。大阪教育大学教育学部卒業。
2009年、関西体育授業研究会設立。
「体育科の地位向上」を合言葉に、近隣の先生方とともに発足。授業力向上を目指し、月1回程度、定例会を開催。また、毎年7月に組体操研修会、11月に研究大会を開催。

(構成:木村)
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