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新年度から始めたい!子どもたち自身で管理する配付物・提出物の仕組み
大阪府公立小学校西尾 勇佑
2024/3/1 掲載

 来月からは、いよいよ新年度が始まります。子どもたちが主体となる教室を目指す1つのステップとして、提出物の管理や配付についてのアイデアをご紹介いたします。QRコードから始まる新たな仕組みで、子どもたちが自ら進んで取り組める仕組みをつくりましょう。

アイデア1: QRコードを活用して提出物管理


図1

※図1

 授業内での音読や読書活動、健康観察など、毎日提出が必要なアクティビティにおいて、QRコードを活用して提出物管理を行いましょう。QRコードを利用することで、提出した子どもの名前の横には丸印がつき、提出状況が電子黒板上で視覚的に確認できます(図1)。
 これにより、教師が声をかけなくてもクラス内で子ども同士が自発的にコミュニケーションをとり、「〇〇さん、まだ音読カード出してないよ」と声をかけるようになります。QRコードを使用することで、教師は提出の有無を確認するのにわずかな時間で済みます。

 QRコードを使用した提出物管理を導入する際には、「QRコード提出物チェッカー」というアプリを使います。古いスマートフォンなどを再利用し、簡単にQRコードを作成できるこのアプリを用いて、子ども全員分のQRコードを作成・印刷し、適切な場所に貼り付けます。初期設定には少し時間がかかりますが、はじめの段階で徹底的に仕組みを整えておくことが成功の鍵です。

アイデア2: 配達BOXと係活動で提出物の仕組みを徹底


 アイデア1で紹介したQRコードを使用した提出物のチェック方法を実施した後、提出物を子どもに戻すまでのプロセスを仕組み化しましょう。提出されたものには、宿題係の子どもがハンコを押す仕組みを構築します。ハンコを押すのは、朝の掃除が終わってから朝の会が始まるまでの時間帯に設定します。遅くなると、授業中にバタバタしてしまい、チェックや返却を忘れる可能性が高まるためです。

 宿題係がハンコを押した提出物は、配達BOXに入れられます。配達BOXには、配達係の子どもが帰りの会が始まるまでに提出物を配達する役割があります。帰りの会までの時間には、新たな配付物が出てくる可能性があるため、この仕組みにより、提出物のチェックから配付(返却)までを教師の介入なしに子どもたちだけで行うことができます。

 ただし、教師が一切関与しないわけではありません。例えば、音読の宿題を出した場合、教師は掃除後から朝の会までの時間に教室にいます。宿題係がハンコを押している隣で、提出された音読カードに目を通し、子どもたちが気づいていない課題がないか確認します。子どもたちが自主的に動いてくれているので、「書けていないカードがあるけど、どうしますか?」と気づいて教えてくれることもよくあります。

アイデア3: データでの配付を促進


 学習で使用する算数プリントなどの配付において、データでの管理を導入しましょう。学習データの共有や連絡事項を行うための「Teams」というアプリを使い、クラスの子どもたちとグループを作成します。各教科や単元ごとにフォルダを作成し、プリントのPDFデータを配信します。

 プリントをPDFデータで配付する最大のメリットは、子どもたちが自ら学習コンテンツを選択できることです。教師がクラス全体の子どもたちの課題をイメージし、学習プリントの内容を決定するのではなく、子どもたちが自分の課題に合ったものを自ら選択できる環境を整備します。
 従来のプリント配布では同じ問題に取り組むことが一般的でしたが、PDFデータの使用により、個々の子どもたちが自分に適した学習内容を選択できます。

 データでの配付は、管理場所を取らず、印刷の手間も省け、効果的に大量のプリントデータを準備することができます。子どもたちはタブレットの画面をタップするだけで、自分に合った学習プリントを容易に選択できます。

西尾 勇佑にしお ゆうすけ

1993年大阪府生まれ。大阪府公立小学校教諭。
5年間の小学校教諭経験を経て、教育委員会指導主事として教育相談や研修、ICTに関する業務に携わる。2年間指導主事として経験を積んだ後、学校現場に戻り、学級担任として勤務。
SNSを通した情報発信に力を入れている。Instagramのフォロワー数は2.5万人を超え、Voicyパーソナリティも務める。
Instagram:https://www.instagram.com/yuuu_240_
Voicy:https://r.voicy.jp/EGV3E4dMmyb

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