教育オピニオン
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授業力UPの大チャンス 「研究授業」はここを観る!
和歌山信愛大学教授小林 康宏
2019/11/1 掲載

 授業力を高めるためには二つの方法があります。
 一つは、当然のことですがたくさん研究授業をすることです。
 もう一つは、たくさん研究授業を観ることです。参観に備えてきちんと準備をし、ポイントを決めて授業を観て、授業をしっかり分析することで、授業力の向上へとつながります。では、どんなことを準備し、どんな点から授業を観ていけばよいのでしょうか。
 まず、参観前に必要な準備からお話します。

1 「研究授業」参観モードに必要な四つの準備

(1)本時のねらい・見通し・活動を把握する

 本時案を読み、本時のねらいは何か、ねらい達成のための見通し、すなわち課題解決に働かせる見方・考え方は何か、そしてねらい達成のためにどのような活動をするのかという三点を把握します。
 その方法は二つあります。一つは、主眼を読み取ることです。詳しく主眼を書く学校では「【学習活動】をする場面で【本時働かせる見方・考え方】により、【ねらいを達成した姿】」という流れで書いてある場合が多くあります。けれどもごく簡単に主眼が書かれている場合も多くあります。その場合には展開から読み取ります。

(2)本時見るべきポイントを把握する

 研究部会や授業者は、ここのポイントに沿って授業を参観して欲しいというものを示していることが多くあります。本時はどこに目を付けて観るのかということ、そして、具体的にはどの場面でどのような手立てを打ち、子どもがどうなることを期待しているのかという形で理解しておきます。

(3)授業の流れをイメージする

 自分が授業者になったつもりで、あるいは、その教室の児童・生徒になったつもりで授業の状況を具体的に描きます。その際、自分だったらどうするかということを考えておくと、一層、授業参観への期待感が高まります。

(4)三つの記録グッズを準備する

 研究授業を速く確実に、分析しながら記録し、後で見やすくするためには三つのグッズが必要です。
 一つは一番下の1枚を除き、下から5分の1以下程度を切り取り、教師の動き・子どもの動き・考察の項目を立てた授業記録用紙、二つは記録用紙を挟むための紙ばさみ、三つは三色ボールペンです。授業記録用紙の下を切ると、一番下の用紙の下部に板書の記録を取ることができます。
 ボールペンの黒は言ったことや行ったことを記録する、赤は課題だと感じたことと代案を書く、青は素晴らしいと感じた発言や発問・指示を書くといったようにして使い分けます。

図1

2 「研究授業」はココを観る!

(1)授業を観るポイントに沿った具体の姿を捉える

 例えば、本時を観るポイントとして、国語の授業で「動作化をさせたことは子どもが場面の様子を思い描くために効果的だったか」といったものが提示されていたとします。
 その際に着目するのはポイントとなる手立ての具体と子どもの具体的な姿です。
 大切なことはポイントとなる手立てを漠然と、或いは点で捉えないことです。例えば「動作化」が手立てであれば、子どもが動作化している姿だけ観るのではなく、どんな目的意識を子どもにもたせているのか、どんなところに気を付けて活動させているのか、また、動作化した姿をどのように位置づけているかといったように、詳しく、そして授業全体を通して捉え、その手立ての効果を分析することが肝心です。
 手立ての効果を分析していく際、根拠となるのはやはり子どもの姿です。全体の前での子どもの発言だけではなく、ペアやグループでの話し合いでどんなことを語っているのかなどつぶさに記録することが大切です。

(2)課題解決のための見通しはあるか

 研究授業を観る際の主たる観点は上述の通りですが、他にも日常の授業に生かせる大切な観点があります。
 一つは一人ひとりが課題解決の見通しをもっているかということです。
 課題解決のための見通しが明確で共有されている授業では、多くの子が活躍する姿が見られます。一方、課題解決のための見通しを子どもにもたせることなく、個人追究に入る授業では少しの子しか活躍することはできません。
 特に導入場面で学習課題を設定した後に着目し、課題解決への見通しを子ども達にもたせているか探っていきます。そして明確な見通しをもたせている授業ではどのようにもたせているかを記録します。そうではない場合は、自分ならどうするかを考えます。

(3)子どもが振り返る対象は何か

 大切な観点の二つ目は、子どもは何を振り返っているかです。
 最近では単純に「感想」を聞くケースは少なくなりましたが、まず大切なことは学習課題と対応したことを振り返ることです。子どもは導入で設定した学習課題の解決に向けて活動しているのですから当然です。
 もう一つはどうやって課題解決したかを振り返ることです。課題解決のために働かせたいわゆる見方・考え方を自覚することで、次に同様の課題と直面したときに解決していくきっかけとなります。課題解決の見通しをきちんともたせている授業ではこの振り返りは可能です。学習課題と振り返りの対応、働かせた見方・考え方の振り返りに注目しましょう。

小林 康宏こばやし やすひろ

和歌山信愛大学教育学部子ども教育学科教授。元長野県教育委員会指導主事。東京書籍小学校国語教科書『新しい国語』編集委員。単著に『基幹学力をつくる音声言語活動』『「言葉による見方・考え方」を育てる!子どもに確かな力がつく授業づくり7の原則×発問&指示』『研究授業パーフェクトガイドブック 見方・つくり方のすべてがわかる』『中学校国語の授業がもっとうまくなる50の技』(いずれも明治図書出版)『小学校国語 見方・考え方が働く授業デザイン 展開7原則と指導モデル40+α』(東洋館出版社)がある。

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