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中学校学習指導要領解説 中学校理科の注目ポイント
教育zine編集部小林
2017/6/30 掲載
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 新しい学習指導要領解説が公開されました。すでに公表されている学習指導要領では、学習する内容や各学習項目の目標が示されましたが、今回公表された新学習指導要領解説では、さらにもう一歩踏み込んで、それぞれの項目について、ねらいや注意点、授業の展開方法などについても記載されています。

 今回は、中学理科について、新学習指導要領で特に現行の指導要領と変動の大きかった2分野の生物に焦点をあて、新学習指導要領で大きく変わった点をもう一度おさえ、新学習指導要領解説で記載された詳しい内容や授業の展開方法についてピックアップしていきます。

 全体を通してみると、現行の学習指導要領は、1年生で「植物のつくりと働き・分類」、2年生で「動物のつくりと働き・分類、進化」、3年生で「生殖、遺伝」について扱い、動物→植物→遺伝の流れだったものが、新学習指導要領では、1年生で「動植物の外部形態による分類」、2年生で「動植物の体のつくりやはたらき」、3年生で「生殖、遺伝、進化」について扱うこととなり、大まかに言えば、マクロな視点からミクロな視点の内容を学習する流れとなりました。

1年生の生物分野について
 現行の指導要領では、植物の生活と種類を中心に扱っていましたが、新学習指導要領では生物の分類を中心として扱い、項目としては以下の2つになりました。

・生物の観察と分類の仕方
・生物の体の共通点と相違点

 生物の観察と分類の仕方では、生物の観察によって、生育環境や観察器具類の扱い等を身に付けることが目標とされているほか、いろいろな生物を比較して見いだした共通点や相違点を基にして分類できることを理解し、分類の仕方の基礎を身に付けることも目標とされています。
 授業の展開方法としては、次のような例が挙げられています。

親しみのある 20 種類程度の生物を挙げさせて、これらの生物が生息している場所や、活動的な季節、色、形、大きさなどの姿、殖え方、栄養分のとり方などの特徴に基づいた観点で分類の基準を考えさせる。(中略)その後、別の生物を当てはめ、用いた観点や基準で分類できるかどうかを考えさせたり、他の観点や基準を検討させたりすることなどが考えられる。その際、分類の結果を分かりやすく表現させるようにする。これらの学習活動では、話合いや発表を適宜行わせることにより、思考力・判断力・表現力等を育成することが大切である。

 ここでは、学問としての生物の系統分類を理解させる必要はなく、目的に応じて多様な分類の仕方があり、分類することの意味に気付かせることが重要とされています。上記の通り、生物は外部形態や生活手段等、見方次第で様々な分類を行うことができますが、一方で「系統分類」を教えることが目標ではないため、正解がなく、授業展開には先生方の力量が試されることになりそうです。

 生物の体の共通点と相違点では、動植物の観察記録などに基づき、共通点や相違点を見出し、分類できることを理解することが目標となっています。植物については現行の指導要領と同じように、被子植物や裸子植物等の分類、双子葉類と単子葉類の分類などを行うとされていますが、葉・茎・根のつくりは2年生で扱います。動物については、現行の指導要領では2年生で教えているような、脊椎動物と無脊椎動物に関する分類を行うとされています。無脊椎動物については、節足動物・軟体動物についての分類に留まり、ウニやヒトデなど、他にもさまざまな生物がいることには触れることとされていますが、棘皮動物や環形動物等の分類名についてまでは扱いません。
 授業の展開方法については、次のような例が挙げられています。

例1 魚の干物や煮干し、エビ、貝など入手しやすい食材などを用いて、背骨の有無について観察して比較させること
例2 哺乳類には肉食性のものや草食性のものなどがあり、体のつくりに相違点が見られることについて、骨格標本などを活用して気付かせること

 例1について、内部の構造は2年生内容で扱うため、1年生で解剖は扱わず、あくまで外部形態の観察に留まることとなりそうです。例2について、骨格標本などを活用して気付かせることとあるため、現在は発展内容として扱われている肉食動物と草食動物の頭骨の構造が、次からは通常の内容として扱われる可能性があります。
 また、1年生内容から水中の微生物の扱いについては完全に削除されました。顕微鏡の扱いで教科書には残る可能性もありますが、今よりも扱いは小さくなりそうです。

2年生の生物分野について
 現行の指導要領では、動物の生活とその変遷を中心に扱っていましたが、新学習指導要領では生物のからだのつくりと働きを中心として扱い、項目としては以下の3つになりました。

