学級づくりにいかす!体育授業
体育の授業がうまい先生はクラスづくりも上手。体育授業は技を磨くだけでなく、子ども同士の関係をつむぎよりよいクラスを築く機会です。
学級づくりにいかす!体育の授業(7)
8の字跳びは、心・技・体を育てるチャンス 根性論より技術を学ぶべし
千葉大学教育学部附属小学校松尾 英明
2016/12/5 掲載
  • 学級づくりにいかす!体育授業
  • 保健・体育
「8の字跳びの授業」でのあるある…

 体育での8の字跳びの学習。校内縄跳び大会が設定されていることもあり、指導にも熱が入ります。最初はみんな意欲的に取り組んでいたものの、途中から記録が思うように伸びません。「もっとがんばって!」と檄を飛ばすばかりで、教えている方もどうしたら記録が伸びるかわからないままの状態が続きました。

 授業でのこんな失敗ありませんか?
 今回は、8の字跳びの指導のポイントをテーマにとりあげました。

ポイント1まずは「回し手8割」と心得る

 8の字跳び一番の技能ポイントは、実は回し手にあります。
 「回し手8割」なので、回し手がある程度回せない内は、跳ばせても練習になりません。
 8の字跳びの回し方のコツは、「切る」意識で回すことです。
 人と人の間に縄を「切り込む」意識で回します。
 跳ぶ子どもには「目の前のシャッターが降りたら入る」と教えます。
 要するに、目の高さを縄が通ったら、GOです。
 同じ速さで回すのではなく、地面につく瞬間は速く、空中はゆっくりと回します。

写真3

 こうすることで、ジャンプの時間は短く、入る時間は長くとれます。
 また、縄に入るのが遅い子どもの時は大きく回し、それ以外は小さくすばやく回すようにします。回し手の意識としては、跳んでもらうのではなく、「跳ばせる」です。
 1センチメートルしかジャンプしなくても、その下を通すつもりで回します。
  亀のようにのろのろ入ってきたとしても、無理矢理にでも大きく回して、縄に入れます。
 そういうとっさの判断が、回し手には求められます。

ポイント2周りの人を楽させるために、跳び方をマスターする   

 8の字跳びの跳び方の基本技術は、次の9つです。

  1. 声をそろえる(低く地面を這うような声はNG。高く張りのある声で。)
  2. 列を詰める(くっつくぐらい。レベルが上がるにつれ、少し間隔を空ける。)
  3. 真っ直ぐ並ぶ(Aと関連。縄にスムーズに入れる。特に列の後ろの方に影響。)
  4. 入り口から出口まで一直線に抜ける(コーンを置く練習法が有効。)
  5. 縄の真ん中まで移動してから跳ぶ(苦手な子は大抵手前で跳んでいる。)
  6. 片足ジャンプ(できない子には無理させない。素早く抜けられるメリット。)
  7. 跳んだ後は列を詰めるまでダッシュ
  8. 手は胸に(小さくなって縄に当たりにくくなる&ジャンプしやすくなる。)
  9. 列の先頭と最後には得意な子(クロスするため、速く抜けられる&入れる子を。)

 基本的に全て「周りの人を楽にさせるために」という技術です。
 勘違いしやすいのは、「いつもひっかかる子ども」に目がいってしまうこと。
 実はその前の子どもや、回し手に原因があることが多いものです。
 例をあげると、前の方が「A列を詰める」ができていないせいで、後ろの人が「D縄の真ん中まで移動してから跳ぶ」をやる余裕がない、という事態です。

写真1

 高速の渋滞と一緒で、後ろの人ほど前がさぼった分のしわ寄せがくる仕組みです。
 ここについて、図やイラスト等を使って全員で共通理解しておく必要があります。

ポイント3個別の課題を見極め、悩みに寄り添う

 最後に、8の字跳びでどうしてもうまく跳べない子どもへの指導についてです。
 まずは、「現状把握」をしましょう。どうして跳べないのでしょうか。
 怖い、やる気がしないという精神的な問題か。
 どう跳べば良いかわからないという、運動技能の問題か。
 それをとらえて、具体的な手立てをうちます。

〇怖い場合
A 手をつないで一緒に縄に入る
 →手をつなぐのは最初は教師、やがてクラスの子どもへと移行する
B 縄を大きくゆっくり回す
 →一瞬で入る決心がつかないので、間を長くして入るチャンスを増やす
C 体育館でなくグラウンドで練習する
 →1年生は、縄が床につくあの音が怖い
D 簡単な運動からステップを踏む
 →「郵便屋さんの落とし物」「ヘビ」など類似の動きで痛くないものを実施
E 縄を細くて軽いものにかえる
 →太い縄は迫力があり、痛そうなイメージがある

○運動技能に問題がある場合
A 単縄前回しを向かい合って一緒に跳ぶ
 →もしこれができない場合は、手足の協応動作ができていないと考える
B 目を開かせる
 →まれに目をつぶって入る子どもがいる。縄が怖い気持ちがある
C 入るタイミングを教える
 →一緒に縄に入る→背中を軽く押す→声かけをする、とステップアップ
D ジャンプの位置を教える
 →縄を地面に置き、中央まで走らせてジャンプ
 いつも同じ位置で跳ばせる
E 跳ぶタイミングで声をかける
 →「ハイ、ハイ!」の声かけ
 全員でやるとずれることもあるので注意

写真2

 色々挙げましたが、教師の側が技術を学び、「自分が跳ばせる」という信念を持って指導すること。
 何より、がんばっている子どもを信じてあげることが最重要です。
 8の字跳びの指導で体力の向上をしつつ、クラスづくりにつなげましょう。

今月の格言

8の字跳びは、
心・技・体を育てるチャンス。
根性論より技術を学ぶべし。

松尾 英明まつお ひであき

1979年宮崎県生まれの神奈川県育ち。現在,千葉大学教育学部附属小学校で体育を専門に研究。教員14年目。千葉県の自然風土をはじめとする様々な魅力にひかれ,現在は千葉県の南房総に移り住む。「教育を,志事(しごと)にする」という言葉を信条に,自身が志を持って教育の仕事を行うと同時に,志を持った子どもを育てることを教育の基本方針としている。野口芳宏氏の「木更津技法研」で国語,道徳教育について学ぶ他,原田隆史氏の「東京教師塾」で目標設定や理想の学級づくりの手法についても学ぶ。

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