教育オピニオン
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夏休み中に振り返ろう!泳力がみるみるアップする水泳指導アイデア
学校法人 明星学苑 明星小学校教諭夏苅 崇嗣
2019/7/15 掲載

(1) 1学期のプール指導を振り返って 〜子どもたちの躓きと壁〜

 水泳学習は、少しでも技能を高めてあげたいという思いを持って行っている先生方ばかりだと思います。しかし、年間10時間程度に割り当てられている授業時数の中では、なかなか指導したことが浸透しないことがあります。大切なことは、子ども自身が「泳げた!」と達成感を実感できることです。
 そこで、1学期に行われた水泳学習を振り返りたいと思います。

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 低学年の躓きで最も多いのが、「潜ること」「顔をつけること」です。特に耳に水が入り、音が遮断される怖さが大きな壁となります。水泳学習が始まる前に、日々の洗顔やお風呂で水に慣れる練習を家庭に協力をしてもらいスタートラインをできるだけ揃えて授業を開始します。しかし、学校の大きなプールという全く違った環境では、家庭でできていたことができないことが多くあります。そこで、小学校生活で初めての水泳学習を経験する1年生やまだ経験の少ない低学年の子どもたちには、まず「もぐれた!」「浮けた!」を見取ってあげることが次の活動の原動力となり、自信へとつながります。水への抵抗感の強い子こそ、少しの進歩・変化を見逃さずにみんなの前でできたことを披露することが大切です。がんばった成果を全体で共有することで、本人はもちろん、同じくがんばっている子にとっても大きな励みにもなります。体育授業で大切な「即時評価:その場での評価」を心がけると子どもたちが大きく伸びる可能性が高くなります

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 中学年での躓きは、「連動性・動作の繋ぎの理解」です。授業で取り組んできた「けのび」「バタ足」「息継ぎ」など頭ではわかっていますが、3つの動作が繋がらずに混乱してしまう子が多く見られます。指導内容を1つずつ体に染み込ませるように指導することを心がけていますが、中には指導内容が増えるほど頭の中での整理ができずに、泳げなくなってしまうことがあります。そんなときこそ、指導のポイントを見直し、技能(動き)のどこにポイントを絞るのかを見極めることが大切です。中でも「息継ぎ」は大きな壁となります。息継ぎで顔が高く上がってしまう子には、ペア学習で頭を押さえてあげることで意識が高まり上達も早くなります。これも「即時評価」の一環です。「友だちが教えてくれる」という安心感と互いにポイントを理解しながら学習が進められるというメリットがあります。大切なことは、「心通った友だち同士で学び合い、教え合い、学びを深める」活動を多くすることです。

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 最後は高学年の躓きです。「平泳ぎの煽り足」「ゆっくりと泳ぐこと」の2点です。高学年は水泳学習の集大成となります。大切にしたいことは、泳ぐ量の保障です。しかし、ただ泳がせるだけではなく、泳ぎの質を上げることを意識した指導法を心がけます。平泳ぎのカエル足は、足の運びを順序よく教えてもなかなかうまくいきません。「お尻に踵がつくように引きつける」「踵で水を押すイメージで」「両足で水を挟む感じで」のチェックポイントをプールサイドや体育館で確認し合い、実際に踵を掴み、動きを覚えさせることが大切です。
 「長い距離を泳ぎたい」「速く泳げるようになりたい」という思いは誰もが持っています。しかし、急ぐあまりにせっかく身につけた正しいフォームがバラバラになりがちです。そこで、「手のかき」に焦点を絞って指導します。クロールの指導では、ビート板を足で挟みゆったり・大きく泳ぐ機会を多くします。「ゆっくり大きくかく→けのび→ゆっくり大きくかく→けのび」を繰り返し行うと水をしっかり捉える感覚を養えます。ゆっくりと大きく泳ぐことが、技能が伸びる鍵となります。

(2) 指導法の工夫 〜少人数の指導と短い距離を泳いで効果を上げる〜

 水泳以外の体育授業でも同じことが言えますが、やはりきちんと目が行き届く人数での指導が大切です。
 できればクラス単位で水泳学習も進められると効果的だと思います。全体での一斉指導で行う水慣れから始まり、クラス単位で細かい技能の指導ができるように、より人数を少なくして細かい指導へ切り替えることができるように、授業運営の工夫が必要です。
 また、泳ぐ量の保障に対しては、25mプールを縦に使うのではなく、横で泳ぐことができれば、子供たち一人一人の泳ぐ機会が多くなり、量が保障されます。また同じ動きを繰り返し行うことで、動きの定着もはかれるというメリットも多くあります。

図1
機会と量を保障できるのはどちら?

 少人数で、泳ぐ機会を多くできる場を工夫して、子どもたちのやる気と技能を伸ばします。

(3) 夏休みも習慣化(日常化)を促す 〜運動の記録を残す〜

 本校では7月末の数日間は「夏休みの水泳学習期間」を設定しています。数日間の集中練習なので、この期間にぐんぐん技能が伸びる子が多く見られます。私はせっかく夏休みに学校へ来てくれた子どもたちに、黒板を通しても対話しています。「明日また来ようかな?」と思える黒板を心がけています。写真左の「い」は水泳学習1日目の黒板で『いっしょに』という言葉で迎え、右写真の「い」は『今がチャンス』と前向きな気持ちさせる言葉を書いて迎えます。

図2

 また、夏休みの日々の記録の中に「運動の記録:※下」という項目を入れ、運動(水泳)も習慣化できるようにしています。夏休みの水泳学習の最終日に、「休み中も続けてがんばって!運動の記録を見るの、楽しみにしているよ!」と伝えることが、前向きに運動(水泳)に取り組むきっかけづくりとしています。

図3

 1学期に計画してきた授業の結果、どんな力が身についたか、身につけられなかったかについて、子どもたちの様子をアンテナを高くしながら観察してあげられるかが指導の鍵を握ると思います。授業後早めの振り返りは、次回以降の水泳学習へ繋がる大切なことです。校内で水泳学習の振り返りをきちんと行い、さらに充実した水泳学習が行えるように、情報共有していきたいです。
 「全ては子どもたちのために!」です。

夏苅 崇嗣なつかり たかし

1973年生まれ。明星大学教育学部卒。
学校法人明星学苑 明星小学校教諭。
東初協学級経営部会運営委員。
筑波学校体育研究会理事。

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