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夏休みも中盤に差し掛かってきました。夏休み明けを控え、あれこれ考え始めた先生も多いのではないでしょうか。今回は、夏休み中にやっておくことのできる準備という内容で書きたいと思います。
1 夏休み明けについて、押さえておきたい事実
まず、必ず押さえておきたい事実からです。内閣府「自殺対策白書」によれば、過去40年間の日別自殺者数をみると、夏休み明けの9月1日は18歳以下の子どもの自殺が最も多い日だということがわかっています。その前後の日も同様に自殺の多い日とされています。学校に全ての原因がある訳ではありませんが、学校が再開される前後に自殺者が多いということは事実です。そういった現実からすると、相当なストレスを子ども達が抱えている可能性があるということを教師は認識する必要があるでしょう。非常に丁寧に取り組んでいくことが求められます。
2 残りの夏休みに意識すべき3つのこと
次に、夏休み明け、そして2学期について考える際、意識したいことについてです。「発達障害」「生活リズム」「SNS」の3つです。
1つ目の「発達障害」に関しては、夏休み明けだけでなく、常に意識していかねばならないことなのですが、特に夏休み明けには難しさを抱える子どもが多くなります。文科省の調査によると、普通学級には発達障害の子どもが6.5%の割合でいる可能性があるとされています。30人のクラスであれば、2〜3人いてもおかしくないということになります。教師はしっかりとその仕組みや対応策などを学ぶ必要があります。発達障害の子どもは、それぞれの子どもによっても特徴が違っているので、自分が関わる子どもはどのようなタイプなのかを捉え、夏休み明け、そして2学期に向けての作戦を立てておくことが大切でしょう。発達障害を抱える子どもが生き生きと過ごせるクラスは他の子どもにとっても生き生きと過ごせるクラスであるはずです。
2つ目は「生活リズム」です。アメリカの心理学者マズローが提唱した「欲求階層説」というものがあります。下位の欲求が満たされないと上位の欲求の段階へ進めないというものです。夏休み明けは、最も下位にある「生理的欲求」が満たされていない子どもが多くなります。睡眠のリズムが崩れていたり、食生活が不規則であったりということです。まずは、そういった生活リズムを整えていくことにエネルギーを注ぐ必要があります。私は毎年、夏休み明けの初日には「早寝早起き、昼寝をしない」という宿題を出していました。こういった心理学的背景などを学ぶのも良いことでしょう。
3つ目は「SNS」です。SNSなどは、年々、若者達の中に浸透してきています。学校生活を「リアル」な世界、ネットゲームの世界を「バーチャル」な世界とすると、SNSなどはその中間である「半バーチャル・半リアル」な世界です。中には、その世界の心地良さにどっぷりと浸かっている子ども達もいるはずです。子ども達が過ごしている世界がどんなものであるのかを知ることは大事なことです。年々変化するこのようなものに対して関心を持ち、勉強してみることも良いと思います。
3 残りの夏休みにやるべきことの具体例
最後に、夏休み中に教師がやっておくと良いことの具体例を2つ紹介します。
1つ目は「残暑見舞いを出す」ということです。これは、葉書で各家庭宛に手紙を出すものです。内容は「元気ですか?もうすぐ夏休みも終わります。早寝早起きに気を配ってください。始業式の日に会うのを楽しみにしています。」というような簡単なものです。これは、子ども宛に出すのですが、かなり親を意識しています。葉書で出すことで、多くの場合は親も見ます。家庭によっては、冷蔵庫などに貼る場合もあるはずです。こうやって親を巻き込みながら、夏休みの最後の部分の過ごし方を整えていきます。似た効果をねらうものとして、メールを送るという方法もありますが、何度も見るという点ではやはり葉書のほうが効果があります。葉書代の問題はありますが、掛かった分以上の効果があると思います。
2つ目は「学習ゲームの準備」です。夏休み明けは、これまでも書いてきたように色々な難しさを抱える時期です。そこでおすすめなのが「学習ゲーム」です。例えば、1学期に習った漢字を使った「漢字ビンゴ」、社会の地図記号などを使った「神経衰弱」などです。楽しみながら、学びの姿勢を整えていったり、友達と協力したりしていくことがねらいです。そういったゲームなどを行うための準備に時間を充てるのも良いかもしれません。
夏休みの終盤は、研修なども入り、忙しくなる時期でもあります。そういった中で、夏休み明け、そして2学期に向けて、しっかりとした準備をしていくことが落ち着いた2学期のスタートにつながるのだと思います。
