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単元構想の工夫で、『学びの地図』の趣旨を実現する
北海道教育大学附属函館中学校郡司 直孝
2018/1/15 掲載
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1.『学びの地図』の趣旨を実現する単元構想のために

 『学びの地図』の趣旨を実現する単元構想のためには、『学びの地図』をどのように捉え、どのように単元構想へつなげていくかが大切である。ここでは、2つの視点から考えてみたい。
(1)『「学び」の地図』からの単元構想
 「学び」は学習者を主体とする言葉であり、地図が描かれる際には、学習者がこれまでに経験してきた事柄を踏まえるとともに、学習者が何を、どのように学んでいくことになるのか、という視点に立つことが大切である。
 学習者は、様々な学びの経験をすでに有している。授業者は、この事実を特に大切にして単元を構想するべきではないだろうか。例えば中学校であれば、授業者が小学校の教科書に目を通したり、小学校の教員と交流したりするなど、小学校で何をどのように学んできたのかに注目することが、「縦」との関わりとして重要であると考える。また、他の教科等でどのような資質・能力の育成が目指され、どのような内容をどのように学んでいるのかを互いに共有するなど、今何をどのように学んでいるのかに注目することが、「横」との関わりとして重要であると考える。
 では、どうすれば授業者はこれらをよりよく知ることができるのだろうか。もちろん、各種調査やアンケートという方法も活用できる。しかし、目の前の学習者の言葉に耳を傾け、彼ら彼女らが語る「学び」から始めることが大切なのではないだろうか。

(2)『学びの「地図」』からの単元構想
 「地図」は、全体を見渡せるものでなくてはならない。そして、これから進んでいく道が、どのような経過を辿り、どこに向かうことになるのかが明らかになるものでなくてはならない。何よりも、専門家ではなくても、それらが容易にわかるものでなくてはならない。
 だからこそ、授業者が構想した単元は、学習者に示され、授業者と学習者がともに共有している必要がある。それは、単元において、どのような資質・能力の育成を目指しているのか、そのためにどの単位時間で、何を、どのように学んでいくのか、という見通しをもつことにつながっていく。さらに言えば、1つの単元のことだけではなく、分野や教科全体の構想を示すことによって、「今学んでいることは、何につながっているのか」「ここで学んだことが、今の学びにつながっている」ということを学習者が意識できるようになるのではないだろうか。

2.具体的な実践例

 前項で述べた考えに基づいて本校社会科では、授業者が単元をどのように展開するかを明らかにした様々なシートに基づいて、単元の展開を学習者に説明する資料(資料1)や、中学校社会・公民的分野全体における単元間の関わりに関する資料(資料2)を作成・配布している。

資料1

資料1

資料2

資料2

 また、学習者が単元を通して追究し続ける学習課題である「単元を貫く学習課題」を設定する実践研究に取り組んできた。「単元を貫く学習課題」の具体例としては、公民的分野において

本校教員が出席して開かれた職員会議で策定された「生徒は学校内において、携帯電話やスマートフォンを所持・使用することができる」というきまりに賛成か、条件付賛成か、反対か

平成32(2020)年度予算からの「次世代への借金を残さないために、公債の発行を減額する」ことに賛成か、条件付賛成か、反対か

などを挙げることができる。
 多くの学習者はこの課題に対して、単元前には、生活経験のみに基づいた判断や理由であったものが、意図的に設計された単位時間ごとの学習内容の積み重ねによって、「効率」や「公正」などの見方や考え方、知識等に基づいた考えへ変化することができた。また、計画的に設計された他者との議論を通して、考えをより深めていくことができた(資料3)。

資料3

資料3

 なお、本校は現在、学校として育成を目指す資質・能力を「各教科等の資質・能力」「情報活用能力」「市民性」の3つに設定し、それらを育成するためにすべての教科等のどの単元で、どのようにその育成を目指していくのかを明らかにする『学びの地図』の作成に全校で取り組んでいる。本項で述べた実践例や本校の研究については、http://www.hokkyodai.ac.jp/fuzoku_hak_chu/study/を参照されたい。

郡司 直孝ぐんじ なおたか

1983年 北海道根室市生まれ。北海道教育大学函館校卒業。
2006年 北海道公立中学校教諭。2013年より現職。

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