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「日本の教員は忙しすぎる。」
「教員の働き方改革を。」
そのようなニュースをよく耳にします。
教員は多岐にわたる業務を担っています。授業とその準備、学年・学級運営。行事を行うための入念な打ち合わせや準備。就業時間前後や休日に行われるクラブ活動や部活動。それ以外にも、国・教育委員会からの調査や、教材や給食費などの会計などの事務作業があります。
日本の教員の業務は、量・種類ともに膨大で、ほとんど休憩時間をとれない状態で勤務時間を大幅に超えて働いています。
そして、この看過できない教員の勤務実態が、10年ぶりに行われた教員勤務実態調査(平成28年度)で明らかになりました。過労死ラインに相当する「週60時間以上の勤務」をしていた教員の割合は、自宅に持ち帰る仕事(平均して週に5時間程度)も含むと、小学校で57.8%、中学校で74.1%になっていたのです。
文部科学省は結果を受け、
「学校における働き方改革に係る緊急提言」を公表しました。
1.校長及び教育委員会は学校において「勤務時間」を意識した働き方を進めること
2.全ての教育関係者が学校・教職員の業務改善の取組を強く推進していくこと
3.国として持続可能な勤務環境整備のための支援を充実させること
では、この「緊急提言」が公表されてから、今日の働き方の改革の実態はどのようになっているのでしょうか。学校規模や各教員で改善をしていけることもあるかもしれませんが、ここでは教育委員会の規模でどう取り組んでいるのかに注目してみます。
◆「教育委員会における学校の業務改善のための取組状況調査」
8月22日に公表された「教育委員会における学校の業務改善のための取組状況調査」は、平成30年4月1日現在のすべての教育委員会に対して行ったものです。「調査・統計等への回答等に係る負担軽減」や「部活動に係る負担軽減」、「教師の勤務時間管理の方法」など複数の項目で、取組を行っていると回答した教育委員会の割合が増加しているということでした。
教育委員会が業務改善のための取組を行っていることは、良い傾向であることに違いありません。しかし、最も大切なことは、取組が具体的にどれだけ教員の負担軽減に繋がっていくかではないでしょうか。具体的にどのような取組が実施されているのか、計画されているのかが重要です。
では、業務改善に繋がる具体的な実例をいくつか見てみましょう。
◆教職員の定時退庁日の設定
東京都新宿区教育委員会の「教員の勤務環境の改善・働き方改革」では、「原則、月1日以上を学校ごとに定時退庁日を定め、教職員は決められた時間までに退勤するため、教職員が不在になること」を保護者・地域向けの文書で通知しています。教員不在時の連絡先には区役所が設定されており、対応することになっています。
◆タイムレコーダーを活用した出退勤システムの全校導入
東京都武蔵野市では、「武蔵野市の教員の多忙化解消に向けた取組」として、タイムレコーダーを活用した出退勤システムが平成29年度からモデル校2校で導入されました。教職員にICカードを用いて出退勤時刻の把握をし、管理職から在校時間の縮減について個別に働きかける取組をしました。退勤時刻が平均30分程度早まったという結果を得られたため、今後は全小中学校に導入し、平成31年度から本格稼働予定です。
◆部活動方針
埼玉県戸田市では、「戸田市部活動方針」を策定しました。活動時間に関する3つのルールを定め、週2日以上の休養日、平日2時間、週末4時間程度以内の活動、朝練は行わない、としています。ただし年間4回の大会前は例外としてこのルールによらずに週の上限16時間として活動することができます。この他、活動計画の計画や参加大会の精選、いじめ・体罰の禁止、安全管理に関することを策定し、平成30年8月27日より運営しています。
これらの例以外にも、校務支援システムの導入や、学校徴収金に関する取り組みなど多くの改善を計画している自治体は多くあります。ですが今のところ、上記のように具体的に示した教育委員会は少ないのではないでしょうか。
実は筆者も昨年度まで中学校にて教員をしていました。そこで、児童・生徒のためを思って力を注いでいる先生方が、多すぎる業務のせいで疲弊してしまう現状があるということを感じていました。目の前にいる子どもたちのことをもっと考えたいのだけれど、業務が多すぎて余裕がなくなってしまう。業務の改善を行いたいのだけれど、時間が取れない。今の教育現場では、そんな現状が多いのではないでしょうか。
先生方が、子どもたちとゆとりをもって、じっくりと向き合う時間を確保できる。今回取り上げた取組やそれぞれの教育委員会で実施されていく計画が、そんな「働き方改革」になることを期待しています。