・生物と細胞(※細胞分裂については3年内容)
・植物の体のつくりとはたらき
・動物の体のつくりとはたらき

 生物と細胞では、動物と植物の細胞のつくりの共通点と相違点に触れることのほか、単細胞生物や多細胞生物の存在にも触れることとされています。
 植物の体のつくりと働きでは、現行では1年生で扱われていた、葉茎根のつくり、光合成・呼吸、蒸散について扱うこととされています。
 動物の体のつくりと働きでは、現行同様、消化・吸収・呼吸・血液循環、排出、刺激と反応について扱うこととされています。
 授業の展開方法については、次のような例が挙げられています。

動物の体のつくりと働きの理解を深めるために、例えば、魚の煮干しやイカなどを解剖して内部のつくりを観察し、ヒトの体のつくりとの比較から動物の体のつくりの共通点に気付かせ、ヒト以外の動物についても、消化系や呼吸系、循環系など生命を維持する仕組みがあることを理解させることも考えられる。

 「1年生の生物分野」で記述したように、2年生では生物の内部構造について扱うため、解剖を行います。解剖する生物種は、現行と変わらず、身近で食卓にもあがることのある、魚類やイカといった種類になっています。

3年生の生物分野について
 3年生では、現行にもある生命の連続性や自然と人間ですが、生命の連続性では、生物の種類と多様性(現行の2年生から移動)についても扱います。項目は以下の通りです。

生命の連続性
・細胞分裂と生物の成長 
・生物の殖え方
・遺伝の規則性と遺伝子
・生物の種類の多様性と進化

自然と人間
・生物と環境(自然界のつり合い、自然環境の調査、環境保全)
・自然環境の保全と科学技術の利用

 生命の連続性では、実験や観察がなかなか難しいこともあり、映像による学習も薦められています。2020年までに全校へのタブレットの支給が目指されていますが、どのような映像学習が行えるようになるか、また、どのような指導が行えるようになるのか、設備面でも、指導方法の面でも、今後とも注目が集まりそうです。映像学習以外の授業の展開方法の例としては、遺伝の規則性で、コインやカードを使った遺伝のモデル実験方法について挙げられています。
 また、生物の種類の多様性と進化では次のような授業の展開方法の例があげられています。

 脊椎動物では、魚類をはじめとする五つの仲間の間には、魚類と両生類の幼生は鰓呼吸、魚類・両生類・爬虫類は変温動物、魚類・両生類・ 爬虫類・鳥類は卵生、魚類・両生類・爬虫類・鳥類・哺乳類は全て脊椎をもつというように段階的に共通性が見られることや、化石についての考察などから、現存している生物は過去の生物が変化して生じてきたことに気付かせる。

 卵生・胎生、変温動物・恒温動物の分類と関連付けながら進化について扱い,また授業の展開例にあるように、示準化石などの地学分野の知識と合わせて、生物が陸上から水中へと進化したことについて触れることが求められます。

主体的・対話的で深い学びについて
 最後に、新学習指導要領解説では、先生方が特にお悩みになると思われる、「主体的・対話的で深い学び」についても触れられていますので、ここで簡単ながらご紹介します。
 新指導要領解説によると、理科では、生徒に理科の指導を通して「知識及び技能」や「思考力、判断力、表現力等」 の育成を目指す授業改善を行うことはこれまでも多くの実践が重ねられてきており、今までの実戦を否定して、全く異なる指導方法を導入する必要はないとされています。したがって、現状の指導方法を維持しつつも、適宜「主体的・対話的で深い学び」を組み込んでいくことが求められています。
 具体的には、次のようにも記述されています。

 主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善を進めるに当たり、特に「深い学び」の視点に関して、各教科等の学びの深まりの鍵となるのが「見方・考え方」である。(中略)例えば、自然の事物・現象から問題を見いだし、 見通しをもって課題や仮説の設定や観察・実験の計画を立案したりする学習となっているか、観察・実験の結果を分析・解釈して仮説の妥当性を検討したり、全体を振り返って改善策を考えたりしているか、得られた知識や技能を基に、次の 課題を発見したり、新たな視点で自然の事物・現象を把握したりしているかなど の視点から、授業改善を図ることが考えられる。

 ただし、カリキュラムに沿った実験を行う上で、生徒自身が「主体的に」、「自然の事物・現象から問題を見いだし、 見通しをもって課題や仮説の設定や観察・実験の計画を立案したりする学習」は困難であるようにも思われます。今回の新学習指導要領解説で具体的な実践例が示されたわけではなく、今後も模索が続くことになりそうです。

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