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OECD加盟国で日本が1位! 
PISA「協同問題解決能力調査」とは?
教育zine編集部阿波
2017/11/30 掲載
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 OECD(経済協力開発機構)が2000年から3年ごとに、15歳の生徒を対象に行っている「生徒の学習到達度調査」、いわゆるPISA。
 この調査は「科学的リテラシー」「読解力」「数学的リテラシー」の3分野を調査しますが、2015年では初めて「協同問題解決能力調査」が行われ、今月その結果が、PISA2015年協同問題解決能力調査―国際結果の概要―として公表されました。

「協同問題解決能力」とは? そしてその結果は?

 PISAにおいて「協同問題解決能力」は、次のように定義されています。

 協同問題解決能力とは,複数人が,解決に迫るために必要な理解と労力を共有し,解決に至るために必要な知識・スキル・労力を出し合うことによって問題解決しようと試みるプロセスに効果的に取り組むことができる個人の能力である。

 日本はこの能力が、この調査に参加したOECD加盟国(32か国)中1位,全参加国・地域(52か国・地域)の中でもシンガポールについで2位という結果となりました。

どのような問題でこの能力を測るのか?

 ではどのような調査が行われたのかを見てみましょう。
 公開されている問題は、「3人のチームでコンテストに参加し、チャットを用いて相談しながら、架空の国であるザンダー国の地理、人口、経済についての問題に答えていく」というものです。
 自分以外はコンピュータ上の友人です。チャットで自分が話す内容は,4つの選択肢から選ぶようになっています。

 例えば次の画面の会話の場合、「たぶん、はじめにやり方を決めたほうがいいんじゃないかな。」を選ぶと正解です。この小問の場合は、OECDの正答率の平均が55.7%に対して、日本は72.6%でした。

図

 選択肢のどれを選んでも、他の2人の会話によって最終的に同じ展開で進んでいきます。3人で「地理」「人口」「経済」の問題を分担して答えるとよい、ということになり、「あなた」は「地理」の問題に答えることになります。
 しかし、次の画面の会話では、「あかねさん」が地理の問題に答えてしまっています。この場合は、「僕が『地理』の問題をやるはずだったのに。みんな自分が選んだ分野をやろうよ。」が正解です。チームで決めた合意を守るための行動を評価しているのです。
 この小問の場合は、OECDの正答率の平均が17.5%に対して、日本は13.7%でやや低くなっています。

図

テストの形式に注目

 今回の結果について、今後さまざまな分析がなされることでしょう。その際に注目したいことの中から、ここでは「テストの形式」を取り上げてみます。

 2015年から、PISAはすべての問題がコンピュータ使用型調査になっています。この「協同問題解決能力調査」も同様ですが、協同で問題解決を行うチームのメンバーもまた、コンピュータ上の人物という設定になっています。
 当然、実際の人物3人で問題解決の作業をしたほうが、より正確に能力を見ることができると思います。しかしチームのメンバーの性別、能力、個性、属する文化などによって結果にばらつきが出ることが考えられ、PISAのように大規模な調査には向いていないようです。
 また、チャットの会話が自由記述ではなく、選択肢から選ぶという方法になっています。前述したように、選択肢のどれを選んでも、コンピュータ上の他の2人の会話によって同じように展開していきます。これにより時間の制約がある中で十分な量の調査を行うことができています。

 国立教育政策研究所の報告にも、「他の生徒と協力する生徒を直接的にテストするものではないことはみとめられるものの、エージェント*を用いたアプローチによって、協同に必要なスキルのテストを統制された形で実施できる。」と書かれています。

*エージェント コンピュータ内の他者のことを指している。

 しかし、同報告の中で、「人間対人間」「人間対コンピュータ」の同等性が担保されているかについては検討の余地があることも指摘されていますし、シナリオに沿って進んでいくため実在の人物と協同するスキルを直接測定できないという限界があることも述べられています。

 とはいえ、協同で問題解決する能力、といういかにも評価が難しそうな能力の評価方法として、今回の「テストの形式」はとても興味深いものと思います。アクティブ・ラーニングなど、今後めざされている、主体的に問題解決する学習方法の評価にも参考になるのではないでしょうか。

この結果をどう生かすか

 ほかにも、協同問題解決能力の結果とその背景にあるものとの関係など、細かく見ていくことで、日本人の特性や、どこを強化していけばよいのかなどが見えてきそうです。
 どのような分析がなされ、それがどのように教育現場に生かされていくのか、今後も注視していきたいと思います。

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