教育オピニオン
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日本の子どもたちを理科好きに
日本理科教育支援センター代表小森 栄治
2011/10/14 掲載

1.小学校の先生の理科離れ

 子どもたちの理科離れが話題になるが、それ以上に深刻なのが、小学校の先生の理科離れである。大きな原因が2つある。
 第一に、小学校の先生のうち、実際に理科を教えている方の割合が低いことである。小学校低学年には、生活科発足以来理科はない。高学年は理科専科の先生が教えていて、担任が理科を教えていないこともある。理科専科がいる学校では、理科を教えている先生の比率は、3分の1になるのである。各地で先生方に聞いた感触では、理科を教えている小学校の先生の比率は半分以下で、一人の先生の経験年数の中でも、理科を教えた年数は半分以下という人がほとんどだ。
 このような状況であるから、校内での理科の情報交換は低調になる。生活科開始後は、校内研修から理科がほとんどなくなっている。今回、ゆとり教育から基礎学力重視にシフトし、理数教育強化が改訂の目玉の一つとされても、校内研修は算数がメインで、理科は対象になりにくい。
 第二に、高校のいわゆる文系コースから大学の教育学部小学校教員養成課程に進む学生が多いことである。そのため、高校時代から理科離れしている学生が教員になっていることが多い。大学では「理科指導法A」が必修だが、小学校の理科に正対した講義になっていないことが多く、観察や実験の指導法を、実技を伴ってやっている大学は少ない。
 このような状況で大学を卒業し、学校でも理科を研修する機会が少ないから、多くの先生が理科に苦手意識をもつのも当然である。
 若い先生は、小中学校時代に戦後最少の内容を学び、教師になったら自分が学んでいない内容を教える状況になっているので、特に大変である。
 理科に苦手意識をもっている先生から教えられている子どもたちが、理科好きになることは少ない。理科が大好きな先生に教えられている子どもは、理科好きになることが多い。理科に限らず、教えている先生が好きで熱中していることが子どもたちに伝わる。小学校の先生方を理科好きにすることが、日本の子どもたちを理科好きにすることにつながる。

2.理科教育コンサルタントとして先生方を支援

 私は2008年3月,52歳で中学校教諭を早期退職し、理科教育コンサルタントなる自営業を開始した。一人の先生は、一生でおよそ1000人の子どもたちに出会う。1000人の先生を理科好きにすれば、100万人の子どもたちが理科好きになるという計算で、自分の人生行路の舵を切った。
 「米村でんじろうさんとはどう違うのですか」と聞かれることもある。米村氏は、マスコミや科学イベントで理科の楽しさを伝え、広めている。
 子どもたちが日曜日の科学イベントで「理科って楽しい」と感じても、月曜日に学校へ行ったら、楽しくない理科授業だったら、子どもたちは理科好きにはならない。
 私は月曜から金曜の学校の理科授業でこそ、子どもたちを理科好きにすべきであり、先生方が、楽しく、わかる理科授業ができるように支援したい、と日本理科教育支援センターを立ち上げて活動している(日本科学技術振興機構の理科教育支援センターとは別である)。
 今回の学習指導要領の改訂では、小学校の電流関連の単元が強化され、手回し発電機やコンデンサー、電熱線を使った実験が6年に入った。文系出身の先生には、苦手意識の強い物理である。しかし、これらの新教材は、日常生活や社会との関連が大変強い。
 先生も子どもたちも楽しみながら理科を学習できるように、実験がうまくいくように、各地の研修会や出前授業でノウハウを伝えている。
 研修会で、先生方が声を上げて驚いたり、楽しんだりしている様子が、次の日の教室で子どもたちとともに再現されていることを願っている。

※フェイスブック「理科教育支援センター」で情報を発信しています。ご覧いただけると幸いです。http://www.facebook.com/rika.suki

小森 栄治こもり えいじ

日本理科教育支援センター代表
1956年埼玉県生まれ。28年間埼玉県内の公立中学校に勤務後、2008年に日本理科教育支援センターを開設。「理科は感動だ!」をモットーに理科好きの子どもたちや先生を育てる活動をしている。
向山・小森型理科研究会代表、日本理科教育支援センター代表、日本SEPUP研究会会長、ナリカ・サイエンス・アカデミー公認トレーナー、埼玉大学非常勤講師(理科指導法)、鷲宮保育園講師(かがく遊び)
主な著書(編著を含む)に、『理科の学力向上策』(2004年)、『中学理科の授業開き1年が決まる“黄金の3日間”のシナリオ』(2006年)、『高校入試問題を中学理科で授業する』(2006年)、『「理科は感動だ!」〜子どもたちを理科好きに〜』(2008年)、『「理科は感動だ!」〜子どもが熱中する理科授業づくり〜』(2010年)(以上、明治図書)

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