教育オピニオン
日本の教育界にあらゆる角度から斬り込む!様々な立場の執筆者による読み応えのある記事をお届けします。
副校長・教頭の働き方改革、地位の向上のために
全国公立学校教頭会会長今井 功
2018/2/1 掲載
  • 教育オピニオン
  • 教職課程・教員研修

 平成29年度全国公立学校教頭会の調査では、平成29年度に副校長・教頭が11時間以上勤務している割合が、小学校では92.5%、中学校では94.3%となっています。さらに、12時間以上勤務している割合が、小学校では78.3%、中学校では83.9%となっています。平成28年度よりも微減という結果です。
 これらが、副校長・教頭の勤務実態です。約8割の副校長・教頭が過労死ラインを越えて仕事をしている実態が浮き彫りになっています。
 その要因として挙げられているのが

●各種調査への対応
●保護者・PTA・地域・関係諸団体との連携
●児童・生徒指導上の課題への対応

です。
 小学校では、

●特別な支援を要する児童・生徒の指導

が加わってきます。
 また、「各種調査への対応」は副校長・教頭の疲労やストレスの原因にもなっています。
 ここで、副校長・教頭が時間を費やす原因の2番目に挙げられている「保護者・PTA・地域・関係諸団体との連携」ですが、やりがいを感じるときの4番目に「保護者・地域から感謝や良い評価の言葉が寄せられたとき」があり、時間をかけて対応した結果、良い評価につながった場合、やりがいを感じていることがわかっています。そのため、一概には決めつけられない部分もあります。
 副校長・教頭の仕事では、「各種調査への対応」が一番時間を要し、疲労やストレスの原因であることがわかりました。議会対応など行政側の苦労もよくわかりますが、教育委員会各課で似たような調査が何回も行われることがないようにしてほしいものです。
 副校長・教頭の仕事はなかなかスリム化できません。副校長・教頭については、仕事の効率を図っても削れる時間はほとんどないと考えます。今まで教員特別手当がついていたため、残業という概念が学校現場にはなじみません。時間外労働を命令できるのは、公立の義務教育諸学校等の教育職員を正規の勤務時間を超えて勤務させる場合等の基準を定める政令によって次の4つが示されています。

(1)校外実習その他の生徒の実習に関する業務
(2)修学旅行その他学校の行事に関する業務
(3)職員会議に関する業務
(4)非常災害の場合、児童または生徒の指導に関して緊急の措置を必要とする場合その他やむを得ない場合に必要な業務

 それ以外は、教職員の自発的行為として考えられてきました。したがって、労働時間の意識は学校現場では希薄です。
 今後は、管理職が労務管理をしっかり念頭に置かなくてはなりません。しかしながら、現在の副校長・教頭自身が労務管理されてきた経験がないため、管理職向けの研修をする必要があるように思います。

 全国公立学校教頭会では、本年度マークシート方式の調査から、WEBによる調査に変更しました。このことにより、統計処理ができるようになりました。次年度から副校長・教頭の仕事を軽減できると期待されるものは、副校長・教頭の複数配置、質の高い主幹教諭の配置、事務長の配置等、いずれなのかをデータで示せるようになると考えています。仕事の効率化を図りながら、「政策提言能力を備えた職能研修団体」として、副校長・教頭の働き方、地位の向上について、要請活動をしていきたいと考えております。

今井 功いまい いさお

千葉市立花園中学校 教頭
平成28年度全国公立学校教頭会 副会長
平成29年度全国公立学校教頭会 会長
趣味:スポーツ アクション映画鑑賞

コメントの受付は終了しました。