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子どもの虐待死のない社会へ―警察・児童相談所・諸機関の連携のあり方
金持
2018/6/30 掲載

 今年3月に、東京都目黒区で5歳の船戸結愛ちゃんが死亡した事件によって、子どもを虐待から守ろうという動きが高まっています。今月21日には、認定NPO法人フローレンス代表や有識者らが共同発起人となって立ち上げた「なくそう!子どもの虐待プロジェクト2018」の記者会見が行われ、「児童虐待八策」を提言するなどで注目を集めました。とくに、児童相談所と警察が全件情報共有を実施することなどについては、これまで何度も各メディアで取り上げられています。

警察との連携 ― 東京都の状況

 前述の「なくそう!子どもの虐待プロジェクト2018」でも、とくに児童相談所と警察が全件情報共有を実施することが強く要求されています。すでに全件共有にふみきっている高知県、茨城県、愛知県に次いで11日には埼玉県が県警と情報共有する方針を示したり、28日には長野県が児童虐待の児童相談所と警察との間で情報共有に関する協定を締結する方向で検討を進めていることを明らかにするなど、日々情報共有化に向けた動きが増えています。
 しかし東京都と警視庁が2016年に結んだ協定では、身体的虐待を受けた子どもを一時保護した後に家庭に戻したケースや児相所長が必要と判断したケースは情報共有すると定めていますが、警察に情報が流れることで家庭が相談しにくくなることを防ぐために、全件共有はしない方針だそうです。虐待死という最悪のケースを防ぐためには警察との情報共有が必要になることがある一方で、児童相談所は家族の支援としての機関も兼ね備えており、児童相談所自体に反発して関われなくなることを防がねばならず、難しい一面もあるようです。
 昨年8月に発表された『子ども虐待による死亡事例等の検証結果等について(第13次報告)(社会保障審議会児童部会児童虐待等要保護事例の検証に関する専門委員会)』(PDF)によると、各都道府県等に対する調査により厚生労働省が平成 27 年度に把握した心中以外の虐待死事例で事件の発生以前になされた虐待通告について、通告後の警察への情報提供についての1回目の通告では、「行った」が5例(33.3%)、「行わなかった」が 10 例(66.7%)であり、2回目以降の通告についてもほとんどの事例が警察への情報提供を行っていなかったことが指摘されています。8日の東京新聞の記事によると、今現在警察に通告するのに一定の基準はなく、「全件ではないが情報共有する」といっても、どのケースにリスクがあるのか見極めることが難しい上、情報提供を行った場合にも虐待死につながってしまったケースもあり、情報の提供のしかた(危機意識をどう伝えるか)にも課題が残されています。

児童相談所どうしやその他の機関との連携

 児童相談所と警察と情報共有が難しい場合に、児童相談所やほかの機関の協力で、虐待死を防ぐことはできないのでしょうか。目黒区の事件では、家族が転居前に香川県の児童相談所などのかかわりがあったことから、転居前と転居先の児童相談所の連携についても各メディアでとりあげられています。
 先の報告書の「4 現地調査(ヒアリング調査)の結果について」では、家族が転居してから虐待死が起こったという点で目黒区の事件と似ているケース(事例1)が報告されているのですが、ここでは要保護児童対策地域協議会(児童相談所や教育委員会、警察、市区町村などでつくる子供を守る地域のネットワーク)等へ情報提供の重要性について指摘されています。たとえば、転居後に虐待死が起こったある事例での問題点として、「(3)各事例が抱える問題点とその対応策のまとめ」に、以下のことが挙げられています。

・事例を次の担当機関へ引き継ぐ間もなく事態が変化していき、関係機関間で同じ危機意識を持つことが困難であった。また、転居や虐待の事実発生から事実の共有までに時間の差が生じた。

 これらの事例でも、目黒区のケースと同じく転居に伴う情報共有が課題となっています。虐待をしている家族が転居により児童相談所など諸機関の目を免れようとするケースもあるようで、居所変更の情報を把握した段階で、転居先の諸機関へ情報提供を行うことが求められています。その際に、危機意識も含め的確に伝達されることが鍵となってきそうです。
 この報告書の中では、これ以外にも、虐待の兆候は保健所や自治体などの諸機関(例えば保育課や生活保護担当)などの情報を合わせることでリスクが認識できる場合があるとし、諸機関が連携してリスクアセスメントをする必要性がくり返し述べられています。
 この事例でも、目黒区のケースでも、児童相談所どうし、市区町村どうしの連携も不可欠で、さらにそれらの連携のしかた(危機意識の伝え方)が重要になってくるということでしょう。
 

学校としての関与

 では、警察や医療機関、市区町村市町村(虐待対応担当部署とそれ以外)の関与などのほかに、学校として関与できることはあるでしょうか。目黒区の事件においては、本人と母親が小学校の入学説明会に姿を現さなかったということですから、もしその時点で児童相談所と情報共有ができていれば、ひょっとしたら状況把握を急ぐことができたかもしれません。
 子どもに直接関わる学校や保育所は、虐待の早期発見ができる可能性があるという意味でも、虐待防止への役割が期待されます。埼玉県のサイトでは「教職員・保育従事者のための児童虐待対応マニュアル」が公開されていますが、ここには児童虐待発見のためのかなり細かいチェックリストがあります。このようなマニュアル等が有効に活用されたり、諸機関との連携しての虐待死をくいとめるはたらきが期待されます。

 いずれにせよ、児童虐待という問題は複雑な背景が絡んでいることが多く、1件1件が1つの機関ですぐに解決というわけにはいきません。これまでの事件の結果検証をきちんと進めて周知徹底し、児童相談所をはじめ、警察、学校や自治体などの諸機関が連携する体制をつくって活かし、一刻もはやく虐待で子どもが命を落とすことがなくなることが望まれます。

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