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どうなる? 小中学校へのスマホ持ち込み 今考えるべき課題と対策
兵庫県立大学准教授竹内 和雄
2019/2/15 掲載
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 昨年10月、「大阪府の小中学校、来春からスマホ持ち込み解禁」という主旨のニュースがマスコミを賑わしました。私にだけでもテレビや新聞、ラジオの取材が20件以上あり、社会問題と言って良い状況でした。この問題について、現段階(2019年2月1日)時点で簡単にまとめてみます。

1 これまでのスマホ持ち込みは?
 実は、日本には携帯電話等の正式な決まりはありません。あるのは文部科学省が2009年に出した通知です。通知ですから強い拘束力はなく、大きな方向性を示したということです。通知内容は簡単に書くと「小中学校持ち込み禁止、高校使用禁止」を原則としています。つまり、小中学校は携帯電話の持ち込み自体を禁止し、高校は持ち込みは認めても校内での使用を制限しています。あくまで原則ですので、特別な事情のある小中学生は学校の許可を得て持ち込んでいる場合ももちろんありますし、高校によっては持ち込みを認めていない場合もあります。それぞれの地域や学校の実情に合わせて決めてきました。

2 なぜ持ち込み可に?
 昨年、大阪北部地震がちょうど児童生徒の登校時に発生しました。長く子どもの安否がわからず心配した保護者は、「非常のために子どもに登校時に携帯電話を持たせたい」と訴えました。地震以外にも台風や大雨等、自然災害が続いたので、保護者の気持ちはよくわかります。大阪府議会でもこのことが話題になり、今回のスマホ持ち込みにつながったようです。

3 いつから持ち込み可に?
 「早ければ2019年4月から」という報道があったので、教育現場は一時混乱しました。私も驚いて、いろいろな所で発言しましたが、これは「早くても」が一人歩きした部分もあるようです。最近の報道をまとめると、「実際は、2019年2月に府教委がこの問題のガイドラインを示し、それに基づいてそれそれの市町村や学校が方針を決定」。つまり、まだ何も決まっていない状況です。そろそろガイドラインが示され、各市町村、各学校で対応を検討していきますが、懸念や不安、決めておかなければいけないことが多いです。

4 何を決めなければ?
 いろいろとあらかじめ決めておきたいことがありますが、紙面の都合もあるので主要なことだけ書いてみます。

(1)スマホの保管場所
 これは間違いなく使用禁止でしょう。このルールを厳格にしないと大変なことになります。子どもですから近くにスマホがあるとこっそり使いたくなります。「授業中は絶対に使えない」と子どもたちに認識させる必要があります。高校の例では、停学、退学等、厳しいルールがあるからか、最終的には教師の指導はある程度行き渡りました。しかしそういうのがない小中学校は難しいかもしれません。高校や私学の例では2つの方策があります。

方策1:子どもの手元にない状態にする

 学校が預かる、ロッカーにしまわせる等、物理的に子どもたちの近くにないようにする方策です。一定の効果がありますが、子どもたちはダミーを預ける、こっそり手元に残す等、あの手この手で対抗します。
 学校が預かる場合、誰が、いつ、どうやって、等課題山積です。保管場所が大変です。1台10万円近くするスマホが1クラス40台。400万円です。盗まれたり、壊れたりしたら大変です。保管場所への移動も難しく、途中で落とす危険もあります。
 ロッカーにしまわせる場合、小中学校には高校のように鍵がかかるロッカーが通常ありません。つまり、取り出すのが簡単になってしまいます。

方策2:使わない時間を決める

 学校が預からずに、保管を子どもにまかせ、ルールを徹底する方法です。高校等には「授業中禁止」「放課後まで禁止」「門に入ったら禁止」等、様々なルールがありますが、徹底が難しいです。スマホは小さいので本の間に隠してこっそり使ったり、トイレで使ったり、いろいろな事例があります。

(2)ペナルティ
 違反する子が出てくることが予想されますが、その子たちのペナルティを決めておく必要があります。高校の場合、3回で停学等、様々ですが、保護者を呼び出して手渡し等が多いようです。共働きの場合も多く、混乱します。

(3)登下校
 登下校時に「歩きスマホ」等で、事故にあう場合があります。認める以上、ある程度の指導が求められるかもしれません。高校の場合は、自己責任の場合が多いですが、小学校の場合、集団登校等の場合も多いので難しいかもしれません。
 どちらにしても、学校としてのスタンスを保護者に提示しておく必要は少なくともあるでしょう。

5 今後に向けて
 公立小中学校では初めてですので、何が課題なのか日本中の先生も保護者もわかっていません。いろいろなトラブル等に臨機応変に対応していかなければなりません。その際、子どもたちの意見も十分に聞きながら、その地域、学校に適したルールにしていかなければなりません。
 私は10年後には子どもたちが普通にスマホを学校に持っていく状況になると予想しています。そのためにも今回、大阪でわかった知見は重要です。広く日本全国に還元して、日本中の子どもたちのために活かしていく必要があるでしょう。そのためにも、学校、保護者、地域で十分に話し合って、課題解決していかなければなりません。
 あとは、子どもたちの意見です。この課題は子どもたちにとっても切実です。「主体的・対話的で深い学び」の絶好の機会です。小中学校全員で考える等の工夫があっても良いと思います。市町村の小中学校の児童会、生徒会が集まって、この問題を議論する。そこに教師や保護者も同じ立場で意見を発する。そうやって決めたルールは子どもたちは守ろうとします。高校生が先輩の立場で関わっても良いと思います。
 そういう大きな可能性もある課題だと思います。

竹内 和雄たけうち かずお

兵庫県立大学環境人間学部准教授(教職担当)。
公立中学校で20年生徒指導主事等を担当(途中小学校兼務)。寝屋川市教委指導主事を経て2012年より現職。生徒指導を専門とし、いじめ、不登校、ネット問題、生徒会活動等を研究している。文部科学省、総務省等で、子どもとネット問題についての委員を歴任。NHK「視点・論点」「クローズアップ現代」等にも出演。毎日新聞に「竹内先生の新教育論〜スマホっ子の風景」連載中。ウィーン大学客員研究員。

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