作文指導を変える―つまずきの本質から迫る実践法
作文指導はなぜ難しいのか?その理由の本質に迫りながら、本当に必要な「指導の仕方」を考えます。
作文指導を変える(1)
作文の「指示」は適切か?
京都橘大学教授池田 修
2022/6/15 掲載

 作文は、大変。書く児童生徒も、指導する先生も、宿題で持って帰ってこられた家庭も大変。なぜ、作文は大変なのでしょうか。一言で言えば、「書き方を知らないから」「書かせるための指導方法を知らないから」ではないかと思います。

 そんな方法があるのでしょうか? はい、あります。
 本連載では、学校行事の後によく書く作文、体験作文の書き方の指導について全12回の予定で進めていきます。夏休みの作文の宿題の指導には間に合うと思います(^^)。

 1回目は、作文の指導は指導になっているのか? について考えます。

作文を書くための指示とは?

 先生は、原稿用紙を配った後、以下の指示で、作文を書かせようとしています。
「テーマは、【夏休み】です。時間は45分です。しっかり書いてください。では、どうぞ」
 生徒から質問がありました。
「先生、どのように書けば良いんですか?」
 先生は答えます。
「好きなように、自由に書けば良いんだよ。はい、時間がなくなりますから早く書きましょう。終わらなかったら宿題になりますよ」

 さて、問題です。
 この指示とやり取りの中で、問題になるところはどこでしょうか?

 いくつもありますね。これは最低の指示だと言っても良いでしょう。しかし実は、慌てて言葉を添えますが、場合によっては最高の指示にもなります(それがどういうことなのかは、この連載の最終回で分かることになっております)。

 さて、この指示のどこが問題でしょうか? ざっと列挙してみましょう。

  1. テーマとタイトルの違いを指導しているか?
  2. 夏休みの何を書くのか生徒は理解しているか?
  3. 夏休みの内容を書くための準備の仕方を生徒は理解しているか?
  4. 45分の時間の使い方を生徒は指導されているか?
  5. しっかり書くということは、具体的にどういうことなのか指導されているか?
  6. 本当に好きなように書いていいのか?
  7. 本当に自由に書いていいのか? 
  8. 誰に向けて書く作文なのか確認したのか?
  9. 何のために書く作文なのか確認したのか?
  10. 書いた後、この作文はどのように使われるのかを説明したのか?

 少なくとも私は、これらのことがわかっていなければ、作文は書けないか、かなり書きにくくなると思います。

副詞に逃げる指示

 それぞれの指示について何がおかしくて、どのようにしたらいいのかは、この後の連載で取り扱っていくことにします。それまでに、よかったらみなさんも、何がおかしくて、どのようにしたらいいのか、ちらっと考えてみてください。

 ここでは、「5.しっかり書くということは、具体的にどういうことなのか指導されているか?」と、「6.本当に好きなように書いていいのか?」、「7.本当に自由に書いていいのか?」に焦点を当てましょう。

 「しっかり書いてください」と指示を出す先生は、生徒に何を求めているのでしょうか? 時間通りに書き終えることでしょうか。読みやすい字で書くことでしょうか。誤字脱字がないことでしょうか。面白い内容でしょうか。感動する内容でしょうか。多くの枚数を書くことでしょうか。

 おそらく先生の頭の中には、「しっかり」の具体的な内容があることでしょう。それならば、それは生徒にあらかじめ伝えるべきです*1指示を出す側は、指示を受ける側に想像させてはなりません。受ける側に想像が働くと、正しい指示にはなりません。受ける側はバラバラになります。

 実際の授業の場面で「しっかり書く」と指示を出したとします。
 先生の正解のストライクゾーンを想像できる生徒は、(確か、この先生は濃く太く大きく書くのが大事だと言っていたなあ)ということを思い出して、濃く太く大きく書くことが「しっかり書く」ことだと推定して、そのように書きます。そして、「おお、君はしっかり書けているね」と褒められます。
 一方で、イケダ少年は(45分の時間で書き終えることかなあ)なんて思って、急いで、誤字脱字が多く、薄くて読みにくい字で書き、45分以内に書き終えて提出します。すると、「しっかり書きなさいと言ったでしょ」と怒られるわけです。

 私はこのように大事なところを副詞にして指示を出すことを、「副詞に逃げた指示」と言っています。「しっかり」「きちんと」「はっきり」などの副詞を使っての指示は、多くの場合、この副詞に逃げた指示になっています。

 生徒が確認できる、具体的な指示を出すことが大事です*2

先生が好きに書いていいって言ったじゃん

 「好きに書いていい」「自由に書いていい」というのは、中学生には危険な指示だと思います。イケダ少年なら、何を書いていいか分からなくなれば、原稿用紙に「好きに書いていい」「自由に書いていい」を繰り返し書いたことでしょう(^^)*3。当然、そんなことをすればイケダ少年は先生に叱られますが、少年は先生の指示に従っただけなのです。「先生が好きに書いていいって言ったじゃん」と言うでしょうねえ。先生の指示に従っているだけなのですから、本来は叱ることはできません。

 また、好きに書いていいということは、主体的な判断として「書かなくてもいい」を含んでいます。「書かなくてもいい」を認めているのであればいいのですが、まずそんなことはあり得ないでしょう。

 さらに、好きなことを自由に書いていいと指示を出しておきながら、(ちょっとまずいなあ)と思うことに関しては「書き直しなさい」と指示を出す。これも圧倒的にまずいことです。(言っていることとやっていることが違うじゃん)と思われてしまいます。中学生は、そういうところに敏感です。

 何のために、何を書くのか。書いてはいけないことは何なのか。少なくともこのことは確認する必要があります。

*1 いや、ひょっとしたらそれがないので、「しっかり」という指示で誤魔化しているのかもしれませんが(^^)。それはそれで恐ろしい。
*2 この連載でも、「原稿は1回につき2000字から2500字で、小見出しは3〜4つ入れること」という、確認できる具体的な指示が入っています。
*3 野球部にいたイケダ少年は、ムカつく先輩が「一年生、声を出せ!」と言った時に、「声、声、声」と言ったらエラい目に遭いました(^^)。

今回のポイント

  • 指示は、できたかどうか後からチェックできるように、具体的なものを出す。
  • 指示は、「しっかり書く」「はっきり書く」など、「副詞に逃げる」ことは避ける。
  • 書く前に、「何のために、何を書くのか」を指示したり、考えさせたりする。

池田 修いけだ おさむ

京都橘大学発達教育学部教授。
公立中学校教員を経て現職。「国語科を実技教科にしたい、学級を楽しくしたい」をキーワードに研究・教育を行う。恐怖を刺激する学習ではなく、子どもの興味を刺激し、その結果を構成する学びに着目している。国語科教育法、学級担任論、特別活動論、教育とICTなどの授業を担当している。

(構成:大江)
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