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スイミングスクールで授業?増える水泳の外部委託
教育zine編集部宇佐美
2019/6/30 掲載

 6月も末になり、水泳の授業が始まっている学校が多いのではないでしょうか。楽しみにしている児童・生徒がいる一方、準備や指導など先生方にとっては何かと苦労することも多い水泳の授業。そのような中で、従来とは違った授業方法を導入する自治体が出てきているようです。

民間のスイミングスクールで試験的に実施
 千葉市では、今年から市内の公立小学校2校の水泳授業を民間のスイミングスクールに委託しています。まずはこの2校で試験的に実施し、児童や保護者、教員にヒアリングを行って効果を検証した上で、今後その他の学校にも導入するかどうかを検討するとのことです。なぜ、千葉市は水泳授業の民間委託を始めたのでしょうか。その背景にはいくつかの要因があるようです。

維持が大変なプールという施設
 まず大きな要因の一つは、プールを維持するためにかかる費用です。千葉市内では小中学校に併設されているプールの多くで老朽化が進んでおり、その修繕に多額の費用がかかることが見込まれています。さらに、プールの水のための水道代、水質管理のためにポンプを稼働させる電気代もかかり、夏場の短い期間しか使えないにもかかわらず、その維持管理費は自治体の大きな重荷となっています。
 少子化が進む中、一校一校に多くの予算をかけて従来通りの授業を行っていくよりも、より効率的・効果的な水泳の授業の方法を検討したいという意識が高まっているのです。

水質管理から指導まで…。教員の重い負担
 他の主な要因としては、水泳の授業を行うにあたっての教員の負担が挙げられます。水泳の授業を行う際には、教員は児童・生徒の安全を確保することに気をつけなければならず、かつ、泳ぎ方など専門的な指導を要する場面が多く見受けられます。
 また、プールを使用するためには水質管理など設備面での準備や点検も欠かせませんが、それらも教員の仕事となっている現状があります。学校でプールの給水口の栓を教員が閉め忘れてしまい、その水道代が数百万円にものぼってしまった、というニュースを目にしたことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。現場ではこういったミスが起こることもあり、教員にとって水泳の授業は負担を感じる業務となっています。
 このような問題点を解消するため、外部への委託が注目されているのです。

自治体、学校側にとってのメリット
 もちろん、委託するにあたっての費用は自治体からスイミングスクールに支払うことになっています。しかし、これから先何十年も学校ごとにプールを維持して授業を行う場合の費用と比較すると、外部に委託して授業を行うことはかなりの節約になるという試算が出ています。
 教員にとっても、プールの管理をスイミングスクールに任せることができるため、授業そのものの準備や、子どもたちと過ごす時間に集中することができるようになります。屋内プールでは天候や水温に左右されることなく授業を実施することができ、計画的に授業を進められるようになることも、これまでにはなかったメリットです。
 また、指導についても、専門的な知識を持ったインストラクターと協力しながら行うことができるため、児童や生徒の技能がより上達することが期待されています。

既に実施している自治体も
 上述した千葉市よりも前から、水泳授業の民間委託を始めている自治体もあります。千葉県佐倉市では、平成25年度から市内の小学校1校で、そして30年度からは2校で民間のスイミングスクールへの授業委託を行っています。1校で月100万円ほどかかるプールの管理費を節約できており、アンケートでも多くの児童が「授業が楽しかった」と回答しているなど、効果が見られているようです。佐倉市では、残りの学校については新設される市営プールでの授業実施を目指し、最終的には学校併設のプールを全廃する方向で検討しています。
 また、神奈川県海老名市では、平成23年度までに小中あわせて19校で既に学校併設のプールを廃止し、現在は市内4カ所の温水プールで5〜10月に水泳の授業を行っています。海老名市では使わなくなったプールの一部を釣り堀として市民に開放するという、施設の新たな活用も進んでおり、全国からも注目されています。

全面的に導入されるにあたっての課題
 良いこと尽くめのように感じる水泳授業の外部委託ですが、課題もあります。
 学校のプールで授業を行う時と大きく違う点は、スイミングスクールまでの移動手段や時間の確保が必要なところです。千葉市や佐倉市ではスクール側がバスで送迎をするところまで担っているそうですが、学校とスクール間の距離や、児童・生徒数など学校の規模によって、実際どのように実施するべきかが変わってきます。
 また、公的な学校という場と連携する以上は、施設面や人員面において、委託先にはしっかりとした質が求められます。試験的に実施している自治体、今後導入を検討している自治体ともに、このような課題については検討をしていかなければなりません。

 新しい学習指導要領が公表され、授業にこれまで以上の質や工夫が求められる一方、学校現場では働き方改革が叫ばれ、教員の負担を減らそうという意識も高まっています。そういった状況の中で、学校での活動を外部に委託していくという動きは、水泳に限らず、今後も様々な活動へと広まっていくのかもしれません。

・千葉市立の2小学校で水泳授業を民間委託 効果検証し拡大検討(東京新聞 2019年6月13日)
https://www.tokyo-np.co.jp/article/chiba/list/201906/CK2019061302000156.html

・小中学校に広がる「プール廃止」老朽化、コスト負担大きく(産経新聞 2018年9月6日)
https://www.sankei.com/life/news/180906/lif1809060009-n1.html

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