教育オピニオン
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会話が苦手な子を支援するソックスパペット活用術
川崎市立小学校総括教諭岡 信行
2016/12/15 掲載

教室が元気になるパペットの魅力

 私は、小学校の特別支援学級で、ソックスを材料にした簡単なパペットを用いた実践に取り組んできました。パペットには、コミュニケーションの不安や緊張を取り除く効果があり、特に「会話が苦手な子」に対する「話す」「聞く」活動を支援する場面で役に立っています。
 それに加えて、子どもたちはお人形が大好き。教室が盛り上がること間違いなしです!

図@

簡単にできるソックスパペットの作り方

材料
ソックス・ダンボール・新聞紙・牛乳パック・ウレタンや発泡スチロールの球やフェルトなど。

 続いて、作成手順を写真とともに紹介します。

図A

手順1
ダンボールを楕円形に切り、新聞紙を3枚くらい丸めたものを乗せ、ソックスの中に入れる。

図B

手順2
底を切り取った牛乳パックの周りに新聞紙を巻きつけて体を作り、ソックスの中に入れる。

図C

手順3
ウレタンやフェルトで、手足や、目玉、耳、鼻を作り、グルーガンや強力両面テープで貼りつける。

図D

手順4
犬のソックスパペットのでき上がり。

ソックスパペットを使った「話す」活動の支援

 パペットは、コミュニケーション能⼒を⾼めるための表現意欲を引き出す、とても有効なグッズです。それは、⼦ども⾃⾝にパペットを持たせると、すぐに劇遊びが始まり、多くの⾔葉を発し、何かを伝えたり表現しようとすることからもわかります。時には、⾃分の気持ちをパペットに代弁させることもあり、その手法は、パペットセラピーとして、注目をされつつあります。
 中でも、ソックスパペットは⼿作りであり、⾃分が作ったり名前をつけたものには、親しみを感じ、他⼈とのコミュニケーションや⾃⼰表現への意欲につながります。中には、乱暴な⾔葉を投げかけたり、乱暴な扱いをしようとする⼦どももいますが、それも⼿作りのパペットだからできること。⾃⼰表現の⼀つとして、受け⽌めていくことが⼤切です。
 ⼦ども同⼠がパペットを持つと、⾃然と劇遊びが始まります。中には、闘い(バトル)を始める⼦どももいますが、パペットは、教師や⼦ども同⼠が、積極的にかかわりあうきっかけを作ってくれます。また、⼆⼈で掛け合いの⼈形劇を作ろうとすることで、お話つくりを通して創造⼒を⾼めたり、考えたセリフを⽂字に表す活動につながり、国語的な⼒を伸ばすことができます。さらに、それを多くの⼈たちに発表しようとすることで、他⼈を楽しませたり、喜ばせようとする他者意識をはぐくむことができます。

ソックスパペットを使った「聞く」活動の支援

 パペットを⼿にして⼦どもたちの前に⽴った多くの教師がまず感じることは、普段なかなか、教師の話を聞こうとしない⼦どもでも、パペットを登場させると、注目して話を聞くようになることです。何か面白いことが始まるぞと、目を輝かせる子どもたち。そこから、コミュニケーションが始まります。⼝がパクパクと動くことにより、⼦どもの視線をひきつけ、パペットが話しかけると、教師が動かしているとわかっていても、⼦どもたちは楽しそうに反応し、答えようとします。そのようにして、ある時は、⼦どもの⽴場になって語らせたり、またある時は、ダメな⼦を演じさせたり、そして、教師の代弁をさせたりと、様々な語りかけができるのです。
 ソックスは、どのような形にもフィットしますので、動物に限らず、思いのままのパペットを作ることができます。
 また、⾝近で安価な素材でできているので、⼦どもの関心や興味に合わせて、⾃由に作り替えたり、改良したりすることもできます。
 特に特別支援教育では、様々な障害を持った子どもたちに対し、目的に応じたパペットを作ることも可能です。
 子どもたちをワクワクさせるパペットは、単なる遊びや趣味の域を超えて、多くの教育的な価値を生む、可能性を秘めています。

岡 信行おか のぶゆき

川崎市立小学校総括教諭。川崎市立小学校児童文化研究会 常任委員。日本児童劇作の会 常任委員。
日本パペットセラピー学会、幼児音楽研究会、日本腹話術師協会、日本児童青少年演劇協会、会員。
上記団体や県立児童センターなどが主催する、教員や、保育者、児童館職員のスキルアップのための研修会などで、靴下から作るソックスパペットシアターの講師を務めながら、その教育的な効果を伝えている。

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