教育オピニオン
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こんなニュースで“クイズづくり”
筑波大学附属小学校山下 真一
2011/6/22 掲載

一 新聞のニュースを読む力を鍛えるクイズづくり

 新聞は、新聞社によって同じ記事でも取り上げ方が全く違うことがある。それは、編集する側の情報量や編集者の意図に違いがあるからである。特に新聞の見出しを見ると、新聞社の考え方がよく分かる。
 第五学年の情報単元では、「様々な情報に対して適切に判断し、望ましい行動をしようとする能力や態度を身に付ける」ことが求められることになった。そこで、新聞やインターネットのニュースを取り上げ、楽しく活動しながら情報に対して適切に判断できる力を身に付けさせたいと考えた。
 本稿では、二つの新聞の見出しの違いに着目し、ニュースの意味を読み取るクイズづくりを紹介したい。
 次のようなクイズの問題を設けて、新聞のニュースの見出しを比べる。

@ニュースが伝えている内容を確認する。
A二つの新聞の見出しの違いは何だろう。
Bどちらの新聞の見出しが信頼できるだろうか。
C二つの新聞の見出しの違いの理由は何故だろう。

 今年の二月、日本相撲協会は、八百長問題を受けて、春場所を中止するかどうかに迫られることになった。その春場所の中止が決定される日の朝刊の見出しは次のように書かれていた。

春場所中止
 不祥事で史上初(A新聞)
春場所中止へ
 3人除名検討(M新聞)

 この二つの新聞の見出しを見ると、「へ」があるかないかが違うことがすぐに分かる。一見、違いがないように見えるが、この「へ」があるかないかで、読者が受け取る意味が大きく変わる。A新聞の「春場所中止」だと、「中止」と、断言しているので春場所は中止になったことになる。一方、M新聞の「春場所中止へ」の見出しだと、「春場所は中止になりそうだ」「中止されるかも知れない?」の意味に読み取れるのである。

二つの新聞の見出しを比べると、何が違うのでしょうか。

 子どもたちは、「春場所中止」「春場所中止へ」という見出しの違いに目を向ける。「へ」の違いにすぐ気付くと思われる。そこで、次の質問をする。

A新聞とM新聞とでは、どちらを信用しますか。

 「春場所中止」と主張するA新聞。「春場所中止へ」と微妙な主張のM新聞。子どもたちの主張も二つに分かれるであろう。そこで、次のように問う。

A新聞とM新聞の見出しが違う理由は何故でしょう。

 「新聞によって調べたことが違う」
 「新聞社が考えて、予想を立てたから」
 「読者を引きつける言葉を使って、新聞をたくさん買ってもらおうと思ったから」
 など、子どもたちは自分なりの理由を真剣に考えると思われる。答えはすぐに示してもよいが、子どもたちがこの意味を話し合い、自分の考えをつくりあげるプロセスを大切にしたい。
 また、「答えは、次の日の朝刊を見ると分かります」と教師が言うと、ほとんどの子どもが次の日の新聞を読もうとする意欲を育むことができる。
 子どもたちがニュースに進んでかかわる意欲を育てるためには、このように楽しく学ぶ工夫をするようにしたい。クイズを解きながら、友達とかかわりながら、子どもたちは、ニュースを見るのが好きになるに違いない。
 このような活動を繰り返し行うことによって、ニュースに強い子どもを育てることにつながる。

二 インターネットニュースと新聞のニュースの違いは?

 インターネットの検索サイトを開けば、政治・経済・社会から芸能スポーツまで、ニュース記事が分かりやすく整理されている。誰もがその時の主なニュースを知ることができる。

インターネットと新聞のニュースはどちらが信用できるか。

 「ネットのニュース記事は、時間が経つと内容が変わっている」
 「ネットは、いつも新しいニュース記事が掲載されている」
 「『◯◯新聞』などの名前が文章の最後に書かれている」
 このネットのニュースのよさは、どこにいても世界の様子を瞬時にとらえることができるという速報性にある。しかし、これらのニュースは検索ソフトが掲載するニュースを選び出し、内容をテーマごとに並べ替えたものであることをご存じだろうか。ネットのニュースは、新聞の情報を転載しているのが多いのである。ということは、ネットの情報は、伝える側が根拠をもって記載したものではないので、すべて正しいと情報を鵜呑みにすることがないようにしたい。

インターネットのニュース記事を読む時にはどんなことに気をつけるとよいですか。

 「情報を鵜呑みにしない」
 「誤報ではないかよく確かめる」
 「自分でよく考え、判断する」
 「他の人の受け取り方を参考にする」
 このようにネットのニュース記事を、新聞記事の違いと関連づけて扱うとニュースの読み方がよく分かる。

三 クイズにする時に気をつけたいこと

 ニュースをクイズにする場合は、面白半分にニュースを記事に扱うことがないようにしたい。ニュースにはプライバシーや人道上の問題があることを忘れないでほしい。

社会科教育2011年7月号より転載

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