教育オピニオン
日本の教育界にあらゆる角度から斬り込む!様々な立場の執筆者による読み応えのある記事をお届けします。
アクティブ・ラーニングを実践する上での3つの「ない」を乗り越える
Find!アクティブ・ラーニング代表永井 充
2016/6/15 掲載
  • 教育オピニオン
  • 授業全般

はじめに

 2014年11月、当時の下村文部科学大臣が次期学習指導要領改訂の諮問をしたことがニュースとなって、多くの人がアクティブ・ラーニングという言葉について知るところとなったのではないでしょうか。その後もアクティブ・ラーニングに対する関心はとどまるところを知らず、日に日に高まっております。
 2015年より一般社団法人アクティブ・ラーニング協会と協力してアクティブ・ラーニングに関する数多くのセミナーや研修会を開催してまいりましたが、毎回、北は北海道から南は沖縄まで多くの先生方がご参加くださり、その関心の高さを実感しております。
 今回は、アクティブ・ラーニングを実践する上でのハードルとして、3つの「ない」についてよくご相談をいただきますので、我々が見聞きしてまいりました様々な実践事例を通じてお答えさせていただきます。

3つの「ない」とは

 それは、
1 ICTが活用でき「ない」
2 児童・生徒が積極的に参加し「ない」
3 テストの成績が上がら「ない」
であります。

1 ICTが活用でき「ない」を乗り越えるには
 まずは、ICTの利活用がアクティブ・ラーニングを進める上で効果的であろうことは、多くの先生方は度合いの差こそあれ実感されていることでしょう。
 しかしながら、そうはいっても「自分自身も使い慣れていないので、どう活用すれば効果的なのかイメージがわかない……」とお考えで授業にICTの利活用をあきらめてしまっているということはないでしょうか。
 そんな「ない」を乗り越える事例としては、私どもが運営しているウェブ de 授業見学 Find!アクティブ・ラーニング(http://find-activelearning.com/)において学校法人賢明学院 ICT教育室長 住ノ江 修先生は、ICTの利活用に関しすぐにでも取り組める様々な手法を提案されています。
 一例を挙げさせていただきますと、皆様ご存知のgoogleのストリートビューを授業に取り入れるだけで、日本に限らず世界の様々な土地の映像に触れることができ、たとえ日本から出たことがない子どもたちであっても、マチュピチュの遺跡に行ったような疑似体験ができます。
 それらをプロジェクターで投影しながら解説してもよいですし、住ノ江先生はもっと子どもたちの知的好奇心をくすぐるための工夫をされています。
 ICTは先生方にとっての負担ではなく、アイデア一つで子どもたちの能動的な学びにつながる体験を提供する非常に効果的なツールですので、ぜひ、すでに上手く使っている先生の取り組みを参考にしながら、ご自身の授業に取り入れてみていただければと思います。

2 児童・生徒が積極的に参加し「ない」を乗り越えるために
 これは、アクティブ・ラーニングに限らず授業を行う先生方誰しもが考える永遠のテーマではないでしょうか。今回はアクティブ・ラーニングを行う際に、積極的に参加してもらうための実践について紹介させていただきます。
 ある先生は時間管理を徹底させるために、普段の授業の中でもオンとオフの切り替えについて何度も何度も繰り返し伝えています。グループ学習においても同じく、時間管理に意識を向けるようにしています。
 またある先生は、グループでの話し合いが活発にスムーズに進むようにと、授業の冒頭5分を使って共通のテーマに基づいた発表をグループ内で行ってから授業に入るようにしています。
 これらの先生が共通しておっしゃるポイントが「場づくり」です。
 アクティブ・ラーニングの実践においては、「授業の主役は生徒であり、教師はいかに生徒に積極的に参加してもらうか知恵を絞ることが大切だ」と先生方はおっしゃっています。
 グループ学習や協同学習などに取り組む際に、グループを作れば簡単にグループ学習が始まるものではないと思います。そうした「場づくり」に毎回の授業で工夫を凝らすことで、新たな手ごたえを感じることができるのではないでしょうか。

3 テストの成績が上がら「ない」を乗り越えるには
 現在、アクティブ・ラーニングに取り組んでいらっしゃる先生方や、取り組んでみようとお考えの先生方の中には、「アクティブ・ラーニングに取り組むと児童・生徒のテストの成績が上がらないのでは」という不安を少なからずお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
 しかしながら、これまで数多くの学校に取材させていただき、児童・生徒はどう感じているのか直接聞いてみたところ、以下のような答えが返ってまいりました。
「(アクティブ・ラーニングの授業は)自分が話したり、説明したことが記憶に残るからいい」「先生から説明を聞くよりも友達から聞いた説明のほうが記憶に残りやすい」「自分たちで授業を作っている実感が持てるからいい」
 こうした結果、アクティブ・ラーニングに取り組むことによって、外部模試のクラス平均偏差値が7ポイント近く上昇した学校もあります。
 こうした児童・生徒の反応が聞かれるようであれば、想像以上の成績向上が期待できるのだと実感しております。

おわりに

 アクティブ・ラーニングに取り組み、成果を感じている先生に共通しているポイントについて触れさせていただきます。
 それは、学習者である児童・生徒を主体者として授業を行っているということです。
 別の言葉でいうとプレイヤーは児童・生徒であり、先生はファシリテーターでありコーディネーターという立場に徹して授業をされています。
 そういった先生方は授業を自分が行うというよりは、授業においては、発問や机間巡視といったことを通じて、児童・生徒の理解を確かめることにより多くの比重を置いていらっしゃいます。
 そして、児童・生徒を信じ委ねる『学び合い』といった取り組みもございます。
 今回ご紹介させていただきました取り組みはほんの一例に過ぎませんが、少しでも先生方にとってお役に立てていれば嬉しいですし、成果をあげていただくことにつながれば幸いです。
 そして、我々としてはこれからも、アクティブ・ラーナーを育成することに真剣に向き合う先生方を全力でサポートしてまいります。

永井 充ながい みつる

1972年生まれ。東京都立大学(現首都大学東京)法学部卒 
経営コンサルティング会社を経て2004年より教育事業に携わり現在に至る。
2015年には今後ますます加速していくグローバル社会において、世界において必要とされる21世紀型人材づくり、それを担っていく日本の先生方をWebを活用した、授業見学や研修・講義を通じてサポートする事業会社として株式会社Findアクティブラーニングを設立。
アクティブ・ラーニングの普及・啓蒙活動を行っており、教育機関向けの研修及び講演を多数実施。

コメントの受付は終了しました。