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様々な教科で「説明文」を書かせよう
新潟県新潟市立万代長嶺小学校教頭松野 孝雄
2015/4/15 掲載

 「説明文」を書く学習は、国語の授業に限るわけではない。様々な教科で取り組む必要がある。例えば、理科の教科書に次のような「説明する」という学習課題が設定されている。
 「下の図を参考にして、ランプの燃えるしくみを説明してみましょう」
 ところが、このような問題に対してすぐに説明する文章を書かせてもうまく書けない。不十分な説明を書く子が多いのだ。例えば、上の問題でいえば「新しい空気が中に入るから」というようにである。説明文なのだからある程度の文量が必要なのだが、短答で済ませてしまう。日常的に何かを一つずつ説明するという経験が少ないという実態も影響しているのであろう。では、「説明文」を書く指導をどのようにすればよいのだろうか。

1 説明する力

 説明文を書くためには、次の4つのことが必要である。

 (1) 書く耐性・慣れ
 (2) 文型・文体
 (3) 情報
 (4) 意欲

 この4つは、

     (書く耐性・慣れ+文型・文体+情報)×意欲

という関係にあると考えている。

(1)書く耐性・慣れ

 端的に言えば「書き慣れている」ことが必要だ。大まかにとらえれば次の2つの力をつけていく必要がある。
@速く書ける
 視写がある程度すばやくできなければならない。低学年であれば10字/分,中学年であれば15字/分,高学年であれば20字/分が必要と考える。高学年では、できれば30字/分程度のスピードはほしい。これくらいのスピードがあれば書くこと自体は苦にならないはずだ。
A長く書ける
 文章量と時間の問題の2つがある。「長い文章が書ける」ということと「長い時間にわたって文章が書ける」ということである。根気や意欲とも関係してくるが、指導するうえではどちらの意味でもよく、「長く書いた」ことを繰り返しほめることが大切である。

(2)文型・文体

@文型
 説明する内容や対象によって文型が異なる。決められた文型があって、その文型にそって書くことが必要な場合もある。例えば,平成21年度全国学力・学習状況調査の算数Bの問題がこれにあたる。
 「ゆうじさんの説明」が示されていて、その説明の仕方と同じように書く問題である。説明文の「型」と同じように書ける力が求められている。「同じような文型で説明する」という学習も大切なのだ。指導するうえで「文型」を示すということは有力な方法となる。特に、書けない子には「文型」は大きなよりどころとなる。
 一方、前述のように文型が示されていない場合には、これまで身につけてきた文型を用いることになる。高学年であれば、ある程度の説明文は文型を示さなくても書けることが多いようだ。なお、文型を示さずに説明するときには次のように指示をするとよい。
 「説明を読んだ(聞いた)相手から質問が出ないように書く(話す)」
 要は、できるだけ細かく詳しく(=緻密に)書く(話す)、ということである。
A文体
 文型が文章全体の構成を対象としているのに対して、文体は一文一文の書き方を対象としている。いわば、文章を書くうえでの基本事項や留意事項である。例えば、次のようなことだ。
 ア 一文は短くする。
 イ 主述をきちんと対応させる。
 ウ 接続語をできるだけ用いる。 ただし、「あと」は用いない。
 エ 状況に応じて敬体と常体を使い分ける。ただし、混在させない。
 オ 文末は端的にする(「〜と思う」などは使わない)。
 このような文体はすぐに身につくものではない。上記の点を意識しながら何度も書くなかで身につけていくものだ。
 指導するうえでは、子どもの書いた文章をもとにどこがどのように優れているのかを示すようなことを時折するとよい。

(3) 情報

 問題に対する情報が多ければ「説明」も書きやすくなる。したがって,指導するときには、情報が多くなるような働きかけが必要となる。

(4) 意欲

 (1)〜(3)に示した内容を子どもがもっていたとしても意欲がなければどうにもならない。だから、「×(かける) 意欲」なのだ。意欲はかけ算であり、どんなに能力があっても意欲が0であれば結果は0となる。ここでの「意欲」は、自発的とか自主的といった「自らがんばる」というような状況を求めているわけではない。粗く言えば次の2点である。
@ 嫌がらずに(めんどうくさがらずに)書く。
A 少しでもいいものにしようとする。
   <例> ○「自分なり」の文章を書いている。
       ○長い文章を書こうとしている。
 Aは,いわばオリジナリティのある文章を書こうとしているということである。学級によってはこの意欲が大きく欠如していて、「めんどうくさい」という雰囲気になっていることがある。このような学級の場合、まずこの意欲をもたせるところからの指導となる。

2 「説明文」を書かせる指導プロセス

 では、冒頭の学習課題に対してどのような指導をすればよいのか。私の今までの経験からすれば、次のように指導をすればたいていの子どもは「説明文」が書けるようになる。

(1) 問題を読む。
(2) どんなことを書けばいいのか、できるだけたくさん言わせる。
(3) さらに必要な情報を問答で引き出す。
(4) 問題の条件(使うべき言葉など)を明確にする。
(5) これらの情報を「メモ」として板書する。
(6)「メモ」を利用して説明文を書かせる。
(7) 書けない子のために教師が参考となる説明文を書く。
(8) 書いた子3〜5名に発表してもらう(もちろん、ほめる)。

 上記のプロセスで繰り返して指導すれば、しだいに自分で説明する文章が書けるようになると思う。大事なのは同じプロセスで指導することだ。1回だけの「点」の指導ではなく、同じスタイルで何度も書かせる「線」の指導が大切なのだと思う。

松野 孝雄まつの たかお

新潟県新潟市立万代長嶺小学校教頭

1960年生まれ。国語科を中心に、子どもの考える力を伸ばす授業づくりに取り組む。現在、新潟県新潟市立万代長嶺小学校勤務。

〈主な編著書〉『論理的な記述力を伸ばす授業づくり』『「読解力」授業づくりへの挑戦 小学1−2年生』『同 小学3−4年生』『同 小学5−6年生』など。その他,編著・共著多数(いずれも明治図書)

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