教育オピニオン
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教育エッセイ(第6回)
記憶に残る体験型英語授業のススメ
洞爺湖町立洞爺湖温泉中学校教諭大塚 謙二
2010/9/24 掲載

 「聞いたことは忘れ、見たことは覚え、体験したことは忘れない」
 ある小学校英語の講演会で耳にし、心に響いた言葉だった。調べてみると、中国の老子が紀元前、既に「聞いたことは、忘れる。見たことは、覚える。やったことは、わかる」と言っていたという。

 現在の教育を取り巻く環境は複雑になり過ぎているが、本質は昔も今もシンプルで、生徒のやる気を育て、わかりやすい授業を目指すこと、そして、生徒の記憶に残すために、「繰り返し指導する」「印象深く(感動や気づきのある)指導をする」ことが大切である。

 英語の授業では、約30年前は、ラジカセ、OHP、LL教室が利用され、音声の時代だった。それからカセットテープレコーダーがCDプレーヤーに代わり、VHSビデオ、レーザーディスクなどの映像の時代になった。その後、ALTの導入、そして、近年、コミュニケーション活動の他、パソコンやCALLの時代を迎え、写真、音声・動画をノンリニアで自由に扱えるようになり、メール、インターネットなどで海外とコミュニケーションまで出来るようになっている。

挿絵
 そして2010年、国の政策でデジタルテレビ(大画面薄型テレビ)や、電子黒板が全国各地、多くの学校に導入された。それらを活用すると、音声、写真、動画は、デジカメ、iPod、ノートパソコンで簡単に提供できる。LL教室やOHPの時代から比べると、生徒たちが興味を持つ教材を簡単に入手でき、提示できる本当に便利な時代になった。

 昨年から英語の教科書本文の指導をデジタルテレビとパソコンのプレゼンテーションソフトを使って行っている。特に勉強を苦手としている生徒達には好評で、集中力が高まるし、どこを指導されているのかハッキリわかる。さらに、スクリーン上のひとつの本文を使ってみんなで音読練習を行うと、その後の全体の場での個人音読発表の緊張感が低減される。また、12歳でブラジルの環境サミットで伝説のスピーチをしたセバンスズキさんが、本校すぐそばの洞爺湖畔で話している映像がインターネットにあったので、それを活用して授業を行うと、生徒達は感動し授業に一層の興味を示した。

 2011年、テレビはアナログ放送が終了し、デジタルの時代を迎える。手軽に見せたり疑似体験させたりできるデジタルテレビが、多くの教科で少しでも活用されることを希望する。かつてのLL教室のように、使われずにひっそりと眠ってしまうことがないように…。

大塚 謙二おおつか けんじ

北海道伊達市生まれ。主な著書に『成功する英語授業!50の活動&お助けプリント』『感動する英語授業!教師のためのICT簡単面白活用術55』、分担執筆に『インターネットを活用した授業づくり』(いずれも明治図書)などがある。1998年度松下視聴覚研究財団研究賞、第16回日本英語検定協会研究助成賞、平成20年度北海道教育実践表彰を受賞。北海道情報と教育ネットワーク事務局長。

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