教育オピニオン
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切実感のある題材で実社会で活きる力を育てよう!
「パフォーマンス評価」の効果を考える
佐賀大学教育学部附属中学校教諭山口 美紀
2016/7/1 掲載
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  • 技術・家庭

 授業で教えたことが、実社会で活きる力となるよう指導したいと、多くの教師は考えている。特に、技術・家庭科は「進んで生活を工夫し創造する能力と実践的な態度」を育てる目標をもつ教科であることから、「実社会で活きる力を育てたい」「実践力を育てたい」との願いは切実で、これまでにも、様々な指導法を工夫してきた。
 ここでは、その中から、学んだ知識や技術を活用して、生徒の実生活に近い切実な課題を解決する経験をさせるための住生活の題材「私は住まいのコーディネータ」における授業を紹介し、「パフォーマンス評価」の効果について考えてみたい。

1 「パフォーマンス評価」「パフォーマンス課題」をどう設定したか

 まず、題材を貫く問い「『安全で快適な住まい』をどう実現するか」を設定し、生徒に提示した。この「問い」は、題材全体を通して考えを深めさせたいテーマであり、題材の目標の土台となる考え方でもある。この問いを追求していくことで、生徒は実社会とのつながりを感じながら学習することができると考えている。
 また、実社会で活きる力が高まったかを把握する方法として、「パフォーマンス評価」に着目した。「パフォーマンス評価」では、様々な知識・技能を総合して使いこなすことを求める「パフォーマンス課題」と、評価指針である「ルーブリック」を用いて評価を行う。
 本題材で用いたパフォーマンス課題を次に示す。

 中学校一年生の未来さんは、父、母、弟(3歳)、本人の4人家族です。   
 未来さんは、技術・家庭科で安全な住まい方や、快適な住まい方について学んだので、自分の家をより安全で快適な住まいとするためには何が必要なのか、見直してみました。そして、見つけた問題点に対して住まいの安全対策を家族の人に提案し、改善できるところは改善していこうと思いました。    
 あなたが未来さんなら、見つけた問題点をどのように解決しますか。これまでの授業で学んだ知識や技術を活用して解決してみましょう。    *その他、未来さんの家の鳥瞰図提示

 この「パフォーマンス課題」から逆向きに指導内容を再検討し、「パフォーマンス課題」の学習時には、課題解決に必要な知識・技能をすべて終了させておくように授業を設計した。そして、5時間目には「パフォーマンス課題」を解決する時間を設け、学んだことを家庭生活で実践しようとする意欲や態度につなげたいと考えた。
 なお、次に本題材の「指導計画と評価規準」を掲載しているので、ご参照いただきたい。

図1

2 見られる効果は何か、課題は何か

 「パフォーマンス課題」の導入効果として挙げられるのは、@ぶつ切りになりがちな1時間1時間の授業をつなぎ、ストーリー性のある題材構成ができること、A課題を解決する場面を設けることで、学習した知識・技術が活用できるということを生徒が実感すること、B自分の生活を見つめ、よりよい生活を目指したいと思う生徒が増えることである。
 課題として残っているのは、ルーブリック作成(教師用・生徒用)の難しさである。課題解決時の評価指標としての妥当性を高めることはもちろん、生徒が客観的に自分自身を振り返りつつ、実践意欲へつなぐことのできるルーブリックとはどのようなものなのか、今後も検討を続けていきたいと考えている。

3 生活における「自立と共生」の力をはぐくむために

 本題材は、幼児など異年齢で構成される家族が、安心して快適に生活するための住まいの在り方について学習をするものであるが、この学習の根底には、生活における「自立と共生」の視点が隠されている。つまり、本教科で育成したい最終的な能力は、家族や衣食住を中心とした生活の「自立と共生」の力なのである。
 家庭科教育を通して、生徒たちが自分の家庭生活を見つめ、家族や高齢者等地域の人々やモノ、自然や環境とのかかわり方を考えながら、自ら家庭生活を工夫していくことが「実社会で活きる力」につながるし、このことが「自立と共生」の力をはぐくむと確信している。

 これからも、授業を通して、主体的に家庭生活を工夫できる生徒を育てていきたい。

山口 美紀やまぐち みき

1965年、佐賀県佐賀市生まれ。佐賀大学教育部学部附属中学校教諭。
1987年4月より、中学校技術・家庭科家庭分野の教諭となる。
1998年、佐賀県産業教育研修の一環として「家族と住まい」をテーマに佐賀大学で研修を行う。
2010年4月より、現職。

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