教育オピニオン
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教師修業への助言 一生忘れない場面
福井市明道中学校高橋 正和
2011/9/6 掲載
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  • 指導方法・授業研究

 千葉市立高浜第一小学校で公開研究会が行われたときのことだ。私も図工科の授業をさせていただいた。3年生だった。『ごんぎつね』のある場面を題材にし、絵を描かせる授業を計画した。
 小学校で、それも飛び込みで授業を行うのはただでさえ不安だったが、教えるクラスの担任の先生が新卒の先生だと聞いていっそう心配になった。しかも、I先生に絵の指導をあまり行っていないと言われた。
 授業中、子どもたちの画用紙が絵の具でぐじゃぐじゃになる夢を見た。考えられることはすべて準備した。子どもたちの興味関心をひきつけるために背景を描いた絵を全員分用意した。電子黒板に映す画像も作成した。前日は、授業を行う図工室に入り、子どもたちが使う机に向かって実際に絵を描いてみる練習も行った。
 そして当日、授業が始まった。子どもたちは、授業に一生懸命取り組んでくれた。
 授業も終わり、あとは後始末だけすればいい場面のことだ。水入れの水を手洗い場に流すように指示した。ところが、その時トラブルが起きた。ある男の子が、手洗い場の前で水入れの水を床の上にどっとこぼしたのである。
 だが、その時だった。子どもたちが手持ちのふきんを持って来て、こぼれた水を拭き始めた。集まって来た四人の子どもたちが、濡れた床の上をていねいにていねいに拭いてくれたのである。私は呆然と見ていた。それほど子どもたちの動きは素速かった。
 ふきんで拭く子どもたちの姿を見て感動した。そして「負けた」と思った。私の授業よりも、I先生の学級づくりが上だと思った。
 なぜなら、私はI先生の学級のような子どもたちの心を、中学校で育てていなかったからである。こぼれた水を拭く子どもたちの姿は、どんな絵よりも立派な作品だった。一生忘れない場面である。

授業力&学級統率力2011年9月号より転載

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